第6話 フロッケにも魔法を教えて貰うぞ!
翌日、朝、昼とちゃっかり一緒にいて、これから夕飯の準備を始めるころである。その間、何かとエーベルにちょっかいを出そうと試みるが、完全スルーされている状態である。
しかし、スルーされてもへこたれるどころか喜んでいるようにも見えるのが怖いところである。
「ところで、結局一日ここにいるけど、調査は進めなくて良いの? こんなところで、エーベルに構っててほんと大丈夫なの? 部外者のオレでさえちょっと心配になるレベルなんだけど………。」
「何を言っておるか! この儂と飯を食えるなんて、本来はありえんことなんじゃぞ! これでも儂は偉い魔族だからな。感謝するが良い。
そんなことよりも、お主がベル様と一緒にいることが羨ましい………、ではなくて、けしからんことであるぞ?」
「フロッケよ。欲望ダダ漏れじゃん。まあ、いいや。
エーベルと言えば、フロッケさんよ? なんか予備の服とか持ってないの? 一応、可愛い服着てるじゃん!」
「フフフ。可愛いじゃろうて! お主、なかなかに見どころがあるではないか!」
「欲望ダダ漏れなうえに、さらにチョロイな。
まあ、それも置いといて、今の状態だと下着すらも吐いてないんだよ。何とかしてあげてくれないか?」
「なんじゃと!? お主、なんと破廉恥な! まさかこのような天使のベル様に欲情などしておるまいな!」
「別に私は良いって言ってる。
きみぃがしたいなら。
夜伽。」
どさくさ紛れにエーベルがブッコんで来た。
「なっ! そんな言い方したら誤解が!!!」
「なっ、なんて下衆野郎なんじゃ………。
ベル様そんなことはなりません! こんな下賤な奴にお美しいお肌をさらすことはありません!
さあさあ、こちらへ! お主は向こうを向いておれ!」
そしてフロッケはエーベルの着替えをさせた。
「ほれ、下賤の者よ。この女神のようにお美しいベル様を拝めることを感謝するのじゃ! というか、儂もこれは尊すぎて………、もう、ダメ、じゃ………。ぱたり。」
フロッケはその場で倒れこんでしまった。
「エーベル! とっても可愛いよ!」
「うん。ありがと。」
相変わらず興味なさそうにそっけなく返事するエーベルである。
公彦は素直に可愛いと思っている。フロッケと同じ恰好をしているだけなのだが、フロッケとはまた違う可愛さである。これを見るとエーベルはホントになんでも似合いそうな感じがするである。
「でも、これやだ!
動きにくい。」
「えええ! ベル様とても可愛らしいのじゃがのう!」
全拒否するエーベルだが、フロッケはなんとか褒め上げている。
「こんなのめんどくさい!
うっとうしいよ。
ダメなら破く!」
「あああ、ベル様! お待ちください! それ、結構高いのですじゃ………。
わ、わかりました。もうちょっとラフな感じにしてみましょう。」
次に現れたのは、ノースリーブのインナーシャツ。これは肌が見えないようにするためだろう。それに半袖のカッターシャツの二枚重ね。逆にカッターシャツは生地が薄い。
下は、これってショートパンツなのか疑問に残る公彦であった。
「これ! あまりじろじろ見るでないわ! 下衆野郎! あれはいわゆる見せパンというやつじゃ。今の手持ちじゃとこれしかないゆえ、それにベル様も結構気に入ってしまってのう。
ちゃんとしたものはやはり街に行かんと手に入らんわい。」
フロッケが補足説明してくれた。それにエーベルも満足そうである。
とてもラフな格好であるが、それはそれでエーベルのシャープさが際立ってとても可愛かったのであった。
先ほど思った通り、なんでも似合うエーベルであった。
「っていうか、ところでフロッケさんよ!」
公彦は先ほどのデジャヴのようであるが、今度はフロッケの肩に手を回した。
「ななっ! そのような汚い手で儂に触るでないわ!」
「いやいや、ちょっと聞いて欲しいだけじゃん! あのエーベルの服ってどこから出したのさ? カバンとか持ってなかったよね? もしかして魔法なの?」
「まあ、そうじゃが、お主には関係なかろう。」
フロッケは腕を払おうとするがなかなか払えずにいた。
「いやいや、そんなに邪険になさるなよ。ちょーーーっとだけでいいの。ちょっとだけ。魔族のスゴイお方なんでしょ? そこんところ教えて貰えないかなぁ?」
「言うても、人族には空間魔法なんてほぼ無理じゃぞ! 魔族でも使えるものは少ないんじゃからな。」
「そんなのやってみなくちゃわからんじゃん! あっ、そういやお肉やお魚は美味しかったよね?
どうせ、明日も食べるんでしょ?」
公彦はニヤニヤとフロッケに迫る。
「なっ、お主! それは卑怯じゃぞ! でも確かにお主には気になる点があるからのう。少しだけ付き合ってやるかのう。」
「おおお! さすがはフロッケさん! よろしくね!」
そしてフロッケは空間にモノをしまうための魔法をレクチャーした。公彦も真面目に聞いた。
「なっ、なんじゃとぉぉぉぉ!!! なぜできちゃうのだ?
いくら儂の教え方が天才的じゃからと言って、そんな息をするように簡単にできる代物でもないはずじゃぞ! 儂とでこの魔法の習得には半年くらい掛かったのだからのう!」
「てへ☆ できちゃいました!」
「てへ☆ で、できるものじゃないと言っておろうが! はっ!? もしやお主、水の魔法は使えるか?」
「あっ、それなら練習したよ!」
そう言って公彦は水を出す。
「おっ、おっ、お主!!!
パッと見ただけじゃから確実なことは言えぬが、それって錬成しておるではないか!」
「なに? 錬成ってすごいの?」
「ええい! 魔族は物質魔法が苦手なのじゃが、まあ、よーーーく、見ておれ! 普通の水の魔法はこうなる。」
良く見ると、確かに周りから水分が引き寄せられているように見えた。
「錬成魔法とは、無(ゼロ)からモノを生み出す魔法じゃ。
それこそ人間族やエルフ族たちによって理論的には確立しておるが、しかし、実際は誰も使うことができない代物じゃ!
もちろん、儂にも使えんし、使っている奴に会ったのもお前がはじめてじゃわい!!」
「ああ、なるほどね。それなら心当たりはあるよ。
ああ、でもどうしようかなぁ。フロッケさん。オレへのあたり強いしなあ。ちょっと傷ついているしなあ。」
「ああ、もうわかった! 今までのことは謝る。すまんかった。これからは普通に接するから教えてくれ!」
「じゃあ、魔法も教えてくれる?」
「うむ。時間が許す限り教えてやるから! さっさと教えてくれ!!」
「わかった。じゃあ教えてあげる!」
散々もったいぶったあと、公彦は改めて自己紹介と異世界から来たことなどフロッケに説明したのであった。
「たっ、たまげたな。確かに異世界人というのは話では聞いたことがあるが、本当に実際にいるなんて初めて知ったわい!
あっ、ちょっとお主の魔力について調べさせてもらっても良いかのう?」
「おう。どうぞどうぞ!」
そしてフロッケは公彦の胸に手を当ててブツブツと唱え始めた。
「ふむ。確かにお主の中にはいろんな魔力を感じるな。儂も知らんような波動も感じるぞ。これが神様のスキルというやつかな。ならば、儂もひとつお主に告げねばならん。」
「え? どうしたの? 改まって。」
「儂の調査の目的じゃ! 魔王様と総合ギルドのギルド長からの直々の極秘任務でな。この森に一瞬この世界のものと思えない魔力を感じたということじゃったんじゃ。それで儂が調査をしにきたというわけじゃ。その原因はお主じゃったということじゃな。
で、お主は今後どうするんじゃ?」
「いや、どうすると言われても………。
あっ! そうだ思い出したよ。すっかり忘れていたけど、オレはこの世界に来たらのんびりスローライフをしたいと思ってたんだ!
まあ、現状、エーベルとのんびりとはちょっと違うけど、でも、一緒に過ごせて満足はしているかな?
あと、できればこんなサバイバル生活というよりはもうちょっと文化的な生活を送りたいと思ってるところだけどね。」
「なるほどな。見たところ、内面から悪役というわけではなさそうじゃし、当面、何か問題が発生するとも思えん。儂の調査の旅も終了というわけじゃな。」
「おお! じゃあ帰るの?」
「うむ。そうなるな。」
「街なの? 結構大きい?」
「まあ、それなりな。」
公彦はエーベルのほうを一度向く。そして、すでにひとりご飯を食べ始めているエーベルにも聞こえるように言った。
「じゃあ、オレたちも付いていくよ! エーベルも良いよね?」
急に話を振られたエーベルだったが、一度こっちを向いてアイコンタクトを送ってきた。
「なんと? 正気か?」
「もちろん、さっきも言ったじゃん! もっと文化的な生活をしたいって。
それに、オレを連れ帰ったほうが、監視も効くし、フロッケだって大手柄になるでしょ?」
「ふむ。確かにそうじゃが。儂は一応魔族じゃぞ? しかも結構上級なんじゃぞ? そんな気安く一緒に居て良い存在でもないのだがなあ………。」
「エーベルも一緒なんだけどね?」
「喜んでお連れしますじゃ! 儂に任せるが良いわ!」
『やっぱりチョロイなこの魔族。アホの子万歳だよ。』
こうして公彦、エーベル、フロッケはフロッケのいる街なのか国なのかに向かうことにしたのである。
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カクヨムさん的には約1年ぶり、自分的には約半年ぶりくらいに復活しました!
今回はより見やすくわかりやすい、それでいて面白いをコンセプトに小説を書いてみました。
もし、面白いと思って下さったら「フォロー」「★」「ハート(応援)」をお願いします!
現在はプロローグ合わせて8話分を書き溜めて順次公開していきます。
評判が良かったら続きを書いていこうかと思います!
いったん完了となります。
みなさんの応援よろしくお願いします!!!
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