第24話 悪巧み

俺が外の訓練場で剣の訓練をしていると兵士の1人が慌てて俺の所へやって来た。


「アーク様、ブリュッケン公爵から急ぎの使いが参りました。」

「分かった、今向かう。」


俺が応接室に入るとなんと公爵騎士団団長にしてブリュッケン公爵の息子サイフォンが待っていた。


「まさかサイフォン様直々に来られるとは。という事は次のマルクス帝国侵攻が決まりましたか?」

「あぁ、3ヶ月後に決定した。それより今日、俺が来たのはただ予定を伝えるだけではない。王都で行われる全体の会議にアークに知らせるためだ。」

「会議というのは侵攻の前の軍議ですか?」

「そうだ。俺と父上とバードル侯爵、リュベルト侯爵、ドラグレン伯爵、そしてアークだ。」


武闘派のバードル侯爵とドラグレン伯爵に武闘派ではないが派閥のNo.2のリュベルト侯爵。妥当な人選だろう。内務大臣のプリューガ侯爵は領地を持たない法衣貴族なのでもちろん動かせる軍がいないから除外されている。


「すぐに王都に向かう準備をしてくれ。一度、全員で打ち合わせをしたい。」

「分かりました。すぐに準備します。」








俺は僅かな従者を連れて王都に向かった。前回はゆっくりと向かったため一ヶ月半もかかってしまったが今回はかなり飛ばしてきたので3週間ほどで着いた。道中は数回、魔物に遭遇したが大した問題もなく討伐できた。5年前と比べると明らかに軍の練度が上がっている証拠だろう。


王都に着いた翌日、俺は馬車でブリュッケン公爵邸に向かった。一応、今回の会議で1番身分が低いのは俺なので早めに屋敷に向かった。公爵邸の門をくぐり中に入る。そして俺は扉を開けて馬車から降りる。


「お待ちしておりました。中へどうぞ」


外で待っていた執事に連れられて俺は屋敷の中へと通された。そして2階の会議室に通されると中には既にドラグレン伯爵が椅子にかけていた。


「ドラグレン伯爵、遅くなって申し訳ないです。」

「わしが早く来すぎただけだ。気にするな。」

「そう言っていただけるとありがたいです。」


ドラグレン伯爵ははげ頭で筋骨隆々の武人だ。いつも何を考えているのか分からないので正直言って俺の苦手なタイプの人間だ。

すると、20分もしない内に続々と人が集まってきた。公爵騎士団幹部とバードル侯爵、リュベルト公爵、そしてその従者達だ。ちなみに俺の後ろには従者長のレオポルドが控えている。そして最後にブリュッケン公爵とサイフォンが部屋に入ってきた。2人が席に着くとブリュッケン公爵は口を開いた。


「皆揃ったようだな。では軍議を始める。まずはサイフォン、頼む」


「はい、まずは今回の出兵はどこの陣営もかなりの規模を派遣すると思われます。そうなると誰が総大将になるかが大きな問題となります。今のところ最有力候補は第一王子のカース王子です。」


「オーウェン将軍ではないのですか?」


サイフォンの発言に聞き返したのはバードル侯爵だった。オーウェン将軍は他国から軍神と恐れられる将軍でこれまでのマルクス帝国への侵攻もオーウェン将軍が総大将であった。各派閥が兵を出し渋る中で帝国から領土を奪い返すほど軍略に長けていた。


「年齢のせいで体が思うように動かない事を理由に辞退するつもりだそうです。」


オーウェン将軍は既に60歳を超える老将で数十年前から引退するだのしないだの言われてきたが結局ずっと前線に立ち続けていた。だから誰も急に引退するとは思っていなかった。


「ではどうするのですか?カース王子が総大将になると我が陣営は外れの場所に布陣させられるに違いありません!」


ドラグレン伯爵の指摘に誰もが納得してしまう。何としてでも総大将から降ろさないといけない。


そのまま他の内容についても議論が行われたがどうしても総大将の件だけは解決策が見つからず、会議はお開きとなった。





王都にあるルードルス家の屋敷に戻った後、従者達と会議の内容の確認があった。


「最悪、第4王子が総大将になった方がましなんですけどねー」


従者の1人がそんなことを呟いた。


「その手があったか!」


俺は椅子から大きく飛び上がり、1人でニヤニヤしながら荒れるであろう軍議の様子を予想した。













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