第弐話 新しい開戦

朝、カナデ先輩の胸の中で起きた。

昨日の夜は腕枕されてたのに、今度は抱き枕かいな、、、でも先輩めっちゃいい匂いがする。しっかりと腕を背中に回されて動けない。肌着だけで寝てるから、胸がもう近い!!大きさとしてはないけどなんかめっちゃエロい!!そして今頭が当たってるからわかる。柔らけえ!!それに心臓の鼓動が聞こえてくるのもなんかえっち!!

ちょっと触ってみるか、、、


「んっ、、、ンゥ、」


身体がビクッと震える。柔らかい色気がするのが余計に理性を遠のかせる。


「、、、んぁぁぁ、、、おはよう。リーフ」


起きちった。頭を掻きながら、洗面所に向かって歯磨きをし始める。後ろ姿を見てると、彼女っぽくてなんかおもしろい。口に水を含んで、吐き出すその一瞬までが人を魅了できそうで、これが人間の魅力かと思う。

部屋に届いていた制服に袖を通し、スカートを持ち上げる。横についてるジッパーを閉じていつものカナデ先輩の姿になった。


「おはようございます。カナデ先輩。」


「やっと返事したな。おはよう。リーフ」



その後私も身支度を整え、朝食のために部屋を出た。部屋を出る前に携帯がどこかに無くなってた。おそらく没収された。SNSが使えないのと外と連絡が取れないのが少しうざったい。

さっき部屋にあった地図を見ながら食堂まで行った。

食堂にはピンク色の髪をしたツインテールの明らかにヤバそうな奴がいた。でも何かおかしい気がする。ずっとソワソワしてて、挙動不審だった。

私はカナデ先輩の顔を見てみる。先輩はこっちを見て悪戯に誘うようにニヤッと笑った。

二人一緒にヤバそうなやつの前に座った。

座った瞬間にヤバそうなやつがビクッと動いた。カナデ先輩がニヤニヤしながら


「どうした?さっきからキョロキョロして」


「い、い..い、いえ!なんでもないです!なんでもないです!」


この人やっぱりトンデモねぇな、、、


「お前、男だろ?」


「ちちちちちち、違いますよ!見てくださいよ!こんなに髪も長いし!女みたいな顔だし!!」


「じゃあなんで、さっきからそのフリフリした、スカートの股間を押さえてるのかなぁ?

朝勃ちってやつ?」


「あ、ああああ、あぁあの!その!!えっと、、、はい、そうです、、、、」


「いやぁー、年頃の男だな。どう?何回くらい抜いた?このほぼ幽閉された空間で」


これ止めなきゃダメだな。


「カナデ先輩。STOPです」


「はいはい。で、どしてそんな格好してんの?趣味?あと名前は?」


どんどん詰めるな。おもろいけど


「横山レビです。格好は趣味です、、、この格好してると自分に自信がでて、女の子とも話せるんです。でもバレるのは怖くて、、、、」


「大丈夫だろ。そんなに可愛いんだから」


やっぱだめだこの人!!この女(?)たらしどっかに閉じ込めろ!!!


「や、やっだなぁ!!可愛いなんてそんな!そんなこと言わないでくださいよぉ〜!」


めちゃくちゃちょろいなこいつ。可愛いって言っただけでめっちゃ照れるじゃねぇか。


「そういや、あんたなんて才能?ここにいるってことは戦闘に活かせるようなやつだろ?」


「ぼ、私の才能はリズム感の才能です」


「なんでだ?それ音楽とかに使うんだろ?」


私がシンプルに気になって聞いてみる


「多分ですけど、銃打つ時に使うんじゃないかなと思ってます。反動で銃の向きが変わっちゃうからそれをタイミング合わせて力を入れる。そうすると真っ直ぐに弾が飛んでく。

そんな感じかなって」


「なるほどな。銃撃った経験は?」


「ないです」


こりゃ練習しないとダメだな。

その後ご飯を食べて、部屋に戻され、特に何をするでもなく寝た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何か音がして起きた。隣の部屋からガチャガチャと音がするのが聞こえる。隣にいるリーフを起こした方がいいと直感し、揺すって起こした。


「どうしたんですか?カナデ先輩、、、」


眠そうな目を擦りながら私の方を向く。


「寝たふりしてろ。誰かくる。」


近くにあったカッターナイフを服の裾に入れ、ベッドの柵をへし折って武器にした。


ガチャリ


ドアが開く。それはゆっくり開けるわけでもなく普通に、眠りが浅い者なら起きてしまいそうなくらいの大きさだった。

印象的な赤い髪。硲とかいったかな?そいつがドアを開けて立っていた。


「なにやってんだ」


目を細めて聞く。


「起きてたか。や、君たちを今から戦争の場にぶち込もうとしてるんだ。そのままでは心許ないだろう?死にたくはなさそうだしね」


たしかにそうだ。死ぬ気などさらさらない。


「あたぼーよ。死にたかねぇし死ぬ気もねぇ

で、なにすんだよ」


「別に誤魔化す必要もないしな。これを打ち込む」


彼女はケースの中から注射器を取り出す。紫色と緑色の液体が入ってる。


「これなーんだ?」


「なんかの細胞か、私らを管理するための脅しの材料かのどっちか」


「正解。細胞だ。さーてどんな細胞だ?」


子供がなぞなぞを出すような言い方で質問された。検討もつかないが当てずっぽうで答える。


「病気にならなくなる細胞とか?」


「当たらずとも遠からずって感じだな。なーにお前らにデメリットはねーから安心しな」


嘘をついてる顔ではなかった。今まで私とリーフを殺すつもりで近づいてくる人間は散々見てきた。嘘をついてる顔などすぐにわかる。


「これは今年、2020年に開発されたばかりのブツでね、作らせるのに時間もかかるし金も掛かる。あんたらは特別なんだよ。ほら黙って首出せ」


これも嘘ではないというのが肌に伝わる。一言、一言が脳に響く。さてはこいつ、、、


「ほらよ」


制服の襟を引っ張り首を差し出す。硲はじっと首を見てから近づいてくる。


「綺麗な肌だな。とても喧嘩師にゃ見えねぇ。我慢しろよ」


首の横から少し後ろあたりに鉄の針が刺さる。ゆっくりと私の中に馴染んでくる液体。シャボン液が口に入ってしまった時のような不快感がとても気持ち悪い。注射は嫌いだ。嫌なことばかり思い出す。


「終わったよ」


「あっそ。はよ寝たいからさっさと出てけ」


「刺してた時に少し震えてたけど昔になんかあったのかい?」


腕を首に絡ませながら聞いてくる。昔に何かあったかと言うと、まぁあるにはある。それよりも自分の考えてることが見透かされてるようで背筋が気持ち悪い。肌に張り付いた小さな氷が背中を這うような、そんな嫌な気持ち悪さが彼女の一つ一つの言葉に絡みついていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目が覚める。

「うぅっッ、、、、」

強烈な寒気と横隔膜が迫り上がり肺を圧迫するのが身体でわかる。

起きた瞬間に息苦しさで、倒れてしまう。長時間走った時より、子供の頃に家の二階から飛び降りた時より、数段苦しい。


「大丈夫か?」


カナデ先輩が声をかけてくれた。窓の縁に寄りかかりながら煙草を吹かしている。


「あと少しもすれば治るから耐えろ。薬の副作用だよ。身体の変化について来れてないんだ」


薬?、、、、、昨日の夜中に話してたやつか。一回起きた時にカナデ先輩に寝たふりしてろって言われたけどそのまま寝ちったから、、、そんなことがあったんか、、、


「馴染むのにあと数時間かかるらしい。苦しさはあと5分くらいだと思う。それからはちょっと眠さが馴染むまで残る。横になっとけ」


私のすぐ横まで来て、膝を崩す。


「早く頭乗っけろ。ほら」


「あーーー、、、きっつ、、、、、」


膝やわらけえ〜〜〜。気んもち〜〜。


「........ん.....」


撫でられてる、、、あったかい、、、、優しい顔、、、、、柔軟剤のふんわりした香、、、、り、、、、、、



        数時間後


「はっ!!!」


寝てた!!今何時だ!?やべー先輩にどやされる!!


「目ぇ覚めた?」


「、、、はい。」


怖ええええええ!!なんで今日はこんなに優しいんだよぉぉぉぉ。そういえば今日は先輩から言ってきたんだった。じゃあしゃーない!存分に甘えよう!


「先輩、もうちょいこのままでもいいですか?」


「調子乗んな。さっさと退け」


「はーい、、、」


むくりと起き上がり、背伸びをする。


「調子はいいか?」


「はい!それはそれは絶好調ですよ!」


「じゃ、やりに行くぞ」


「え?」


「もう辛くないだろ?もう行くらしいぞ」


「嘘ぉ、、、、」


「30分だけ待ってやるから、さっさと準備しろ」


これはガチっぽいなぁ、、、いきなり戦争にぶち込まれるのとても嫌だ、、、、、、





        一時間後


        戦闘機内 


「2020年、6月18日、日韓戦争を開戦します。作戦は奇襲です。あっちはまだ仕掛けることを知りません。」


美人で、私よりは背の高い銀髪の女性が丁寧な口調で説明を告げた。


「次にどの場所に降下するかですが、」


「ちょっと待て」


カナデ先輩が説明を止めた


「なんで今から戦争しようとしてる?この国は憲法だかなんだかで禁止されてんじゃないのか?」


「その件については口止めされていますので言えませ、」


ガンッッ!!!

話しを遮って襟を掴んで思いっきり飛行機の壁に叩きつけた。


「ゲホッ!!ゥゥうぅ、、、」


「ちょっ!カナデ先輩!!!まずいですよ!!」


「さっさと言え。ここでの回答は黙っといてやる。話さなきゃ五体満足じゃ帰れねぇぞ」


ポケットから折り畳み式のナイフを取り出し、右腕に当てた。


「は、はい。わかりました。全てお話します」


「そうだ、それでいい」


ほんとに変わらないな、この人は。


「アメリカが韓国から大規模なサイバー攻撃を受けました。それに反抗してアメリカが反撃。それで戦争するという流れになりました。アメリカが戦争することで集団自衛権が発生して日本も戦うことになりました。そして韓国の中には偽装したアメリカ兵がわんさかいます。この条件だと憲法は機能せず、戦わなければいけないんです」


「そうか事情説明ありがとな。この件は絶対に口外しない。約束しよう」


「わかりました。では作戦の概要に移ります。今回の作戦は先ほども言った通り奇襲です。北の地方の市町村全体のマンホールに爆弾を仕掛けています。それを1日に5個ずつ爆破していきます。相手が爆弾に気を取られるうちに色才病持ちが東、西、南から攻めます。北には日本とアメリカの志願兵がいるので安心して叩いてください」


「なるほど。よくわかった。で、各方角には誰がいる?」


先輩が聞いた。


「東には、ナシロ、レビ、ルート。西には、リーフ、カナデ、ミカ。南には、クラマ、アタゴ、ツムギが降ります。」


ミカ?どんなやつだ?まだ話してないからわからない。どこにいるんだ?


「その、、ミカって人はどこですか?」


「あぁ、彼女はあとで合流します。まだ乗る勇気がないようなので今は寝てもらってます。準備が整い次第輸送しますのでお待ちください」


輸送て、、、


「そんなことはいいとして、これを渡してくれと御門司令から言われております」


そういって飛行機の床を開き、厳重な細長い黒い箱を取り出した。


「武器かなんかか?」


「はい。あなたにはこの2本を渡せと言われています」


箱の中から取り出した大小2本の刀。鞘が普通のものと異なり大きいのが少し気になる。


「あのーこの鞘ってなんですか?なんか普通より大きい気がするんですけど、、、」


「この鞘の側面に窓があります。そこを開けてみてください」


出っ張りに指を引っ掛けて開けてみた。

中には千度を超える熱さの火と、何やら複雑そうな機械が動いていた。


「なんだこりゃ!こんなもん鞘につけて大丈夫かよ!?何のためにこんなもんを?」


「いくらいい刀匠が打っても流石に何人も斬ってたら刃こぼれは免れません。なのでいつでも作れる様に開発しました。現在で最高の技術を労して作ってあります。安全面も問題ありません。よろしければお使いください」


「あぁ。ありがたく使わせてもらいます」


「あなたにはこれを」


「私のは長物(長い刀の意)か。それにサブマシンガンに、手榴弾、あとバグ・ナクとかの携帯暗器、それに加えて煙玉、、、なんだいこりゃ?」


「武器などはほとんど全て使えると聞いたので用意しました。あなたたちの噂は常々聞いてます。えぇそれは毎日毎日、、、」


あ、やべ。これよくない流れだ。


「あなたたちのせいでね!最近仕事が多いんですよ!!!せめてなんかしらの証拠を残してくださいよ!!そうじゃなきゃ余計な仕事も増えるし迷宮入りになったらそれはそれで面倒なんです!」


「いやはやそれは申し訳ない」


「ニコニコしながら言わないでください!こんなに私に迷惑掛けてるんですから!さっさと勝って、お酒の一杯でも奢ってくださいね!」


「あぁわかった。これ渡しとくから終わったら連絡よこしてくれ。一杯奢ろう。悪かったな」


カナデ先輩が胸ポケットから名刺を取り出して手渡した。


「ありがとうございますぅ。ズビッそれでは、御武運を」


美人なねぇちゃんが、扉を閉じて出て行った。


「いい人そうでしたね」


「そうだな。でも皮肉なもんだ。本来対立しなくちゃいけないはずの国と族が、国が頭下げて私たちに頼まなきゃいけない。やなもんだな」


煙草に火をつけながら零した言葉の中には寂しさも含まれてたような気がする。


「行きますか」


「あぁ」


「一応言っときますね。さようなら。元気にいきます」


「私も、さいなら。私もいくよ」


先輩は口から煙草を離し、床にグリグリと擦り付けた。

戦闘機の扉が開き、風が吹き込む。


    私は近くの定食屋の扉を跨ぐように

    私は近くの墓場の石段を跨ぐように


       一歩前に踏み落ちた


          開戦だ

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第一次カラックジェニアス 漢の兄貴 @ri-fusan

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