第10話 スポンサー
「ミキさん!やりましたよ!あのトップアイドルを抜いて、ミキさんがCM出演ランキング1位です!」
ミキのマネージャーがそう言った。
「これで、名実ともに『CM王』ですね!」
喜ぶマネージャーをよそにタレントのミキはうなだれていた。マネージャーが不思議そうに尋ねた。
「なんで、そんなにうなだれているんですか。収入だってこれからもっと上がりますよ。」
ミキは答えた。
「すぐに抜かれるさ。」
「なぜですか。」
「芸能界なんて入れ替わりが速い。私のCMの数を抜くタレントがすぐ現れるに決まっている。収入もすぐに下降線に入るさ。」
落ち込むミキにマネージャーが一つ提案してきた。
「ミキさんこれからも多くのCMに出れるように努力をしましょう。」
「努力?具体的にはどういうことを?」
「今出ているCMの商品を使って生活するんですよ。食べ物も飲み物も、今出ているCMの商品で賄うんです。」
「スポンサーさんに気を遣うのか。たまにそういうタレントがいるのは聞いたことがあるが。」
「でも、ミキさん程の本数に出演していてそれをすれば絶対に評判になると思うんです。」
「しかし、全部というのは難しいのではないか?」
「でも絶対好評になります。そうすれば新しい出演依頼、そして契約継続間違いなしですよ。」
「まあそうなるのかな。」
ミキはマネージャーの提案に乗ることにした。
それからのミキの生活は全てスポンサー関連の商品で賄った。
スポンサーのコンビニで、スポンサーの水とスポンサーのレトルトカレーを買い毎日を過ごした。衣服もスポンサーのブランドに揃えた。住む場所もスポンサーの不動産の物件に変えた。スポンサーの銀行に口座を作り、全財産を移した。スポンサーの車に買い替えて、スポンサーのガソリンスタンドでガソリンを入れた。スポンサーの生命保険に加入した。スポンサーの携帯会社で契約したスマホでスポンサーのゲームアプリをプレイした。
こうした努力はすぐに評判になった。マネージャーが嬉しそうにミキに言った。
「凄いですよ!新たな会社から出演依頼続々です。今契約しているスポンサーからも契約を更新したいと連絡頂いてます。2位のタレントとの差をつけることになりますよ。」
「これで、死ぬまでCM王としていれそうだな。それで、新しいスポンサーはどんな商品を売っているんだ。」
「○○と、□□と、△△ですね。」
「よし、全部出るぞ。」
ミキはその後もスポンサー関連の商品で生活を送った。
しかしそんな生活で無理がたたったのか、1年後ミキはポックリと死んでしまった。ミキはスポンサーの葬儀社で葬儀を行い、スポンサーの石材店の墓石に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます