第5-②話 総合ギルド長と魔王様との会談へ

 そうこう思っていた公彦であったが、ギルド長がすかさず回答してくれた。


「いやいや、確かにキミヒコ殿の言うこともわかります。不快に思っていらっしゃったのならお詫びしましょう。


 だが、この国にいる我々は、平和に穏やかに日々を過ごしたい穏健な立場を取っている。そこへ火種となるあなたの存在についてはどうしても警戒する必要があったということはご理解いただけると助かるのですが。」


「私こそ、少し言い過ぎました。申し訳ない。


 私としての不安な気持ちをお伝え出来たので良かったと思います。今後はこの世界の方々に受け入れて頂けるようにいろいろと頑張りたいと思います。


 先ほども言いましたが、私としては、この世界でエーベルと楽しくクエストをこなしたり冒険したりしたいだけなので。」


「なるほど。その能力はこの世界のために活用してもらえると解釈して良いですか?


 ならば、ぜひとも各方面のギルドへ登録してもらい存分に活躍してもらいたい。それでよろしいですかな?」


 そう言ってギルド長は魔王のほうを見る。魔王も頷いていた。


「本当ですか? どちらにしても冒険者ギルドへの登録はするつもりでした。ギルド長にそう促してもらえるのは逆にありがたいことです。


 ギルドに貢献して少しずつ信用してもらえるようにするつもりです!」


「お呼びした件については以上になります。わざわざお越しいただき感謝します。とても有意義な会談であり我々も安心したところです。」


「………!?


 あっ、ちょっと待ってください! もしかして、もう終わりの雰囲気になってます?」


 ギルド長が会議を終了させようとしていたが、公彦は待ったをかけた。周りのメンバーは何事かといった状況である。


「いやいや、こういうときって、『では監視の役目を含めてフロッケを仲間として扱うがよい。』みたいな展開じゃないの?」


「わっ、儂か? いや、特にそういうのは考えておらんかったぞ? それに儂も旅に出ておったお陰で仕事が溜まっておるでのう。」


 急に公彦はフロッケに話題を降ったため、フロッケは飲み物を吹きかけていた。そして、ギルド長が口をはさむ。


「まあ、私としてもわざわざそう言って貰えるのなら好ましいと思う。しかし、フロッケは魔王様直属の秘書をしているので、私からは口を挟むべきことではないな。」


 そして一瞬間が空いた。


「まさか、かなりテンプレ展開だと思っていたけど、ここではそうでもないのね………。


 ちなみにフロッケさん。我々のパーティーに入れば上司公認でエーベルといっしょにいられるんだけどね?」


「なっ!? お主それを早く言わんか!


 魔王様。この監視の任務。ぜひとも私にお任せください!」


 フロッケはとても真剣な表情(ドヤ顔とも言う)で魔王様に嘆願した。



「わかった。フロッケがそういうのなら許可しよう。今の職は部下に引き継いでおけ。」


「承知しました。」


 魔王様は呆れた感じで許可した。フロッケはとても深くお辞儀をして応えた。



 そして今度こそ会議は終了した。




 会議終了後、フロッケに連れられて冒険者ギルドへの登録へ行くことになった。


 受付を待っている間、エーベルが急に公彦の腕を掴んでしゃべりかけてきた。心なしか、少し高揚しているように見えた。


「きみぃ! すごいね!」


「どうしたの急に?」


「あの魔王、私より強い。

 普通だったら委縮する。

 私もちょっと怖かった。

 でも、きみぃは平然と会話してた。」


 このエーベルの言葉にフロッケも混ざってきた。


「あ、魔王様はレベル300超えのまさに魔王様じゃからな。それは当然じゃろうて。そして儂もびっくりしておることがある。


 魔王様はベル様ほどでは無いにしても、あまり表情を表に出さないお方じゃ。たまに笑われることはあっても、怒りの表情はとても厳しく自己管理されておる。


 あのようにひきつった表情をされた魔王様は百年ぶりくらいに見たわ。」


「え? そうなの? そう言われると、今になってガクブルなんですけど?


 フロッケはこの国は各種族の中でも穏健派が集まって出来た国だと言ってたよね? ならば、暴力的なことは無いと踏んでいた。


 それにわざわざ呼び出してるんだし、その場で何かあっては自国の評判を落とすだけだからね。


 だったらただの交渉事になるだけだ。自分が不利にならないように有利になるように会話を推し進めていくだけだよ。


 前の世界でも偉い人とはいっぱい渡り合ってきたからね。これくらいはやらないと!」


「普通の戦闘だったら100%負けると思う。

 でも、きみぃはあのふたりに勝ってたと思う。

 とってもかっこいいと思ったよ!」


 そう言ってエーベルはさらに強く公彦の腕を抱きしめたのである。


「あああベル様ぁー、なんともうらやま、けしからん!


 まあ、しかしだ。確かに魔王様はそこまで口数が多いほうではないが、あのエルフに関しては流石に長をやっておるだけあって、とてもしたたかにたぬきのように交渉してくるんじゃがのう。


 それすらも関係なく、お主のほうが翻弄しておったではないか。頭は切れる奴じゃと思っておったが度胸もあるんじゃな。


 不本意ではあるが、儂も感心しておるのじゃぞ。」


「ええ? ちょっとふたりともどうしちゃったの? べた褒めじゃんか! そんなに褒めてもなんも出ないからね!


 ってか、オレもちょっと思ったけど、フロッケさん元々は魔王様の秘書をしていたの? それってかなり偉いんじゃないのか?」


「ちょっと! この期に及んでまだそれを言うか? だから散々言ってきたじゃろうが! バカもん!」



 そんな会話を繰り広げながら公彦たちは冒険者ギルドと商業ギルドに登録を行った。メンバーとしては公彦・フロッケ・その他1名の3人というパーティーである。


 エーベルに関しては、正式パーティーになるためには能力チェックが必須となるためでサポートメンバーでの登録となった。

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