第2話 人間の国に行ってみる

「あれれ? いつの間にか寝てしまっていたか?」


 公彦はどうやら河原でそのまま眠ってしまっていたみたいだ。エーベルもミーナの傍で一夜を明かしたみたいである。


 公彦はエーベルのそばまで近づいた。なんとも声を掛けづらい雰囲気であったが、ここは一気に割って入っていった。


「エーベル。お母さんとの別れは済んだ? そろそろ………。」


 一瞬、エーベルは公彦を見る。そして黙ったままだったがコクンとうなずいてくれた。そのあと、エーベルは魔法で一気に大火力でミーナを焼き払ってしまったのだ。


 流石に急な出来事だったので公彦は目が点になってしまっていた。



「レッドドラゴン、死んだら数日後に跡形もなく焼く。

 そして記憶にとどめる。

 焼くのは実の子供か孫の役目。」


 エーベルは空を見ながら言った。公彦は納得してコクコクとうなずいた。



「ぐぅ~~~~~~。」

「ぎゅるぎゅる~~。」


 ふたりは同じタイミングでお腹が鳴ったのである。



「そういや、オレ、こっちに来てからなんも食べてなかった。いきなりドラゴンが現れたからね。そんな場合じゃなかったもんな。でも一区切りで安心したら一気にお腹が減ってきたよ。」


「ちょっと待ってろ。なんか採ってくる。

 きみぃ、なんも持ってないだろ?」


「えっ? あ。うん。なんも持ってません。」

『ってか、きみぃってオレのことか? まあ、ここはあまり突っ込まないでおこう。』


 エーベルは公彦の返事を聞いたすぐさま空を飛んで行った。


『行ってしまった。結構直情的なタイプなのかな?

 しかし、異世界に来て早々、いきなりドラゴンと遭遇するイベントなんて詰んだと思ったよ。神様を相当恨んだりもしたからな。でも、話の分かるドラゴンで本当に助かった。』


 公彦はそう思いながらこれまでのことを思い出したり現状について再度分析を行うことにした。

 そして感覚的に20分ほどでエーベルが帰ってきた。



「そういや、きみぃが何を食べるのかわからない。

 適当に採ってきた。」


 エーベルは野兎のような動物や木の実、果物などを取ってきてくれたようである。そしてエーベルは早速むしゃむしゃと生の状態で食べ始めた。


『なんという狩りの能力。この子、生活力高いじゃん! しかし、ミーナが言っていたようにこのままだとここに棲みついて野生動物と同様の生活をしようだな。

 それにドラゴンの姿だから気にならないってのもあるけど、エーベルは一応女の子なんだよな。たっ、確かに、誰かが文化的な生活に導いてあげないと………。』


 公彦は生肉をほうばるエーベルを見て自分の役割の重要さを噛みしめるのである。



「食べないの?

 早くしないと無くなるよ?」


「あっ、待って! 今、食べるから!」


 公彦は木の実や果物を食べることにした。流石に生の状態でお肉は食べられないからである。

 結構な量の食料があったのだが、お腹が空いていたのだろう。すべてきれいに頂いてしまった二人であった。



「さて、どうする? ミーナさんが言っていたように人間族の国に行ってみる?」


「うん。良いと思う。」


「じゃあ、また背中に乗せてくれる?」


「え? めんどくさい。

 うーん、でも、お母さんが言ってたからしょうがないか。」


 エーベルはあからさまにめんどくさそうであったが、公彦を背中に乗せてそして空を舞うのである。

 今度は正真正銘、公彦はドラゴンに乗って大空を飛ぶのである。乗り心地は確かに良くない。しかし、それよりも圧倒的な爽快感! これだけでもう大空にはまってしまったのであった。


 しばらくして、異世界ならではのヨーロッバ風の建物が見えてきた。高い城壁に、高い建物もある。この世界の建築レベルもかなり高いようである。

 城壁の周りにも村のようなものや農地が見えた。かなり大きな国のようである。


 公彦とエーベルはいきなり城壁の中に入るのは流石に警戒されるかもしれない。一度、城門のところへ行くことにした。



「おいっ! そこで何をしている!」


 とても厳しい口調で叫ばれた。

 近衛兵だろうか? ほかの兵士よりも立派な装飾をしていたので、高い階級であることは理解できた。

 そして、城壁の中から続々と武装した兵士が現れて公彦たちに立ちはだかるように整列していく。


『こ、これはあからさまに歓迎されていないようだな。』



「すぐに立ち去るのであれば行け! 我々としてもドラゴンとの戦闘は本意ではない!」


「いえ、我々に敵対心はありません。旅の者でいろんな情報や物資が欲しくてやってきました。入れて貰うことはできませんか?」


「ならん! この国は人間族のみしか入国を許可しておらん。人間族以外は特例で招待した者のみだ。

 それにドラゴンなんぞ、魔族と抗争中ではないか。そんな危険な者を入れたとあってはドラゴンと魔族の両方に隙を与えてしまいかねん。」


『確かに言っていることはごもっともだが、しかし、自分という人間がいながらもこれだけ拒否されるとは正直思わなかった。さらにかなり高圧的な言い方をされていて印象も相当悪い。

 しかし、このまま手ぶらで帰るのも腑に落ちない。もう少し粘ってみることにするか。』


「なら、彼女はここに居させます。私だけでも中に入れないでしょうか? 必要物資が無くて困っています。せめて、物資の調達だけでもしたいのですが?」


「だからならんと言っている。そもそもとして我が国の半径5キロ圏内はセキュリティ上の観点から飛行禁止区域になっておる。そんなことも知らん田舎者ではないか!

 どこの者かわからん怪しい奴もこの国に入ることはできん。さっさと帰ってくれ!」


『しかし、この反応を見ると、いきなり城壁の中に降りなくて良かった。もしかしたら問答無用で攻撃されるところだったかもしれない。確かに人間しかいない国でいきなりドラゴンが現れたら大パニックに陥るだろう。城門に来たのは良い判断だったと思う。


 しかし、この状況を打破するだけのネタはない。気軽に来てしまったことをかなり後悔している。もっと準備が必要だったようだ。悔しいがここは引くしかないだろう。』


 公彦はいろいろと考えていたところ、隊長格の近衛兵はさらにとどめを刺してきた。



「これ以上進むということであれば、我が国の威信に懸けて全面的に阻止することになる。ドラゴンが相手では甚大な被害が出ることになるだろうがそれもやむなしである!

 皆の者! 威嚇を!」



 ガシャ! ガシャ! ガシャ!


 隊長の号令に対して兵士たちは各々手持ちの武器を地面に叩きつけて公彦たちを威嚇するのであった。



 まさに招かれざる客のようである。ここまでされてはたまったものではない。ここは素直に引くことにした。

 公彦の完敗である。




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 カクヨムさん的には約1年ぶり、自分的には約半年ぶりくらいに復活しました!


 今回はより見やすくわかりやすい、それでいて面白いをコンセプトに小説を書いてみました。

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 現在はプロローグ合わせて8話分を書き溜めて順次公開していきます。

 評判が良かったら続きを書いていこうかと思います!



 それでは引き続き、小説の世界をお楽しみください!


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