第8話 キノコ騒動

俺は2週間かけて公爵領都にやってきた。俺は公爵領都にある、王国東部有数のレーベック商会の本部に入った。

いかにも温厚そうな老人が話しかけてくる

「いらっしゃいませ。ご用件はなんでしょう」

「ルードルス家当主ルードルス・アークノイドと申します。実は、商会長にお会いしたいのですが、お時間がある日を教えていただけますか?」

こっちは貴族だが、相手は王国東部でも有名な商会だ。一応下手に出る。

「少し、こちらでお待ちください。」


俺は通された部屋で10分くらい待つ。すると、40代くらいのいい服を着た人がやってくる。

「お待たせしました。私が商会長のレーベックです。」

レーベック商会は現会長が設立してわずか20年で王国東部でも有数の商会になった。

「お時間ありがとうございます。ルードルス家当主のルードルス・アークノイドです。」

「本日はどのような御用で?」

「実は、こちらを定期的に買い取って欲しいのです」

俺は従者に持たせていた木の箱を開けた。そこには立派な獅子茸が2つ置いてあった。

レーベックは目を丸くする。

「もしや、これは森の方で?」

「ええ、たまたま群生地を知っている者がいたのですが、その価値を知らなかったみたいで今までは気づかずに食べいたそうです。最近、私が領都に来た時にそれが高価だと知ったようです」

「毎月いくらくらい卸せますか?」

「月に10本ですかね」


レーベックは考え込む。

「1つ金貨3枚でどうでしょう。」

妥当な判断だろう。俺がレーベック商会を選んだ理由は損も得もさせない、誠実な商売をするからだ。アルフォンスの貧乏下級貴族仲間の評判もかなり良い。さらに、ここは公爵のお抱え商会だから安心して取引できる。そんなレーベック商会だが、王国東部一の商会ではないのは他の中級貴族が別の商会を使ってるからだ。


「金貨4枚になりませんかねぇ。」

「流石にそれは高すぎますよ。ルードルス領まで行くのにもお金はかかりますからね」

「じゃあ、特別にこちらを数量限定で卸すのでどうでしょう」

俺は従者からもう一つの箱を受け取り開けた。レーベックは先程以上に目を大きく開いて驚く。

「こんなに大きい獅子茸は初めて見ました。」

俺は普通の2倍サイズの獅子茸を出した。

「わかりました。金貨4枚で買い取りましょう。こちらも金貨30枚で買い取ります。

実は、2週間後に国王が公爵邸を訪れる時の晩餐の食材をこちらで取り扱うことになっているのですが、これを使えば満足していただけそうです。」


俺はさらにレーベックに条件を付け加えた。

「こちらを受け取りに来る際は馬車の中は空いてますよね?できれば日用品や食料などを買いたいので持ってきてもらえませんか?

こちらからは獅子茸に加えて魔物の素材を売りますので」

「アークノイド様は商売が上手ですね。今回は完全に負けました。いいでしょう、条件を飲みます。」


俺の今回の本命はこれだ。今までは小さな行商人に年数回来てもらっていたが、辺境なのでかなりふっかけられていた。しかし、レーベック商会とwinーwinな関係を築けたので生活用品に関しては実質タダで来てもらえる。レーベックもそれに気づいたのだろう。今回は終始、俺のペースだったので俺の勝ちだ。



それは俺は村に戻って淡々と仕事を済ませる日々だった。

そんなある日、領都からレーベック商会の早馬が届いた。何事かと手紙を読んでみると、なんと、俺の売った獅子茸に国王が満足されて献上する様に言われたらしい。

普通は献上とは自分からするものだが、今回のように献上を要請されることはとても名誉なことで、献上する事で今回の場合、ルードルス産の獅子茸には王家公認の特別な印が押されて値段も倍に釣り上がるのだ。俺は急いで開拓村に向かい、今採れているものの中で1番大きいものを選んで領都まで運ばせた。もちろん、貴重品なのでラーナとキースの護衛付きだ。献上品は前回のとほぼ同じ大きさのものだ。大丈夫だろう。


1ヶ月後、ラーナとキース達がレーベックからの手紙を持って帰ってきた。取引額を一個金貨10枚にするそうだ。かなり太っ腹だな。





さらに1ヶ月が経つとご近所さんトラブルが発生した。公爵領に行く途中にある男爵領で関税を倍に引き上げられた。せっかく獅子茸が軌道に乗ってきたところに良くも邪魔をしてくれる。となりのクルッカス男爵が最近戦争でも活躍し、更に獅子茸が献上されたうちを根に持っているそうだ。俺はすぐさま報復に出ることにした。



まず、レーベック商会にクルッカス男爵がルードルスに嫌がせをするためだけに関税を2倍にしたことを男爵領と公爵領で流してもらう。

そして俺は兵士を率いて盗賊のふりをして魔の大森林を通り男爵領の村々を襲う。村人は流石に無罪なので殺さず、食料を奪い、家を焼き払うことにする。そうすると、生きた村人が近くの村へ行ってすぐさま村同士で盗賊の噂が広まる。そしてそこに俺の領は兵士が多いから安全という噂を流して男爵領内の人を自発的に移住させる。そしてうちの領内で開拓村を作らせる。

あくまで名目は開拓村を作りなので、王国の法律的に合法になる。俺って策士だわ。



3ヶ月もすると、男爵領から500人近い人が移住してきた。俺は本村に入るだけ入れて、入りきらなかった250名のために西村を作ることにした。


西村は本村より魔の大森林から遠いので農業中心でやってもらう。さらに、俺は追加の兵士、魔法部隊を作ることにした。

兵士は移住者から若者150名、魔法師も若者を100名選び、訓練メニューを渡した。


その後、男爵が怒って乗り込んで来たが、知らぬ存ぜぬと王国の法律で突っぱねた。俺を甘くみるのが悪い。

そうしてルードルス家は騎士爵だけど準男爵並みの資金力になったのだ。




隣の男爵領では次第に重税になり住人の夜逃げが多発し、ついには領主まで夜逃げして公爵領に組み込まれたのはまた別の話である。

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