第4話 嫌われ者

 我々の種族は地球上でとても有名です。でも、昔は数少なく、希少かつ高価だったんですよ。金持ちの人が道楽で私たちをペットにしていたんですから。金持ちと言ってもあれですよ。国王とかそのレベルの人たちしか、手に入れることができなかったんですからね。庶民なんてまず目にする機会もなく、知らない人がほとんどだったんです。光り輝く美しく姿から、まるで宝石の様だと好評だっんです。


 急になんですがね、祖先の話をしてもいいですかね。私の祖先もね、やっぱりその美しい見た目を気に入れられて、王国のペットとして飼われていたらしいんです。祖先はある王家のモルフォ女王っていう綺麗な方に大変大事に飼われていたらしいです。毎晩、毎晩、宝石よりも美しい、お前が一番私にふさわしいと、愛でていただいてたとか。


 ところが、このモルフォ女王、民衆の方々にはあまり好かれていなかったんですね。見た目は抜群に綺麗だったそうですが、それとは裏腹に、とても気が強い方だったそうで。国内人気が低かったことにすごい腹を立てていたそうです。またこのとき、王家には男性の跡継ぎがいなかったそうです。国の存続には、庶民の人間を婿にとらなければいけないのに、そんな噂がたっているものだから、縁談もなかなか上手くまとまらなかったそうですよ。


 そんな、女王もようやく商人の家の男と縁談がまとまりかけていたんです。ですが、婿の方も女王のイメージがあまり良くないのを気にしていたんです。そこで、婿の方が妙案を持ち掛けてきたんです。そこはさすが、商いに携わっていた人ですよね。

 

 その妙案てのが、我々種族にとっても『転機』だったんです。


 婿と女王の婚姻の儀には、とても多くの民衆が集まったそうです。民衆に向かって、女王が手を振っているときでした。婿が王国のペットで高価な私の祖先を、民衆の面前に出したんです。その瞬間、女王は自分のペットが出てきた癖に、声を出して怖い怖いと、喚き散らし、祖先のことを気味悪がったんです。今でもありますよね。第三者の前で大げさに嫌がって可愛い娘アピールする、『アレ』です。これが大成功したらしいです。泣いて嫌がる女王を見た民衆はギャップからか、彼女に愛嬌を感じるようになったんです。婚姻もとても祝福されたとか。


 作戦が成功して、あなた、良かったと思っているでしょう?祖先の身にもなってくださいよ。そんな作戦のためだけに、民衆の目に晒されたんですよ。先程も言った通り、民衆で我々種族を見たことある人が全くいなかったんですよ。あなたが、そこにいる民衆だったら祖先のことをどう思いますか?女王があれだけ嫌っているのだから、きっと汚いものだと思うでしょう?事実そこにいた民衆もそうだったんですから。それは女王の結婚のニュースと共に、国内外に噂として流れたんです。今も昔も噂の広まるスピードは速いですね。それからは、我々種族を初めて見た者も、飼っていた金持ちも、一斉に汚いものを見る目になっていったんです。


 そして、話は現代に戻るのですが、昔あれだけ高価だともてはやされていた我々を飼いたいという人はいません。あの日を境に本当に我々は嫌われていったんです。今じゃ、我々を殺すためだけの薬品が日々研究され、販売されています。そんな人間のエゴに対抗するには、我々自体、頭数増やすしかないじゃないですか。別に、人間を、噛んだり刺したりするわけじゃないのに、見つけ次第殺されているんですから。私だって何度危なかったことか。こっちだって、迷惑かけないように、気を遣って天井裏とか、冷蔵庫の下に隠れているんですよ。


 全くあの女王には、我々一族ずっと恨みを持っていますよ。自分の人気取りのために我々祖先を利用したのだから。その後、あの女王は世界的にも大変人気者になったらしいですよ。今では世界一美しい蝶々の名前の由来にもなったそうですからね。逆に我々嫌われ者の名前は呼ばれることもなくなり、呼ばれても『G』ですからね…。

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