ルードルス家改革編
第5話 別れと覚悟
それから半年して事件は起こった。アーサーが倒れたのだ。急いで村の医者に見せたが、全く原因がわからなかった。そして介抱の甲斐なく倒れてから3日で息を引き取った。
俺はずっと自分の部屋で泣きじゃくった。記憶を消しているから親を亡くすのは初めてで、悲しさが溢れて出る。あまりにも唐突な死で心の準備ができていなかった。
すると、アルフォンスが扉を蹴り飛ばし中に入ってきた。
「いつまで泣いてるんだ、お前は!お前は急いでこの家を纏めないといけないんだぞ!」
「じいちゃんが当主に戻ればいいじゃん!」
「奴の遺言にはお前を当主にすると書いてあるし、わしもお前を当主にするつもりだ。あいつはお前が相応しいと思ってルードルスを託したのにお前は逃げるのか!」
俺は転生して人を殺す覚悟もあって戦争で活躍して傲慢になっていたのかもしれない。この世には一騎当千の化け物がウヨウヨいる。俺は絶対に生きて成り上がると決めたんだった。こんなところで立ち止まってる場合じゃない。
アーサーの葬儀の後、俺は当主になった。しばらくはアルフォンスが全面的にサポートしてくれる。ちなみにアーサーの死因は王国でも年に5件程度しかない発症しない非常に珍しい病気だとアーサーが亡くなった後にアルフォンスがわざわざ公爵の領都から呼んだ医者が教えてくれた。
父さん、俺はルードルスの名を大陸中に轟かせます。そう墓の前で誓った。
俺は当主としての一歩を踏み出した。俺は3ヶ月前から内政業務の勉強を終え、手伝いを始めていたのでだいぶ楽に仕事ができた。それでもかなりの時間を仕事に費やしているから修行ができていない。そんな状況を見たアルフォンスはアーサーの姉と弟を呼び戻すと言った。俺は今までアーサーは一人っ子だと思っていたが、貴族なのに息子一人はありえないとアルフォンスに笑われた。
姉をラーナ、弟をキースと言うらしく今は二人ともダンジョンに挑んでいるらしい。
貴族の三男、四男は基本的に領地を分けられて下級貴族として生活するか、家を出て他の職業につくかの2択だ。ダンジョンは何のしがらみもなく、金もそこそこ稼げるので貴族生活に飽きた奴らがこぞっていくらしい。ラーナはそのくちだ。キースは単にドラゴンスレイヤーになりたいという小さい頃の夢を追いかけてるらしい。
俺はまず週に2日、夕方に男達に2時間ほど集まって剣の訓練するように領民たちに指示した。いざというときに戦える人を増やすためだ。ルードルスの村は隣のポーズ子爵が間にあるだけで、国境がすぐそこだ。いざという時には農民が武器を取って戦わないといけない。アルフォンスには、これの指導をしてもらう。
先の小競り合いで領民からの俺の評価は高いし、平民にとってアルフォンスは平民から貴族になった英雄だ。意外にもすんなり受け入れられた。
さらに腕の立つ若者に自警団を結成させた。この村は小さ過ぎて悪さをすればすぐ村八分になるので誰も犯罪をしない。それよりも魔物に対しての対策が必要だ。村の周囲には申し訳ない程度の柵があるが、ほとんど役に立たない。魔物を間引く冒険者はうちには冒険者ギルドがないからいない。俺は自警団に魔物を狩ったら買い取ると伝えると、20人ほど喜んで加入してくれた。この村は辺境にあるので年に数回の行商人以外に商人がおらず魔物は飯になる程度の存在で狩っても牙や皮を加工して金にする事はしていなかったので倒してもあまり実入りのない存在だった。
俺の付き人的な存在になりつつあるクリストフには村の子供たちを軽いおやつで釣って午後に剣の訓練をさせる。やはり、木剣を持った少年は勝手にチャンバラを始める。そんな調子に乗ってるやつをクリストフがボコボコにして鬼教官と化していた。
当主を引き継いでから3週間が経った頃、俺はアルフォンスと馬車に乗っていた。俺たちは今、公爵領の領都に向かっている。俺は領都で公爵様に叙任の式典をしてもらうことで正式な引き継ぎになるらしい。
移動中、俺はひたすら魔法の練習をしたが魔力に限りがあるので一日中できるわけではない。俺の初めての馬車旅はひどく退屈なものとなった。
馬車で揺られること2週間、俺はついに領都に着いた。領都はものすごく大きく華やかだった。しかし、王都はこれより大きいらしい。俺たちは貴族用の宿を取ってから街を散策した。
俺はレオポルドを連れていろんなものの物価を調べた。俺は魔力ポーションと回復ポーションが明らかに高いことに気づく。銀貨10枚くらいする。
この国の貨幣は
銅貨1枚 十円
銀貨1枚 一万円
金貨1枚 一千万円
白金貨1枚 百億円
大白金貨1枚 一兆円
銅貨1000=銀貨1
銀貨1000=金貨1
金貨1000=白金貨1
白金貨1000=大白金貨10
平民の平均年収は銀貨200枚。
薬屋に値段が高い理由を詳しく聞いてみるとそもそも材料が高いし、薬師も基本自分の弟子にしか教えずその弟子自体もあまり取りたがらないらしい。
俺の村のすぐそこは魔の大森林で材料もたくさんあるだろうから、薬師の数の問題さえ解決できれば儲かりそうだ。これは金の匂いプンプンがする。
宿に帰るとレオポルドが、
「市場にあった獅子茸というキノコですが、村の近くの魔の大森林に生えてますよ」
と衝撃の一言を発した。獅子茸一本金貨5枚はするはずだ。魔物ばっかりで危険だが、帰ったら実際に森に行って調査しないといけないな。
夜になると城に行っていたアルフォンスが帰ってきた。明日、登城して公爵に会うらしい。一応貴族の礼儀は習わされたが、一歩間違えればすぐに首が飛ぶような相手なので俺は不安でいっぱいだった。
俺は次の日の午後、迎えに来た馬車に乗って城まで向かった。城は水堀で囲まれていて壮大だった。
俺は控え室に通され、公爵家の従者から手順のおさらいをしてもらった。めちゃくちゃ緊張する。相手は公爵だ。こっちは何か粗相があったらすぐ消せるような弱小貴族だ。
俺は緊張しながら広い部屋に通される。奥には公爵、左右には兵士が立っている。俺はゆっくりと前へ進み膝を立てて座る。公爵がゆっくりと俺の前に来る。
「汝、アークノイド・ルードルスは王国と民のために尽くすと誓うか?」
「誓います」
俺は手順通りに式を進め、無事退室できた。
安心したのも束の間、俺は公爵の執務室に通された。俺は公爵ので膝を突き礼をした
「公式の場以外では礼儀などよい。楽にしなさい」
「ありがとうございます」
「アーサーは何度も功を挙げた優秀なやつであった。あの若さで亡くなるとは儂も心苦しいぞ」
「亡き父も喜んでいると思います」
「アルフォンスは元気にやっとるか」
「祖父は元気ですが、祖父をご存知なんですか?」
「知ってるもなにも、儂の初陣の時からほとんどの戦場を共にした仲だぞ。儂が敵に捕らえられた時にたった100人の傭兵達だけで儂を救出してくれて、その時、儂の父の国王が感謝して貴族にしたんじゃ」
俺は驚いた。おじいちゃん、結構すごいじゃん。
「昔話はさておき、先代と先々代との功に報いてルードルス家は1年間戦争に参加しなくていいぞ。しっかり領地の管理をする様に。」
俺は驚いた。普通、一年で2、3回は戦争に行かないといけないので、戦争がなかったらだいぶ楽だ。かなりの太っ腹だ。
俺は公爵に初陣での活躍を褒められ、城を後にした。
宿に帰ってアルフォンスに城でのアルフォンスの話を話すと恥ずかしそうにしていた。
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