第4-②話 魔石を売りに行くぞ!

「こちらの魔石なんですけど。どうですかね? 普通の魔石は買い取らないというのはギルドでも見たのですが、念のため確認で尋ねてみます。」


「ほう。これはとても純度が高そうですね。それにこんな綺麗な球体をしたものはなかなか見ませんね。とても素晴らしいです。


 が、しかし、お客様はこの辺の方じゃないみたいですね?」


「えっと、一応冒険者ギルドと商業ギルドには登録しましたが、確かについ最近この辺に来たばかりと言えばそうなりますね。」


「なるほど。いくつか言いたいことはありますが、まずはそちらは魔石ではありませんね。ただの水晶です。」


「え? 石英や水晶が魔石じゃないんですか?」


「いやいや、それは違いますね。魔石とはあくまで魔力が備わっている石のことです。別に石英や水晶じゃなくても良いんです。ただ、水晶に魔力を込めやすいということで良く使用されているだけなんですよ。


 魔力は自然的に備わることもありますが、魔族、精霊族、エルフ族といった方は魔力を込めることができます。これは一般的な話だと思いますが………。」


「なんと!? そういうことだったんですね?」


『くっ! フロッケのやつめ! そこまでちゃんと言ってくれなかったぞ! まあ、常識過ぎてそこまで意識が回らなかったかな。』


「それと申し訳ありませんが、そちらの水晶は引き取ることができません。先ほどお客様も言っていた通りで、この国では無色と白の一般的な水晶と魔石はすべてギルドが直接管理してます。


 一応、引き取ることはできますが、レートは一律になりますし、自分の店として手数料を貰うことになりますのでそれらは直接店に行かれたほうが良いと思いますよ。


 しかし、ここまで見事な水晶ですから、もしかしたら他店では不正に買い取ってしまうこともあるかもしれませんが、うちは真っ当な商売をしてますのでそういうことはしません。


 しかし、ここまで素晴らしい水晶はなかなか見ません。本当に残念でなりません。」



『やっぱり普通の水晶はダメだったが、まあこれは想定内とはいえ、少し普通の水晶を作る配分をミスったかな?


 今ある水晶も順次ほかの色付きの水晶に変えたほうが良さそうだな。それに今後は普通の水晶を作るのは控えよう………。』



「いえいえ、こちらこそご無理を言って申し訳ありません。それにとてもコンプライアンスの意識が強い方でこちらとしても信頼がおけます。


 それに、この水晶をここまで褒めて頂いてとても恐縮です。それでしたら、こちらの水晶だったら如何でしょうか?」


 そう言って公彦は、今度はシリトンとアメジストを取り出した。



「おおおおおおぉ! こ、これは、す、すごいです---! ちょっと触れてみてもよろしいですか?」


「ええ、もちろんですとも。存分確認してくださいね。」


「いやはや、見れば見るほど本当に凄い。ちなみにこれはどちらで手に入れられたんですか? あと、明らかに誰かの手が加えられていますよね?」


「えっと、そ、それは企業秘密ということで。」


『た、確かにエーベルじゃないけど変に目立ってしまうというのは控えたほうが良いかもね。そこに関してはごまかそう。』


「まあ、秘密というのならあまり深く詮索はやめておきます。へそを曲げられて売らないということになられても困ってしまいますので。


 しかし、これほどの球体ですと、うちが抱えるデザイナーさんもさぞかし創作意欲が湧くというものでしょうね!」


「デザイナーさん?」


「ええ。ご覧の通りうちはジュエリーショップです。主に水晶を扱っておりますが。何人かのデザイナーさんとは商品ごとで契約するんですけどね。


 オークのデザイナーさんがひとりいて、めきめきと実力をつけていて、ユーザには辺境伯の貴族様だけでなく、王国内の貴族様にも個別で注文を頂くこともあります。


 最近では帝国の貴族様からも問い合わせがくるほどになっているんですよ。そちらは専属で特殊な契約で商品を扱わせてもらっているんです。」


「なるほど。そういうことなんですね! ちょっと確認というか質問なんですが、私は芸術に疎くて申し訳ないのですが、もしかして、水晶ももっといろんな形とか色とかあったほうが嬉しい感じですか?」


「そりゃあもう! 色に関してはどうすることも出来ないですが、形に関しては削ったりしますからね。その手間が無くなるとあれば料金も上乗せできますからね。」


「なるほど! ちなみに今、欲しいと水晶の形、ほかにも宝石類はありますか?」


「今はなんでも欲しいですよ! とにかく水晶がぜんぜん足りない状態です。魔石にするため優先されることもありますしね。」


 そうして公彦とは、欲しい形、水晶の種類、どうやったらほかの水晶ができるのかなどを聞いた。もちろん、店主にも分からないこともあったのだが。


 そして、最後に価格のことも聞いた。いろいろと教えてもらったこともあり、店主の言い値で譲ることにした。


 それでも事前に公彦が調べていた価格帯よりも15%ほど高い金額を提示してきたので、本当に良心的な店なのだと思った。



「最後にというか、むしろ申し遅れました。私の名前は『サイトウ キミヒコ』と申します。冒険者ギルドと商業ギルドに登録しております。


 今回とても親切にして頂いたので、今後ともごひいきにして頂きたいと思います。」


「これはこれはご丁寧に。わたしこそ、名乗らずに大変失礼しました。私はこのジュエリーショップ『クリスタ』店主の『ガガル』と申します。


 このような高品質な水晶であれば、とても勉強して購入させてもらいます。ぜひとも末永くよろしくお願いします。」


 そう言って公彦は手持ちのシリトンとアメジストを3分の2ほど売った。


 その後、もう一店今度は魔道具屋に行ったのだが、こちらでも似たような会話があり、残りのシリトンとアメジストを売って帰ったのであった。


 両店舗ともこの水晶の入手先を聞かれたが、それはうまくごまかす公彦であった。


 そして公彦は水晶の色と形、さらにその水晶に魔力を込める研究も始めるのであった。



 ***********************

 いよいよ第三章を書き上げました!

 公彦の実際の仕事の話です!

 エーベルの仕事の話もあるよ!


 たくさんのPV、イイね、ブクマ、そして何より☆をお願いします!

 みなさんの力でこの作品を押し上げてやってもらえると嬉しいです!

 どうぞ、よろしくお願いします!!!

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