第2話 再会

 翌朝。私は、学校に登校する道すがら、昨晩のことを考えていた。

 あの場所で、あの時間帯に人に会って話をするとは思ってもみなかった。そもそも、早い時間ならまだしもあの時間帯に人に会うのが珍しい方だと思う。しかも、自分よりも若そうである。一体、あの少年はなんだろう。考えているうちに学校に着き、考えるのを中断する。また、会うとは限らないし、会ったら会ったで聞けばいいか。あっても話さないかもしれないけど。まぁ、会わないだろうけど。そして、私は自分の教室に向かった。

 夜になり、今日も散歩をすることに決める。

 私は、晩御飯を済ませ、しばらくしてから外出した。昨日も行った公園に着き、中に入る。木陰のベンチがある広場を目指して歩いて行く。そう、昨日も行った場所だ。私は散歩にきたら、日にもよるが公園内を回り、あのベンチに座る。そこでしばらく過ごすのだ。今日も晴れていて、星が見える。気温はささやかな風が吹き、昼間より少し涼しいくらいで過ごしやすい。今日は、ベンチで何をするかを考えながら向かう。

 ベンチに座るとあることに気づいた。この広場には小高い丘になっているところがある。丘の上に昨日の少年がいた。芝生に腰を下ろして、空を見上げている。星を見てるようだった。話しかけるか悩んだが、こっちに気づいたらでいいだろう。私は本を読むことにし、持ってきた小説を取り出し読み始める。

 どれくらい時間が経っただろうか。ふと、本から顔を上げると、横に彼がいた。

 「どうも~。こんばんは、お姉さん。また会いましたね」

 驚いて、びっくとしてしまった。その反応をみて彼は笑っている。何を笑っているのか。驚いたのは君のせいなんですけど、と文句を言いたいが飲み込む。何を言おうか迷っていると。

 「あれ、お姉さん?大丈夫ですか?・・・気絶してしまったか」

と言う。明らかにふざけている。昨日の会話からも彼はかなりふざける方だと思われる。

 「あのねぇ。気絶してないし、驚いたのは君がいきなり隣にいるから」

少し言い方がきつくなってしまったかもしれない。まあいいか。悪いのはあっちだし。

 「いやー、ごめんなさい。驚かしてしまったみたいで」

と意外と素直に謝ってくる。すこし意外に思っていると、でも、と言葉を続ける。

 「お姉さん見つけて、驚かしてもいいかなぁと思って、つい」

と言ってくる。何でよ、何がついよ。まだ1、回しか会ってないですけど。

 「何でよ」

言葉に出てしまった。

 「うーんと。昨日話してみてなんとなくいいかなぁと」

それを聞いてどこに昨日の会話の中にその要素があったよ、と思う。私がため息をついていると、それを見ながら彼は笑っていた。いい笑顔ではあった。あらためて、彼を見る。格好は昨日と同じようなパジャマにセーターを肩から掛けているようだった。靴に関しては、靴に近いサンダルであった。

 彼を見ていたら、彼は笑顔のままで言った。

 「お姉さん。時間があるなら、お話しませんか?」

 「・・・ナンパ?」

 「ち、違いますよ!」

次はこちらから、からかってやった。彼は咳払いを一つすると、

 「ただ、話したいなぁと思って。意外と気が合うかもしれませんよ。連続で会いまし」

 「いや、まだ2回しか会ってないでしょ」

と返し、お互いに笑ってしまう。

 晴れると星がきれいとか、最近暖かくなってきたね、といったとりとめのないことを話していた。会話も進み、場があったまってきたので気になることを聞いてみることにした。

 「そういえば、君の名前も年も知らないんだけど。お姉さんと私のことを呼ぶけどいくつなの?」

 そういえば、お互いに名前知りませんね、と彼は言い何かを考えるように少し黙って下を向いた。まずいことでも聞いてしまっただろうか。いや、聞いてもいいはずだと思う。名前を知らないといつまでも何と呼んでいいのかわからないし。そんなことを考えているうちに彼が口を開く。

 「・・・もしかして、お姉さんと呼ばれるような年ではないということですか?それだったら、すみません、若く見えたので」

と神妙な顔をして言う。何を言っているのだろうかと思ってしまう。

 「まさか、自分よりも年下!?」

本当に何を言っているのだろうか。あっけにとられ、あきれたような不思議そうな顔をしていると、彼は我慢できないとでも言う様にぷっと吹き出し、笑った。また、からかわれたみたいだった。こういいタイミングでふざけを入れてくる。わざとなのだろうがなんだろう。一息ついて、私は言う。

 「だから、名前!」

また、考え込んで彼は言う。

 「次に会えた時にお互い自己紹介をあらためてしませんか?」

 「なんで?」

 「教えたくないとかではないんですけど、約束もなく次に会って、話せたら嬉しいじゃないですか。そして、次の話題の一つにしましょうよ。もう、ここにこないわけじゃないですよね?」

と言ってきた。まぁ、それでもいいかとも思える。次にもしあった時に話題がなくて困るかもしれないし。

 「じゃあ、それでいいよ。次、会えたらしっかり聞くからね!」

 「はい」

と彼はいい返事を返してきた。

 時間も遅くなり、そろそろ帰ろうかという話になって解散となった。お互いに、”またね”とあいさつを交わし帰路につく。

 結局、彼との会話を楽しんだため、あれから本の続きを読むことはなかった。いいかと思いながら、家への帰路を急ぐ。

 「明日も学校だ」

 次はいつ会うかなと思いながら、夜空を眺めた。

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