第3話 進化

 小さい研究所を持っているジョン博士は助手を電話で研究所に呼びつけた。電話でのジョン博士の声に、助手は何か革新的な物を作ったに違いないと確信し、すぐさま研究所に駆け付けた。研究所に入るとそこには人間一人が入れるカプセルがあった。

「博士。このカプセル一体何でしょうか?」

「ああ、これこそが君を呼びつけた理由だ。」

「何か素晴らしい発明なんでしょうか。」

「勿論だ。これまで何の実績も持たなかった私がついに20年の月日をかけて発明に成功したのだ。」

「それは、ますます興味が出てきます。それで、どういった発明なのでしょうか。」

「効果を説明する前に、君にこのカプセルに入ってもらいたい。」

説明をしないジョン博士に助手は不信感を覚えた。

「説明をしていただけないでしょうか。」

「それじゃ、何の驚きも出ないだろう。」

「そこまで言われると、信用ができませんな。まさか、私の身体がゴリラの様になってしまうとか…。」

「安心したまえ、そんなことは起きることはない。そうだな…、一言でいえば、君の身体は進化するんだ。」

「進化ですか?」

「ああ、君に害がある結果には必ずならない。私を信用してくれ。」

ジョン博士の言葉に、助手は恐れながらもカプセルに入ることにした。


 10分後、助手はカプセルから出てきた。助手は出るやすぐに、大きな鏡の前へはしり、自らの身体を隅々まで観察した。

「特に、変わったところはないようですが…。」

「だから、言っただろう。君の見てくれが変わるような結果は起きないと。」

「失敗なのでは?」

「いや、必ず成功している。」

ジョン博士はそう言うと、持っていたトンカチを助手の頭に思いっきり、叩き付けた。

「何をするんですか?」

助手は慌てふためいたが、すぐに気が付いた。叩かれたはずの頭から、血が流れることはなく、傷一つついてないのだから。

 次にジョン博士はアイスピックで助手を刺した。しかし助手の身体は傷つくことなく、逆にアイスピックが折れることとなった。

「何も感じない…。これは、もしかして…。」

助手の驚きの顔を見た、ジョン博士はご満悦に解説をし始めた。

「驚いただろう。つまり、このカプセルの中に入った者の身体は傷がつかなく、痛みも感じない身体になるのだよ!この意味が分かるかね?」

ジョン博士は続けた。

「我が国の軍隊の兵士がこのカプセルを使えば、他国に負けることのない無敵の戦士になれるのだ。もし、戦争が起きても我が国で、死ぬ兵士はいない。」

「不老不死ということですか?」

「いや、老衰では死ぬ。しかし、銃や大砲などこのカプセルを利用した兵士には効かないのだ。」

ジョン博士はさらに続けた。

「民間的にも、出産の近い妊婦が利用すれば、痛み泣く安心に子どもを産むことができる。私はこのカプセルを大々的に販売し、億万長者になることができる!遂に、人類は痛みを克服し、進化した身体を手に入れるのだ。」


ジョン博士は演説後、助手の方に目をやった。すると、助手はその場にうずくまっていた。そして泣きながら博士に聞いた。

「この身体は痛みを思い出すことはないのですか?」

「それは、未来永劫ないだろう。しかし、なにかね?君はもう老衰以外では死ぬはずがないのに何をそんなに悲しんでいるのだ。」

「私、博士には今まで内緒にしていたんですが、SM倶楽部に通うのを趣味にしていまして…。」

そう告白した助手はまた大きく泣き出した。

「なんということだ。痛みから解放することが、人類の進化とばかり考えていた。」

「この先、痛みを感じることができないなんて、私には死んだも同然なんです。」

「それは、可愛そうなことをしてしまった。もう10年待ってはくれないか。」


 10年後、ジョン博士は痛みを感じるカプセルを新たに作った。

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