第13話
相手が何者か確かめてやる。
そんな気分になっていた。
すると次の瞬間……。
オンギャア、オンギャアと、まるで赤ちゃんの泣き声のようなものが聞こえて来たのだ。
さすがに不振に感じた。
あれだけしつこく電話を鳴らしておいてなにもしゃべらない上に、水の音や赤ん坊の泣き声を聞かせて来るなんておかしい。
私はスマホを耳から離して見つめた。
「え……?」
首を傾げた瞬間、スマホの向こうから女のうめき声のようなものが聞こえてきて、思わずスマホを落としてしまっていた。
「このスマホって……」
私が床に落としてしまったスマホは間違いなく、今日車の中から出て来た古いものだったのだ。
「なんで? だってこれはクローゼットの中に閉まったはずなのに……」
だんだん頭が混乱してくる。
私がクローゼットの箱に片付けたのは本当にこのスマホだったか?
今使用している新しいスマホを間違えて片付けてしまったんじゃないか?
そう思うと同時、そんなことはないとどこかで否定している自分もいる。
そもそも……今電話が繋がっているこのスマホにはシムカードが入っていない。
つまり、利用できる状態じゃないということなのだ……。
足元からジリジリと恐怖が湧き上がってきた時、私は弾かれたようにスマホの通話を切っていた。
荒い呼吸を繰り返しながらスマホを確認する。
しかしそれはもう、うんともすんとも言わず真っ黒な画面のまま動かなくなっていたのだった……。
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