第4話 日常

 翌朝。眠く、まだ布団の中に居たい心境の中、学校に登校するために準備をしている。こればっかりはしょうがない。だって、学生である限り学校には行かないといけないし。仕方がないと思いながらも気持ちに踏ん切りがつかないまま進める。

 学校に登校し自分の席に着き、一息つく。うーん、さすがに夜に散歩をすると翌日が眠気がすごい日がある。連日だとよりきつい。

 昨日はようやく彼の名前を知って、お互いにかるく自己紹介をした。どうやら、彼は中3らしい。初めに聞いた時はびっくりした。中学生かなとは思っていたが中1、大きくても中2だと思っていたからだ。もしかしたら、背が高い小学6年生の可能性もあると考えていた。私と2歳差しかなく、受験生だとは思っていなかった。それにしても、あんなに夜遅くに外に出ていていいのだろうか。受験勉強とか宿題とか睡眠時間とか。考えて、ふと思う。うん、本当に自分が言えることではないな。ほとんど私にもあてはまる。今思うと、水無月って名前もどこかで聞いたことのあるような気がするんだよなー。どこだろう。そんなことを頭が回らないうちに考えていると、

 「ここねー、ヘルプミ~」

と声がかけられる。友人のまいである。舞は後ろで1本にまとめた腰まであると錯覚させそうな髪を振りながら、泣きそうな声で話しかけてきた。席の近くまで来たと思ったら、

 「課題を見せてください!!」

と勢い良く頭を下げる。どうやら、課題のプリントをやり忘れたらしい。

 「・・・はい。提出までには終わらせて、持ってきてね」

 「ありがとう!心音は、神様だなー」

としみじみと言ってくる。なにそれーと言いながら、笑い合う。何かおごるよー、と言い残し、自分の席に戻っていく。自分も助けてもらうことがあるから、別にいいのに。


 昼になり、休憩時間になる。机をくっつけて、弁当を舞と食べる。

 「いやー、ありがとう。おかげで課題間に合ったよ」

と言いながら、舞はプリントを返してくれた。

 「いいえー。こっちも助けてもらってるし。お互い様だよ」

 「いや、課題の存在をすっかり忘れちゃっててね、てへ」

と言い、下を出しながら笑う。なにそれーと笑い合う。

 しばらくして、舞が

 「今日さ、一緒に帰らない?」

と聞いてきた。 

 「いいけど、舞。今日部活ないの?」

 「うーん。今日は、オフだよ」

とゆるく答える。舞はダンス部に入っており、ダンスが上手い。踊ってる姿は本当にかっこいい。そんな姿に尊敬の気持ちを覚える。


 放課後になり、帰る準備をしていると舞が私のところに準備を終えてきた。

 「早くない?」

 「そんなことないよ」

 私の席から見える位置に舞の席があるが、さっきの授業はほぼ寝てたはず。終わりのあいさつの時に起きたとしても早いけどなと思う。まさか、帰る準備さっさと終わらせてたな。

 帰る準備をして私たちは、校門に向かう。昨日から気になっていることについて考えていた。そういえば、舞、まい・・・名字って。

 「あっ!」

 「どうしたの?」

 「何でもないよ!ちょっと、思い出しただけだから。大丈夫、大丈夫」

 「あ、そう?」

 変なごまかしだが、不思議そうな顔をしながらも納得してくれる。思わず声に出てしまった。そうだ、そうだった。頭が朝よりも回り、気づく。そうだ。舞の名前だ。水無月舞。名字だった。水無月の名前をどこかで聞いた気がしてたのは、舞の名字だったからだった。名前で呼んでたから、すぐには気づけなかった。少し申し訳ない。後で、心あたりがないか聞いてみよう。


 帰ってる途中でにコンビニに寄る。舞がプリントのお礼におごってくれるというので、ここは素直に甘えることにし、寄ったのだ。

 近くの公園で休みながら、コンビニで買ったものを飲んだり、食べたりしながら話をする。

 「ねぇ、水無月空って知ってる?」

 少し考え込むようなそぶりを見せてから、

 「そら?んー、ごめん。心当たりがないなあ。その人がどうかしたの?」

と言った。

 「えーと」

 私は昨日の話を簡単に話すことにした。夜に外に散歩していること、その時に出会った少年については話をしていたため簡単な説明ですんだ。

 「なるほどねー。確かに心配な点や驚くところもあるね。でも、生活面は今の心音には何も言えないんじゃない?」

とからかうような口調で痛いところをついてくる。舞とは小学校の頃からの友人で親友でなんでも話せる仲である。そのため、遠慮なく痛いところをついてくるのである。

 それからは、まぁ、同じ名字の人もいるよねー、と笑い合いながら、雑談をしながら帰っていく。


 私はさっきの少年の名前に関する会話の中で、一瞬、ほんの一瞬、舞の顔が曇ったのを見逃さなかった―――

 

 

 


 

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