第9話 ローク戦争①

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父アーサーが亡くなってから一年が経った。この1年間でルードルス領は著しい発展を遂げた。だが、これはまだ序章に過ぎないと俺は思っている。発展したと言ってもルードルス家は地方貴族の中規模勢力に過ぎない。

軍事力、経済力ともにまだ十分ではない。

これからももっと力をつけないといけない。


1年間の出兵免除がなくなり、2週間後にポーズ子爵領での大きな戦争に参加する。今回はラパス王国が5千で攻めてくる。こちらはブリュッケン公爵自ら3千を率いてやってくる。そこに他の貴族軍が3千ほど集まる予定だ。


俺たちルードルス家は今回、騎馬隊20名、歩兵70名、魔法部隊20名の計110名で挑む。


騎馬隊はもちろん、初お披露目となるバトルホースに乗る。今までアーサーに仕えていた従者達は全員、騎馬隊として採用した。

というのも、従者はみんなアーサーの代から訓練と実践を積んだ武官で1年間で鍛え上げたそこらの兵士より遥かに強い。そんな従者達を剣や槍の修練より騎乗訓練を優先させてなんとか一年でモノにしたのだ。ちなみに武器はハルバードで統一した。剣だとリーチが足りないからだ。最初は不慣れでダメだと思っていたが、聞くところによると、従者はみんな剣と槍の両方を訓練するらしい。だからすぐにコツを掴んでそれなりに扱えるようになった。


歩兵隊は訓練でファーレンス流剣術が初級に達した人だけを連れてきた。装備はロングソードとバックラーだ。このバックラーは森の川辺に住むロックタートルの甲羅を削って作った物でロングソードくらいなら余裕で防げる。この世界で盾は魔物の突進を止めるくらいしか使わないので俺は徹底的に中心に向かって滑らかな凸があるバックラーの使い方、特に剣の受け流し方とバックラーでの俗に言うシールドバッシュのやり方を叩き込んだ。


魔法部隊は初級魔法師の20人を連れてきた。この一年でよく下級魔法師まで到達したと思う。だが、予想通り魔法の才能の個人差が出始めた。この問題はいずれ解決しないといけない。




俺自身は中級魔法師に達し、ファーレンス流剣術中級になった。また、複合魔法を使えるようになった。複合魔法はその名の通り異なる属性の魔法を合わせる魔法だ。属性を1つ加えるごとに難易度はワンランク以上は上の魔法になる。



そして俺は110人を率いて戦場に向かった。


俺達は1週間かけてラパス王国との前線のローク平原に着いた。戦場に着くと予想通りルードルス兵達は浮いた存在となった。仕方ないだろう。だって魔獣に乗って小さな盾を持ってるんだから。


俺たちは好奇の目に囲まれながらも野営の準備をした。昼飯を食べると、軍議に呼ばれた。


テントに入ると俺にさまざまな目が向けられた。俺はその視線を無視して端っこの下座の椅子に座った。しばらくすると、公爵とその騎士団の隊長達が入ってきた。すると、公爵が開口1番に俺に話しかける

「アーク、お前は当主になってから随分と面白いことをしてるの」

「はて、私は何もしておりませんが?ただキノコが好きなだけにございます」

「獅子茸の方ではない。バトルホースの方だ。あれは何なのだ」

「ルードルスにも騎馬隊が欲しかったのですが、馬は高級なのでバトルホースを捕まえて、調教しました。」

「簡単に言うな。バトルホースに限らず多くの魔物で調教が試みられたがほとんどは失敗しておる。どうやったのじゃ?」

他の貴族が一番の上座と一番の下座の会話に

息を呑んで見守る。

「それは流石に教えられません。」

「確かに教えられる物ではないな。それより秘密の秘匿はちゃんとできておるのか?絶対に他国や貴族派に流すわけにはいかないぞ」

「ええ、調教場所や鹵獲場所も秘匿してますし、関わっている人には全員契約魔法をかけてます」

契約魔法は便利そうな魔法だが、忠誠を誓うや自殺させるなど個人の感情に大きく左右される内容は使えず、情報の秘匿や売買契約などの詳しく端的な内容しか使えない。だから秘密を守らせる事はできるが調教師が敵国でで勝手にバトルホースの調教を始める事は防げない。だから開拓村には常に脱走しないように兵士達を置いている。

「うむ、ならよかろう。では軍議を始めるぞ」 



軍議ではまず、相手の数が8千人に増えたことが伝えられた。こちらも援軍をたのんだが、2週間は持ち堪えないといけないらしい。

明日の陣形は中央に公爵軍3千、右翼に子爵軍500に小貴族達、左翼に男爵2家で千人と小貴族達だ。ルードルスは右翼に配置された。


次の日、俺たちは右翼の中でも1番右端の先頭に陣取った。これは、魔法部隊を安全かつ最大限に運用するためだ。


緊張で戦場全体の空気が張り詰める。

開戦の合図とともに俺は騎馬隊を率いて敵陣に突撃した。小さかった敵がどんどん大きくなる。俺は敵前線にぶつかる直前に外へ曲がり、敵の側面へと馬を走らせる。俺の後ろに続く騎兵達も綺麗に迂回する。そして側面から敵の先陣に突っ込む。バトルホースは自身で身体強化魔法を展開してるのでちょっとしたことでは怪我はしない。俺たち騎馬隊は敵をハルバードで薙ぎ払いながら容赦なく敵に突っ込む。槍だと突くだけで多数を相手するのには向いてないが、ハルバードは横に振り回すだけで2、3人吹っ飛んでいく。俺たちは前線指揮官目掛けて一直線に進んだ。



その頃、残された歩兵部隊と魔法部隊はレオポルドとラーナが率いていた。キースは本村でお留守番だ。歩兵部隊が敵前線にぶつかると、魔法部隊が敵前線の30m後ろを詠唱省略してアロー系魔法で攻撃する。

ルードルス領では俺が勝手に魔法を分類している。

ボール系魔法   ファイアボールなど

ウォール系魔法  ファイアウォールなど

アロー系魔法   ファイアアローなど

収束魔法     ファイアスピアなど

拡散魔法     フレアなど


だいたいこの5つに分かれる。


ボール系は直線的に目標に向かう

ウォール系は防御魔法

アロー系は放物線を描く

収束系魔法は一点に集めて貫通力を高める

拡散魔法は広範囲にダメージを与える



ルードルス領ではこの5つを系統別に徹底的に訓練させて速く、そして一度にたくさん発動できるようにさせている。


また、魔法の詠唱には四段階のレベルがある

完全詠唱  教本の詠唱を全てする

省略詠唱  詠唱を1部省略する

詠唱破棄  魔法名だけで発動する

無詠唱   イメージだけで発動する


普通、省略詠唱までしかできない。

大国の宮廷魔法師でさえ詠唱破棄ができる人は少ない。無詠唱に至っては伝説級と呼ばれている。




魔法部隊のアローレインで敵前線の後方は混乱している。そこに歩兵部隊が前線を打ち破り襲いかかる。気づいた時には敵右翼は4割は損耗していた。





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