第9話 名占い師

 マツヤマは、自分の会社の経営不振に頭を抱えていた。このままでは、会社をたたむ以外道はなかったからだ。そんなマツヤマの元に部下が訪れた。

「マツヤマ社長、今月の売り上げです。」

「ふむ。頼みの新商品も駄目だったか…。これは本気で会社をたたむことを考えなければいけないな。」


 マツヤマはある種の決断をしようとしていた時だった。部下がマツヤマに提案をしてきた。

「社長。会社の状況もこんなです。どうです、最近評判が高い占い師がいるんですが。」

「占い師?私は占いというものが嫌いだ。」

「なぜです。会社の方向性の道標ぐらい示してくれそうでしょ。」

「あいつらは何の根拠もなしに誰にでも当てはまりそうなことを偉そうに言うだけだ。しかも外れたときの責任は取らない。そんなことで金を稼ぐ奴らと違って、我々は計算されつくした経営で悩んでいるんだ。」

「しかし、このままでは倒産一択でしょう。お金なら私が出しますから。話聞くだけでもいいじゃないですか。」

「まあ、君がそこまで言うのなら…。」

マツヤマは部下と占い師のいる街に向かった。


 到着した場所には、3人の占い師がいた。

「おい、どいつが評判の占い師だ。」

「私も直接会ったことがないので…。」

「しょうがないな。」

 マツヤマはそれぞれの占い師に話しかけることにした。


 一人目は、中性的な見た目をしたスーツを着た占い師だった。占い師は言った。

「私は、今まで500人の人を占ってきました。タロット占いで的中率は80%といったところでしょうか。お客さんもいかがですか。」


 二人目は、ゴージャスなドレスを着た女だった。占い師は言った。

「アタシは、今まで2000人の人を占ってきたわ。的中率は95%よ。アナタも地獄に落ちないようにアタシが占ってあげるわよ。」


 三人目は、みすぼらしい見た目の貧乏そうな男だった。占い師は言った。

「僕は、今まで2000人の人を占ってきたが、恥ずかしい話、一回も当たったことがないんですよ。今日も占った人から苦情が来たんです。こっちは精一杯占っているんですけど。」


 三人から話を聞き終えて、部下がマツヤマに言った。

「社長。どうやら二人目の占い師のようですね。2000人占って95%の的中率は、本物の名占い師ですよ。早速占って貰いましょう。」

二人目の占い師の元に向かう部下をマツヤマは必死に止めた。

「社長、何をするんですか。」

「君は馬鹿か!本物の名占い師は三人目だ。」

「何を言っているんですか?一回も当たったことがないって本人も言っていたじゃないですか。」

「いいか!精一杯占っているのに一回も当たらないということは的中率0%だ!つまり彼が占ってしてくれたアドバイスと真反対の行動をすれば100%成功するということだ!」


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