第5-①話 総合ギルド長と魔王様との会談へ
いざ、公彦たちは総合ギルド長と魔王様との会談に向かうのであった。
公彦としては元48歳の大手銀行マンで課長をしていたし、グループ会社出向では役員も務めていたほどである。クライアントで政財界のそうそうたるメンバーと渡り合った自負もある。
いくらこの世界でも偉い方と言っても怯むわけにはいかない。しっかりと毅然とした態度で会談に臨むのであった。
総合ギルドに入っていき4階へ向かう。そこはホテルのようなつくりになっていて、そのうちのひとつに対してフロッケはノックをした。
「どうぞ。」
中から男性の声が聞こえてきてフロッケは扉を開けた。
中はとても豪華であった。おしゃれな照明器具に壺や絵画などの装飾品も飾られていた。
テーブルがあり、6人分の椅子がある小ミーティングコーナーと、二人かけのソファーと机の場所があり面談もできるところもあった。
もちろん、椅子もソファーもテーブルもどれもこれも高級感がある品物であった。つまるところ、VIP用の会談室と言えよう。そんな部屋に公彦は案内されたのであった。
そして耳長のエルフらしき初老の男性と、巻き角がある大男の魔族と思われる男性がいた。
『ほほう、すごい豪華な部屋。まさにVIP用会議室だね。それに自分を出迎えてくれるなんて、少なくとも敵対というよりは歓迎の雰囲気だね。
これで、しょぼい部屋に通された挙句、1時間くらい待たされたらどうしようかと思ったよ。
まっ、恐らく警戒はされているんだろうけど、要注意人物に対して下手な行動は取らないということはわかった。
これだけでもずいぶんとやりやすくなったと思う。さて、注意していかなきゃだな!』
公彦がそう思っていたところで、ミーティング用の椅子に座っていたふたりが立ち上がり、耳長の男性がこちらにやってきた。
「ようこそ。こちらの呼びつけに応じてくれてありがとうございます。とりあえず、立ち話もなんですから、どうぞ、こちらへお座りください。」
そう言って、ミーティング用の椅子に勧められ、公彦とエーベルは座ることにした。フロッケは給湯コーナーへ向かいお茶の準備を始めてくれた。
「それでは改めまして、私の名前はスカと申します。ここの総合ギルドの長をしております。
横にいるのが魔族の代表。通称『魔王様』で、総合ギルドでも副長を担当してもらってます。」
「ご丁寧にご紹介ありがとうございます。私はサイトウ キミヒコと申します。フロッケさんから聞いていると思いますが、実は異世界から来ました。」
「これはこれはご丁寧に。
フロッケから報告は聞いております。異世界人だなんてにわかには信じられないのですが、そういや、午前に能力チェックをしてもらっているんでしたね?
出来れば結果をお聞かせ願えないでしょうか?」
「ええ。構いませんとも。」
そして、公彦はふたりに能力を告げた。と言っても、冒険者ギルドから貰ってきた自身のカードを見せただけである。
「にわかには信じられないが、カードに刻まれている以上、そういうことなのであろう。」
スカはカードを眺めてそう言った。隣の魔王もカードをひとめ確認して、ひと際厳しい表情をするようになった。
『ふむふむ。いきなりレベルの話題ですか? それにこの反応。やっぱり表面上は歓迎してもらっているけど、内心はかなり警戒されているね。魔王様に関しては敵対に近いのかもしれない。
さて、こちらからもゆすりかけてみるかな?』
「それで、今回私を呼んだ理由に関して教えてもらってもよろしいですか?」
「それに関しては私が回答する。」
今まで険しい表情で沈黙を守っていた魔王様が突然口を開いた。公彦とエーベルは一瞬ドキッとしたが、魔王様の話を聞くことにした。
「特に難しいことではない。
森近辺にいきなり異形と感じられる魔力を感じたのだ。それ自体気になるであろう。どのような奴か確認する必要があるのではないか?
お主に関して、今のレベルでは大きな脅威とはならないかもしれぬが、そのような特異な能力を持っておれば、いずれ世界の均衡を脅かす存在になるやもしれん。
逆に問おう。
そのような特異な能力を保持して、今後、この世界で何を成すつもりだ?」
『たっ、確かにそりゃそうだ。自分はもちろん警戒されているとは思っていたけど、この世界の人だって特異な能力をもった者が現れたら恐ろしいと感じるよね。
そりゃあ、素性を確認したいと思うのは当然の行動だし、自分だって同じ立場なら同じことをしているよ。
ここは、敵対の意思は無いことを正直に誠実に伝えるようにしなきゃだな。』
「えっと、実際のところ何もするつもりはありません。前世ではとても忙しい毎日を送っておりましたので、この世界ではのんびりスローライフがしたいと思ってます。
ちなみに金や権力だ! 世界征服だ! みたいなことはまったくもって興味がありません。めんどくさいだけじゃないですか?
じゃあ、女をはべらしてハーレムか? みたいなことも特に無くて、まだ子供ですがとても可愛らしいドラゴンのエーベルがいてくれるだけで十分でとても幸せです。
まあ、神様からは特異なスキルを貰いましたが、実際のところ無双するような能力(ちから)でもありませんしね。」
公彦は誠心誠意伝えたつもりでいた。しかし、ギルド長も魔王も疑いの表情を崩していなかった。
『まあ、口では良いことを言ってもいきなり信用はできないよね。それはわかりますけど………。
それよりも、自分として舐められないために、もうひとつ話題をぶっ込んで置こうかな?』
「こちらもひとつ言っておきたいです。
能力チェックの件ですが、明らかにそちらの指示ですよね? 確認させてくださいと、私がチェックをしたことを明らかに知っていましたからね。
確かに特異な能力を持った私ですから、とても警戒されるのはわかります。
だからと言って、具体的な能力を先にこっそり知っておこうと言うのはあまり友好的だと感じられませんが、その辺はどうなんですか?
私としても、この世界に来たばかりでみなさんと同じように不安なことでいっぱいなのですよ? こういうことをされると、本当に友好的に接してくれているのか疑心暗鬼となります。」
公彦のこの言葉に対してギルド長は驚いた表情をした。魔王様に関しては驚きとさらに不快な表情をしていた。
『あれれ? ちょっと言い過ぎたかな? 魔王様のほうが明らかに不機嫌になってしまった。
しかし、いったんはこれくらいのトーンと内容で言っておかないとこちらの正確な意思は伝わらないし、対等な立場は築けないからな。』
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