第7話 この出会いは偶然か必然か計略か

「待てー、こーとりー!」

平安に来たと言うのに、小鳥を追っかけるハメになっている俺たち。

蹴鞠に本領発揮してはいけなかった…(第6話参照)

「こーとーりちゃーん!こっちおーいでー!だーいすーきだーよー!」

「和さん、『だいすきだよ』はいらないと思いますけど!」

「そうかな?僕は嬉しいけど。」

時々、和さんの感性がわからない時がある…。

それとも、俺の感性がズレてるのか?

そんなことを思っている間にも、小鳥はぐんぐんスピードをあげていく。

和さん、見てください、小鳥に引かれて避けられてますから。

「こーとーりーちゃーん、だー…」

「待てー小鳥ー!」

和さんにを言わせないために、わざと言葉をかぶせる。

と、その時!

小鳥はぐーんと下に下がり、お屋敷の中に入っていった。

ぎゃぁぁぁ

もし、あの小鳥が、国宝級の宝物を傷つけてしまったら…!

もし、あの小鳥が超高貴な貴族を傷つけてしまったら…!

お、俺らは、終わりだぁ…。

俺たちは、いろんな人に頼み込んで、お屋敷の敷地内に入る。

こっちから小鳥さんは入っていったから(気づいたら小鳥にさん付けしてた。)、多分こっから聞けば…。

「すみませーん…。」

その時、御簾の向こうに見えたのは、十二単の女性二人。

なんかさ、平安時代の女性の顔を見ちゃいけないとかなかったっけ…。

うぅ、ますます面倒なことになってしまった…。

子供だと、舐められるかな。

とりあえず、低めの声で話しかけてみよう。

「あの、すみません。」


「きゃー、小鳥迷い込んできた!」

えぇ!

「も、もしかして、運命の出会いがっ!」

美沙さん、そこまでは流石に…。

「あの、すみません。」

外から聞こえたのは、カッコいい低い声!

「きたぁー!」

まじか。

そう私が呆然としている間にも、いそいそと御簾の方に行く美沙さん。

「み…武蔵さま!顔を隠してくだされ。」

「はっ…!め…っ、これは失礼いたしました、武蔵式部どの。まだなれぬことも多いゆえ、お許しください。」

いちおう、平安貴族のふりはしとかないと。変に怪しまれても困るし。

美沙さんは扇でさっと顔を隠すと、御簾に寄っていった。

私も扇で顔を隠して美沙さんの跡を追う。

顔を扇で完全に隠してるから周りの様子はわからない。

ただ、美沙さんとさっきのイケボの男の人が話してることだけはわかった。

「なんの御用ですか?」

「申し訳ございません。私どもの小鳥がそちらに迷い込んでしまいまして…。」

そのとき、小鳥が御簾の隙間から飛んで行った…音がした。

「わ…、申し訳ございません、私はあの小鳥を追いますので…、さよなら!」

そう言うとイケボの男の人は行ってしまった…音がした。

「いやー、次も来るかな?」

「どうですかねー、どんな人ですか、イケメン?」

「やー、顔完全に隠してたからねー、わからん。」

「ふーむ。」

「ていうか、あれは私の運命の人ではない。」

「え、なんでですか?」

「あなたの運命の人だから♡」

「えー!いやいや、ちょっと待ってください美沙さん!」

「私の勘だけど、あのタイプは明ちゃんに合うと思う!(キッパリ)」

「だって私にはっ…!」

「あ、柊真君がいるか。」

「そ、それはっ…!」

「私は柊真君と結ばれてほしいけど、」

美沙さん!

「でも、あーゆー高貴な貴族と仲良くなっといた方が、柊真君探しには役立つでしょ?」

まあ、確かに。

「だから、柊真君と結ばれるためにも、あの人と仲良くなっとこー!」

納得…できるかぁー!


「はあはあ」

俺はなんとか小鳥を捕まえて、屋敷へ帰還。

和さんは、いつのまにか屋敷に戻っていて、呑気に聞いてきた。

「どうだった?小鳥さんが入っていったお屋敷。麗しい乙女、いた?」

「麗しい乙女かは知りませんけど、女の人は二人いましたよ。」

「どうだった?」

「うーん、平安美人でしたよ。」

「どっちかタイプ?」

「奥にいた方です。」

「おぉ、即決。」

「なんかしっくりきたんですよね武蔵式部…だったっけ。」

「いっそ恋仲になったら?」

「俺にはっ…!」

「あ、明ちゃんがいたか。」

「そ、それはっ…!」

「僕は明ちゃんと結ばれてほしいけど、」

和さん!

「でも、あーゆー高貴な貴族と仲良くなっといた方が、明ちゃん探しには役立つでしょ?」

まあ、確かに。

「だから、明ちゃんと結ばれるためにも、あの人と仲良くなっとこー!」

納得…できるかぁー!

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