第1章
第1-①話 転生完了。神様のうそつきぃ!
かなり高い木々が生い茂る森。そして近くには河原があり、幅が数十メートル程の川が流れていた。深さは感じられず、歩いても向こう側に行けそうである。川の向こう側ももちろん深い森は続いている。
そんな場所に男がひとり意識を取り戻すのである。
『ふう。なんとか意識を回復できた。異世界に到着といったところかな?
さて、まずは状況を整理しますかね。なんにせよ、情報は命の世の中で生きて来たし、甥たちと見たラノベもこういう時の情報整理はよくやっていたもんな。
あっ、情報と言えばそもそもとして自己紹介をしていなかったな。私の概要を紹介しておくことにしよう。
名前は斉藤公彦(さいとうきみひこ)だ。年齢は48歳で仕事は大手銀行マンだった。グループ企業の商社・物流・証券・リースなどにも出向していて、いろんな仕事に携わっていたのが自慢でもある。まあ、金融経済が得意分野だ。
身長は184cmほど。高校・大学はガタイを活かしてラクビーをしていた。体のあちこちには傷もあるくらいだ。性格面は銀行マンをしていたこともあり、そんな無茶な性格はしていないつもりだ。
まあ、おっさんである自覚はあるのだが、甥と姪がしょっちゅう遊びに来てくれていたこともあり、最近のことも多少はわかるつもりだ。この異世界についても二人のおかげで慌てずに対応できている。感謝しかないな!
まあ、オレのことはこれくらいにしておこう。
さて、状況整理に戻ると服は着ているみたいだな。如何にも冒険者のレベル1っていうような服装だ。でもちゃんと服を着てるだけましだ。
って、あれ?
もしかして、オレ、若返っていないか? 詳しくは鏡見ないとわからないが、手の甲がすべすべのつやつやになってるぞ?
腕を見ても、昔のケガが無くなっているし、こちらもあからさまに若い!
神様のやつ! 粋なことしてくれるじゃん!
そうだ! 神様に全魔法属性のスキルを貰ったけど、確かに凄いというのはわかるんだけど、魔法ってどうやって使ったら良いんだよ。これじゃあ、宝の持ち腐れというやつではないのか?』
「お母さん!」
どこからか女の子が叫ぶ声が聞こえてきた。
『ん? こんな森の奥に人がいるのかな? なんかのトラブルかな?』
そう思いながら公彦は周りを注意深く見渡した。そして声を出すのはなんとかこらえたのだが、この状況には絶句するしかなかった。
なんと、川の向こう側に大きな体の竜、ドラゴンを確認した。皮膚は赤い。レッドドラゴンというやつか?
『うそーーー! 神様の嘘つきぃ! いきなりハードイベントではないか!
甥と見たアニメではほぼすべて、いや、そうじゃなくてもドラゴンといえば最強の種族のひとつじゃん! こんなの絶対にここで死んじゃうの間違いないんじゃないか?
この状況をどうやって抜けたら良いんだよ! どう見てもこれは詰みじゃないか!』
公彦はとりあえず木の陰に隠れた。元の職業柄、あまり取り乱すことは無いが流石にみっともなく取り乱し、あれこれと神様にクレームの思いをぶつけていた。
神様へのクレームと、この場の脱出についてあれこれ10分くらいは考えていただろうか? ふとした疑問に気が付く。
『そういや、相手はドラゴン。なのに言葉が理解できたではないか? これはもしかしたらドラゴンと会話ができるかもしれない。一方的に虐殺されるというのはなさそうかな?
まあ、しかし、いきなり上級イベントということには変わりないが………。』
少し冷静さを取り戻した公彦である。さらによく見るとドラゴンの親子も大変な状況であることがわかった。
『身体が赤いこともあり気が付かなかったが、母親ドラゴンのほうは大きな傷があるな? 相当出血しているではないか………。
これはいたたまれない………。そして子供ドラゴンが心配しているという状況か?』
「誰かいるのか?」
公彦の意識がドラゴンのほうへ向いたからか、子供ドラゴンに存在を気付かれてしまったようである。そして、子供ドラゴンは公彦のところまで飛んでやってきた。
「人間族か?
こんな山奥で何をしている!?」
子供ドラゴンで母親ドラゴンよりは明らかに小さいが、それでもドラゴン。おそらく競走馬の2体分くらいの大きさはある。
子供ドラゴンは警戒こそしているが、敵意のようなものは感じない。しかし、公彦にとっては脅威以外の何物でもない。公彦は銀行マンだったころを思い出し、相手に警戒されないように子供ドラゴンに話しかける。
「えっと、私の名前はサイトウ キミヒコって言います。
信じて貰えないかもしれないですが、異世界から来て、というか、ちょうどいま来たばっかりで道もわからず途方にくれているところなんです。」
公彦はイチかバチか正直に状況を説明してみる。こういうトラブルの時は、誠心誠意、正直に状況を話すのが一番であることを学んでいる。
「へぇ。異世界ねぇ………。」
『うっ、うーん、いきなりどうこうということはなさそうだけど、あからさまに怪しいものを見る目つきになっているよ………。
次の展開が難しくなってきた。向こうがアクションを取ってくれると助かるんだけど。』
苦笑いになっている公彦を置いといて、子供ドラゴンは話しかける。
「とりあえず来て。お母さんが心配。」
子供ドラゴンはそう言って、自分のうえに乗るようにジェスチャーした。公彦としてはこの状況で拒否権は無いので子供ドラゴンの言うことに従った。
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カクヨムさん的には約1年ぶり、自分的には約半年ぶりくらいに復活しました!
今回はより見やすくわかりやすい、それでいて面白いをコンセプトに小説を書いてみました。
もし、面白いと思って下さったら「フォロー」「★」「ハート(応援)」をお願いします!
現在はプロローグ合わせて8話分を書き溜めて順次公開していきます。
評判が良かったら続きを書いていこうかと思います!
それでは引き続き、小説の世界をお楽しみください!
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