第6話 蹴鞠の悲劇

女子ペアのところに迷い込んだ小鳥のことも気になるだろうけど、とりあえず俺たちの話を。


平安時代は、とにかく平和で。

ちょいちょい貴族の権力争いは起きてるらしいけど、俺たちには無関係だし。

和歌作って読んでいいですね、って言っているくらい。

和歌は、和さんは必死に作ってるけど、どうやっても食べ物の和歌になるんだよね…

前にあったのは、

「正月に 暴飲暴食 した体 休めるために 七草がゆを」

っていうやつ。なんか、健康サプリメントの宣伝みたいになってるし。

ちなみに俺は、諦めて、百人一首から引っ張り出して詠んでる。あ、俺もそこまで馬鹿じゃないから、ちゃんと鎌倉の人の和歌を詠んで、パクッてることがバレないようにしてる(姑息)。

そんなある日、ついにこの日がやってきた。


「柊真くん〜!蹴鞠やるんだって、来る?」

「行きます行きます!」

よし、ついに蹴鞠だ。楓学園中等部サッカー部の真骨頂を見せてやる!

「なんか蹴鞠って、何回蹴られるかとか、鞠を落としたら負けとかあるみたいだけど、ちょっとルール複雑だから、これ見といて。」

そう言って和さんがふところからスマホを出す……ってスマホ⁉︎

「ななななんでスマホ持ってるんですか⁉︎」

「なんかたまたま。」

「いやいや、なんかたまたまとかそういう問題じゃなくないですか?だって、俺たち服変わってるんですからその時にポケットに入れていたスマホはないはずでっ!」

「言ったでしょ、僕はタイムスリップのプロなんだ。」

???

「タイムスリップ直前に、手にスマホ握ったんだ。だからここにある。だってスマホないとわかんないじゃん、色々。」

「でも、ここではネット繋がらないじゃないですか。」

「そうなんだよね〜。それに気づいたのは壬申の乱の時でさ。あの時はどっちの側につけばいいのか分からなくってさ、勝つ方につきたいじゃん?んで、結局、大友皇子の方についちゃって、」

大友皇子は負ける方ですよ…。

「危うく、ってところだった。」

歴史の勉強って、タイムトラベラーにとっては大事。(タイムトラベラーなんて俺たちの他にいるのか…?)

「だからその反省を活かして、歴史に関係するスマホの記事を全部スクショしてきた。」

ああ、和さんの並々ならぬ努力…。

「だから、これ見といて。」

「…これって、美沙さんの写真…ですよね…?」

「ふぇ、わああああ、違う違うこれじゃ、これじやない!」

なんか歌っぽくなってますけど。

「こっちこっち…、さっきのは見なかったことにして!美沙には絶対言わないでぇ〜!」

「大丈夫ですよ、俺は口硬いですし。」

察しましたから。


そんなこんなでなんとかルールを覚えた俺は、ついに蹴鞠に挑む。

簡単に言うと、鞠を落とさなきゃいいらしい。

「そーれ!」

和さんが蹴った鞠は、まっすぐ俺の方に飛んでくる。

そのとき。

鞠が、サッカーボールに見えた。

目の前には、サッカーゴール。

俺は、気付いたらサッカーボールを蹴るフォームに。

やべっ。

気付いた時には時すでに遅し。

俺は、蹴鞠を思いっきり横に蹴っていた。

蹴鞠は縦に蹴らなきゃいけないのに!

「うわぁぁぁ」

口から力なく声が漏れ出る中、鞠は真っ直ぐに進み、鳥籠に命中!

小鳥が鳥籠から飛び立った!

「何をしておる!捕まえてこい!」

誰かから言われ、俺は小鳥を追っかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る