第4話 女房生活スタート!…直前

―明サイド―


ガダッ

私たちを乗せて動いていた小部屋が止まる。簾が空いて、私たちはそこから出ようとして。

「「重っ!」」

いまさら、十二単の重さに気づく。

私たちは、なんとか小部屋から出た。

ぜぇぜえ。

「これ、牛車だったのかぁ。」

美沙さんが言う。

ホントだ、牛がいる。

ていうか、全然疲れてないね、美沙さん。

運動部だからかなぁ。

「そなたが定子様の新しき女房かの?」

「「は、はい!」」

急に後ろから声をかけられて、思わず返事をする。

「元気が良いのはいいことじゃが、定子様の前では慎むように。」

「「は、はい……」」

「私の名は播磨と申す。女房のことで困ったことがあったときは、私に聞きなさい。」

はぁ。


その後、屋敷の案内がされた。

家の中に、池があったんだよ。池だよ、池。(しつこい)

「そなたたちの名を決めていなかったな。」

屋敷めぐりツアーが終わった後、播磨さんが言う。

名前、決めるんだね。

「そなたたちは、たしか父上が武蔵守で、兄者が式部大丞なのだよな。」

あ、そうなのね。そういう設定なのね。

「ではそちらの鼻筋が整った方は女房名を武蔵とし、」

うん、美沙さんのほうは武蔵なのね。

私は鼻筋整ってないって言いたいわけね。

「そちらの背の小さい方は、」

うーん、反論しにくいな……。

「武蔵式部とする。」

字体がいかつい。

「ちなみに、私の本名はお月じゃ。一応言っておくぞ。」

きゃあ、お月だって、かわいい!←好みドストライク

「ただし、宮中では播磨と呼ぶように。」

はい。


次の日の朝、他の人は誰も起きてなくって、私たちは二人きりになった。

こういう時は、作戦タイム……じゃなくて女子トーク。

「美沙さんって、どうしてそんなに平安時代が好きなんで……」

「よっくぞ聞いてくれましたぁ!」

美沙さん、一旦落ち着きましょう。

「あれは小学五年生の頃。」

相当前から始まりますね。

「漫画版の源氏物語から、私と平安時代の物語が始まりました。」

へえ、源氏物語かぁ。読んでみようかな。

「その時、平安時代の雅な生活にあこがれた私は、平安時代について調べまくりました。」

行動力がすごい、流石美沙さん!

「こうして私は立派な平安時代好きへと成長したのです。」

おぉ、すごい!

「いやいや明ちゃん、そんな話してる場合じゃないって。」

あ、そうですね。

「前みたいに、柊真と和さんが捕まるとかあるんですかね。謀反とか。」

「やあ、さすがにそんなワンパターンじゃないでしょ。信じてる。」

信じられてる。(誰が?)

「今回は何があるのか、皆目見当もつかないね。」

そう、だから怖い。

「ちゃっちゃと会えるといいですねー。」

「そうだねー。」

その時、部屋に誰かが入ってきた。

播磨さんだ。

「そなたたちに、女房としての教養を教えるぞ。」

おぉー!

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