異世界に転生して、貰ったスキルはスゴイけど、すぐに使えないのでスローライフでもしようかな?
Tさん
プロローグ
痛ってててぇ………。
って、あれ? 痛くないぞ?
ってか、なんだオレ?
あっ、これオレはわかる。おっさんなんだけどわかる!
250万ほど掛けたオレのシアタールームはいつも甥っ子姪っ子に占領されていろんなアニメをいっしょに見ていたオレには!
その中にはもちろんラノベ系のアニメもたくさん含まれる。
(あっ、甥っ子姪っ子が遊びに来てくれるのは嬉しいんだけどね♪)
で、これは概念になっているな。オレ?
異世界にでも転生するのか?
ただの概念の球体になっている自分に対して、すぐに男の声が聞こえてきた。
「そうだ。察しが良くて助かりますね。私が神です。」
うっ、おっさんの声かよ。ここは可愛い女の子の声がセオリーだろう!
そう思いながらも、特に外見があるわけではないが声が聞こえてきた。
「神様………。オレ、死んだんですね。原因ってやっぱりあの地震ですか?」
「そう。あなたは死にました。地震が起きてそれで………。
っていうか、違うんですよ。そもそも震度4程度の地震で死ぬのは今の日本ではなかなかありませんよ。それなのに足をひねって転んで電信柱に頭をぶつけて。
日本では令和になったっていうじゃないですか。こんな死に方されたの久々に見ましたよ………。
ちなみに、おっさんの声で失礼したな!!!」
うげっ、聞こえてたか? さすがに相手は神様、こっちは概念だな。うかつなことは考えられないな。
「で、私はどうなるんですか? 神様?」
「いやはや、実のところあなたはあそこで死ぬ予定ではなかったんです。そういう方に関しては、一度、こうやってこちらに来てもらって提案をさせて貰うんです。」
「提案ですか? 甥たちに見せて貰ったアニメだとこういう時は異世界に飛ばされるのをみたんですが………?」
わたしの問いに関して一瞬沈黙になる。そして神様はやれやれといった感じで語り始めた。(と言っても神様の姿かたちがないので私の想像なのだが。)
「実はちょうど私が管轄している世界に欠員が発生しましてね。なのでそちらに転生をして頂こうかと思います。
まあ、もちろん嫌ならこのまま死んで頂いても構いません。」
「もちろん行きます! よろしくお願いします! いやー、神様って本当にいるもんだなあ。
ああ、甥っ子よ。おじさんこれからおまえが行きたがっていた異世界に行ってくるね!
あっ、ちなみに異世界ってどういうところなんですか?
地球、いや、日本ではかなり忙しい毎日だったから異世界ではのんびりスローライフしたいなあ。」
「え? どんな異世界かって言われても、まあ、俗にあなたが思っているような、みんなが思っているような普通の異世界ですよ?
まあ、スローライフができるかどうかはわかりませんけどね。」
「え? スローライフできないんですか? そんな切羽詰まった世界に飛ばされちゃうわけですか?
絶対にスローライフさせて貰いたいんだけど! いや、向こうに行ったら元いた世界の分までのんびり過ごしてやるんだから!」
概念の球体は、日本での鬼のように忙しかったブラックな日々を走馬灯のごとく思い出していた。
「いやまあ、確かに紛争中の案件もありますが、向こうの世界がどうこうよりも、だいたいこの場所で何かしたいとおっしゃっている方はたいていそうはならないというか、そういうことです。」
「あっ。しまったフラグか?」
「それでは話を進めて行きたいのですが、向こうの世界に行ってもすぐに死なないためにギフトスキルというものをひとつプレゼントすることになっています。まあ、俗にいうところのチートスキルの部類になりますね。
なにか具体的に希望するスキルとかありますか? できるだけご要望にはお応えできますよ。」
「え? そんなものまで頂けるんですか? とても太っ腹じゃないですか! 確かにそういう展開のアニメも見たことあるな。」
概念の球体はそう言って考え始めたのだが、その前に神様がさえぎってしまうのである。
「あっ、大変申し訳ないのですが、そろそろお時間が迫ってきています。急いでもらっても良いですか?」
「え? そんな急に言われて、さらにせかされてしまったらぜんぜん思いつきませんよ?
それに、そんな過密スケジュールでやってるんですか?」
「もう、あなたが余計な話をいろいろとぶっこんで来るからですよ。
それに、あなたみたいな方が1日100人程度いるんですよ。残業もたくさんできない時代になってますからね。私だってスケジュール切り詰めてこなしているんですから………。
って、そんなやりとりをしているとさらに時間が差し迫ってます。
それではこうしましょう。あなたにはすべての魔法属性を使用できるスキルを与えます。かなりのレアスキルですよ!
そして、異世界に着いたら頑張って魔法を覚えていってくださいね。」
「え? ちょっと待って!
いくら属性の問題がクリアできても魔法そのものの使い方がわからないんじゃ意味が薄いじゃないですか?
いきなり強敵にでも遭遇したらどうするんですか?」
「長い目で見ればとても役に立つスキルのはずです。それに最初からハイスキルなイベントは発生しませんから大丈夫ですよ!
それでは新しい世界で祝福があらんことを!」
「うわぁぁl 待って! もうちょっと情報をくださーい!」
そう叫びながらも概念は意識が遠くっていくのを感じるのであった。
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