第14話 戦後処理と五か年計画

そして戦いが終わった。すると、1人の騎士が近づいてきた。

「お主がルードルス卿か?」

「はいそうですが」

「俺はブリュッケン公爵騎士団団長で公爵家次期当主の、サイフォンだ」

俺は馬を降りて膝をつく。

「膝をつく必要など無い。我が公爵家は卿が来なかったら領都を守りきれなかった。援軍、本当に感謝する」

次期公爵のサイフォンは現当主の父親よりも武人らしさが際立った。俺たちは軽い会話をして戦後処理に移った。


2日後、公爵が慌てて5千を連れて引き返してきた。公爵には頭を下げられた。普通、貴族は格下に頭を下げたりなどしないが、公爵の人柄ゆえなんだろう。帰って来た公爵軍はそのままポーズ子爵領の国境に向かった。敵の後続を阻止すると共にポーズ子爵領の治安維持のためだ。


俺は今回の件で予想通り子爵になった。土地は公爵がこれから占領するつもりの子爵領を丸ごとくれることになった。子爵領はラパス王国と国境を接するデメリットがあるが、それ以上に綿花の栽培が盛んでメリットの方が大きい。


今回は合わせて騎士団1人.金剛戦士団35人、歩兵部隊200人、魔法部隊5人を失った。歩兵部隊に関してはまだまだ練度が足らないと感じた。今まで適当に剣を振るっていたのと比べると大きな進歩だが、日々剣を鍛えて剣術の腕が中級の人も多い王国軍と比べると見劣りする。早くウチも中級になってほしい。


俺たちは領都で1週間疲れを癒やし、キンブルへと向かった。キンブルに着くと、兵士たちに5日間の休みを与えた。


キンブルについてから1ヶ月、公爵から子爵領を占領したと報告を受けた。俺は子爵領領都に向かった。子爵領領都に着くと子爵領の現状の説明がされた。

現在、ラパス王国軍やポーズ子爵軍の残党は領内におらず、捕虜が子爵軍約500人とラパス王国軍2000人と投降した領都の衛兵500人がいるらしい。どちらも俺の自由にしていいとのことだ。

俺は衛兵300人だけを領都に残し、あとの200人は家族を連れてキンブルに移住させることにした。子爵軍はそのまま解放することにした。ポーズ子爵が愚かなことをしただけで、元々敵国だったラパス王国軍とは違い反乱の心配はそこまでしていない。

ラパス王国軍はそのまま労働奴隷にすることにした。まずはラパス王国と国境に長い土壁と堀を作らせることにした。高さ6メール、

幅3mの土壁と深さ5m、幅8mの堀を長さ、

約200kmと子爵領と接する国境全てを防壁で覆う。さらには要所に塔や砦を作る予定だ。

俺は自分に万里の長城のパクリではなくオマージュだと自分に言い聞かせた。実際、2万km以上ある万里の長城と比べると俺が作るのはスケールが違いすぎる。


俺は子爵領でもルードルスと同じ政策を行った。税率は下げ、初等学校を作り、兵士を募集した。


子爵領は領都に10万人、領都以外には小都市も含めてに3万人がいる。初等学校には3万人が入学するので急いで校舎を建てさせた。初等学校は増やすが高等学校は男爵領に作る予定のものだけにする。なるべく高等学校は俺の手元で管理して質の高さを維持するためだ。


兵士の募集には3万人が応募してきた。これには流石の俺も驚いた。

そもそも一般的な領は人口の1%前後の徴兵が普通だという。対して俺は男爵領では人口の約12%が兵士という異常な戦力だった。これはそもそもの人口が少ない上に魔物の肉や素材を活用したから誤魔化し切れるからであり、領民が10万を超えたこれからは無理だろう。10%は国家存亡の危機レベルの緊急事態だ。5%でも社会が回る限界だと言われている。


俺はまず基礎体力を測るため、10km走らせる。俺は時間がかかってもゴールに辿り着いた人を合格にした。合格した人は二万人になった。そこから模擬戦をさせ、上位5000人を訓練生にした。

そして例の如く身長選抜を行った。この世界の成人平均身長が165cmと低いので基準は175cmに設定した。実際、金剛戦士団の団員も175cm以上が多い。選抜の結果、8000人の合格者が出た。

計1万3000人を訓練生として迎えた。もちろん、この中には元ポーズ子爵軍の兵士もいる。



魔法適正検査も8歳から30歳で行ったところ、

6万人中才能ありかダブル以上だったのは1万5,000人だった。その中で志願した1万人を合格とした。


今回の募兵で兵士1万3000人、魔法師1万人を訓練生として合格にした。全員をそのまま合格にすると兵士が約2万6000人と人口のおよそ18%が常備兵という超不健全な社会になってしまう。だから俺は人口の4%弱に当たる、

5,500人を目指して更に選抜をしていく。特に魔法師は少なくとも上級魔法を使えるレベルに引き上げたい。暫くは既存の戦力でなんとか回せるので俺は5年後を目処に長期育成計画を立てた。名付けて〝五カ年計画〟。

今回もはっきり言っておこう。これはオマージュだ。


さらにすでに魔法部隊として活躍している魔法師の中で8歳から20歳の優秀な約100人に俺が直接現代の化学知識や物理法則を教えることにした。俺は前世の知識のおかげで魔法をイメージしやすいから同じ魔法でも高威力のが撃てる。もちろん、全員に秘密保持の擬似契約魔法をかけた。これらの知識はルードルス家の大きなアドバンテージになるはずだ。


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