第5話 魔族の少女がやってきた!(アホの子)

「おはよう。きみぃ。」


「おはよう! って、あれ? もしかしてオレ一日中寝てた?」


 公彦の質問にエーベルはコクコクと頷く。



「ご、ごめーーーん。お腹空いてる? お魚取る?」


「うん。食べる!

 私も森に行ってくる。」


「あ! エーベル! 今日は酸っぱい果物を採ってきてくれる?

 この辺にあるかな?」


「ん? わかった。」


 エーベルは良く分からない様子だったが、とりあえず返事をして森に入っていった。



 公彦は昨日の要領で雷を発生させて川に投げ込み、風を発生させて魚をゲットする。

 続いて、今度は森の入口へ入っていき木材を採ってきた。その木材を他の牧や火の魔法を駆使して炭に変えたのだった。


 そう、今度は炭火焼をやろうとしたのである!


 さらに石の配置も少し変えてうまく火が通りやすいように工夫していた。



「じゃーん!」


 エーベルが戻ってきたときに公彦はドヤ顔で炭や炉を披露する。

 しかし、エーベルはなにがなんだかわからないので、頭にはてなマークを浮かべていた。


「エーベル! 果物は採ってきた?」


「うん。ある。

 私、あんまり酸っぱいの好きじゃない。

 お母さんはすごく好きみたいだった。」


 凄く想像しているのだろうか。エーベルの表情が若干酸っぱそうに見えた。


「まあまあ、もうちょっとお待ちくださいね!」



 そう言って公彦は果物を半分にしてまずは味見をする。とても良い酸っぱさを確認したところで、焼き上がった魚に果肉を絞ってふりかけた。


 ジュワワーーー!

 一気に煙が吹き上がった。



「はい。どうぞ!」


「………。」


 好きな魚に酸っぱい果物を掛けられ、あからさまにテンションが下がっているエーベルである。

 そんなエーベルを横目に、公彦はもうひとつ焼き上がった魚を今度は自分用に果物を掛けた。そしてほうばるのである。


「くぅぅぅ!

 やっぱり思った通り! 遠赤外線やべぇ! それに川魚だからより酸っぱい果物が良く合うわ! こりゃー、たまらん!

 ほら、エーベルも早く食べて! 冷めると美味しくないよ!」



 おいしそうに食べている公彦を見るエーベル。確かに興味が沸いてくるのであった。

 そして、


 カプッ!


 可愛らしく魚をかじった


「!?

 うううううううううーーーーーーーー!」


 その後はもう無我夢中にむさぼるエーベルであった。10尾ほど準備していたが、結局9尾エーベルに食べられてしまった。

 エーベルはその後、自分が採ってきた酸っぱい果物もかじってみる。


「うえぇ。酸っぱい!」


「あはは。そりゃあ酸っぱいだろうよ!」


 公彦はニヤニヤしながら答えた。


「ねぇ! なんでこんなに美味しいの?

 びっくりした!

 きみぃ! すごい!」


 あまり表情を出さない、興味を示さないエーベルなのだが、好きな魚についてだからかとても喰いついてきた!


「ふふん。それはねぇ、話せば長くなるけど………。」


 と、公彦がまさにドヤ顔しながら話を始めようとしたときである。



「ところで、きみぃ!」


「なっ、なに? せっかく良いところだったのに!」


 出鼻をくじかれてしまったようである。

 エーベルはいつもの表情に戻って説明してくれた。


「今朝からずっと、誰かに見られてる。

 どうする?」


「え? マジで? そういうことはもっと早く言ってよ!」


「まあ、弱そうだったから。

 ほっといた。」


 エーベルの言葉にふたりは警戒をした。



 ぐうううううぅぅーーーー!


「え? なに? これってお腹が鳴る音?」


「えええい! もう我慢ならんわ! 朝からいい音やいい匂いをさせよってからに!

 儂なんか、数日ほど、怪しげな草しかくっとらんわ!」


 森の木陰から女の子の声が聞こえてそして姿を現した。


 まず驚いたのは服装である。あからさまにこの森に似つかわしくないほどのロリータ系の服装をしていた。色は紺をベースにピンク、赤、白などで装飾されている。そんな動きにくそうな服装でよくここまで来たものである。


 身体の大きさは中学生くらいであろうか? エーベルよりは背が高い。そして若干ふっくらとした体形で胸も結構大きい。上半身は服にぴっちりとして身体のラインがよくわかる。


 肌は小麦色をしていて髪と目は美しい金色である。髪はショートでゆるふわだ。顔も大きな瞳でとても柔らかい雰囲気だ。そんなゆるふわな雰囲気だが、頭に二本の大きい巻き角がある。

 見た目は間違いなく魔族のようである。


 そして確かに黙っていれば、このロリータ系の服装は良く似合っていると思うのである。

 が、なぜなんだ。



 なぜババア言葉なんだ?


 ふたりは心の中で突っ込んでいた。



「えっと、なに? お腹空いてるの?」


「ええい! 見てのとおり、聞いての通りじゃ!! この馬鹿者めが!!!」


「そう? 食べる? オレの食べかけだけど?」


「なっ、た、食べかけとか失礼な奴め! そんなものに儂はたぶらかせんぞ!」


 そして、公彦は食べかけの魚を左右に振る。魔族の女の子も首が自然と魚を追いかける。その後、公彦は、


「お手、お代わり、待て!」


 公彦の言葉に自然と体が動いてしまう魔族の女の子であった。



「ようし、良い子だ。食べて良いぞ!」


「うぉぉ! 旨いではないか! こんな旨い魚くったことがないわい!」


 涙を流しながら一生懸命に魚を食べている魔族の女の子。ふたりは微笑ましく見ていた。

 そして、魚を食べ終わった後、


「いやー、本当に旨かったのだ。ご馳走様なのである。それに3日ぶりにまともな食事にありつけたわい。」


「そうかそうか、それは良かったな。果物もあるぞ? 食うか?」


「本当であるか? では………、

 って、ちがーーーう! そんなんで儂のことを買収できると思うなよ! こんな屈辱ははじめてじゃわい!」


 急に我に返り、威勢を張るが、しかしもう説得力のかけらもない。



「こうなったら、儂の偉大な力を見るが良い!」


 戦闘態勢に入ろうとした魔族の女の子であったがそれは叶わない。


 ガシッ!!!


「なっ? この子どこから来たのじゃ?

 っていうか、イタイイタイイタタタァーーー!」


 魔族の女の子はエーベルに頭を掴まれて、ひざまずいている状態になっている。


「それなら、まずはこの子から精神魔法で何とかするまでじゃ!」


「ん? なんかしたか?」


「え? 精神に干渉できんぞ? なんちゅうメンタルをしておるのじゃ!

 ってか、あたたたたぁぁぁあぁ! ごめんなさいごめんなさい! 儂が悪かったのじゃ。謝りますから許してくださいなのじゃ!」


 さらに強く握られ泣き叫ぶ魔族の女の子である。エーベルは一瞬公彦のほうを見るが、離してやりなさいのジェスチャーをしていた。



「ふう。とんだえらい目にあったわい。っていうか、儂の精神攻撃が効かんとは、これでも上級魔族の上級魔法じゃぞ? いったいどんなメンタルをしておるのじゃ。」


 魔族の女の子は立ち上がり、服の砂や埃を払いながらエーベルのほうを見るのであった。



「なっ、なんじゃ! この天使のような愛らしいお方は!? 愛らしくてとても強いなんて、まさに女神じゃ!」



 そう言いながら、魔族の女の子はエーベルの傍まで寄ってきて、せっかく払ったばかりのスカートであったが、またまたひざまついてエーベルに語り掛ける。


「あ、あのう、恐れながら、儂、いえ、私は『フロッケ』と申すもの。できればお嬢さまのお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「私、エーベルだけど。」


「なんと、エーベル様! なんという高貴なお名前でしょう! フルネームでお呼びするのは恐れ多いこともあり、『ベル様』と愛称でお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「好きにすれば?

 って、なんかこいつキモイ。」


 エーベルは容赦なく言い捨てて、公彦の後ろに隠れるようにした。


「はぁ。なんという可愛らしさじゃ! さげすんだ瞳もたまらないというものじゃ!」



『なんというドМ属性の女の子が来たものだ。こういうキャラも良くアニメで見たよ。』


「フロッケ! オレの名前はサイトウ キミヒコだ!

 で、なんでこんなところにそんなかっこでいるの?」


 公彦はそう思いながら、フロッケと名乗った女の子に質問をする。なにやら遠回りになってしまったが、ようやく話を本筋に戻すことができた。


「なあ!? 人間風情が気安く儂の名前を呼ぶでないわ! 無礼者め!」


「え? 何? まだ怒っているの? たぶん、空腹が良くないんだね。こっちにお肉もあるよ。だいぶ冷めちゃってるけど。」


「なに? 本当か? それでは遠慮なく頂くとするか。」


『なんだかんだチョロイ子だよなあ。っていうか、こういうのって確かアホの子っていうんじゃなかったけ? これはこれで可愛いけどね。』



 食事をしながら簡単に状況を話してくれたのである。どうやらこのあたりの調査に来たということらしいが………。




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 カクヨムさん的には約1年ぶり、自分的には約半年ぶりくらいに復活しました!


 今回はより見やすくわかりやすい、それでいて面白いをコンセプトに小説を書いてみました。

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 現在はプロローグ合わせて8話分を書き溜めて順次公開していきます。

 評判が良かったら続きを書いていこうかと思います!



 それでは引き続き、小説の世界をお楽しみください!


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