第2話 妄想と好みの大渋滞
てなわけで、話を平安に戻すと。
気づくと、私–明–は小部屋の中にいた。
少しだけ日が入ってきて、部屋ごと動いている。
……ここどこ?
そう思いながら、後ろを振り返って、はっと息を呑む。
驚きもあったけど、それよりも見惚れたというか。
そこには、十二単姿の美沙さんがいた。
美沙さん美人だし、髪の毛ストレートだから、めっちゃ似合ってる。
うわー、好きになっちゃう。
「きゃー、明ちゃん、めっちゃ可愛い!」
いやいや、美沙さんの方が100倍綺麗ですから…、てか私、十二単着てるじゃん!
わー、着てみたかったんだよね、十二単。
……あれ?なんか違和感。
「ねえ、明ちゃん、今回から、タイムスリップのときに服も変わるようになったんだね。」
あ、それだ、違和感の正体。
「おじいちゃん、改良したのかな。」
そうなのかな。
その時、腕輪が震えだした。
分厚い生地をなんとかまくって、腕輪を出す。
……あれ?腕輪も変わってる。
変なボタンついてるし、カメラレンズみたいなのもついてるし、そもそも腕輪って振るえなかったよね。
「このボタン、押せばいいのかなぁ。」
そうかも。
ボタンを押してみる。
その時!
「元気か〜?わしじゃ、野田葉佳瀬じゃ。」
え!腕輪から博士の声が⁉︎そんな機能あったっけ⁉︎
「腕輪で通信ができる機能は今回新たに追加されたんじゃっ!」
「博士、心も読めるようになったの⁉︎」
「明ちゃん、心の声、口から出てたよ…。」
ぽっ。(赤面)
「さて、わしから、ルールの変更についてのお知らせじゃ!」
えー、あ、う…、反応の仕方が分からん。
「まず一つ!腕輪投げるの禁止!わしは、あの状況からもみくちゃにされながらもペアのところに行きつき、抱きしめあっていい感じになるのを期待していたのに…。」
ごめんね、博士、ご期待に添えず…、って、おい!なんの妄想をしてるのよ!
「あ、明ちゃん真っ赤ぁ〜!もしかして、そういう展開を…フフフ。」
美沙さんっ!
「ま、とにかく、今回は腕輪を身につけた状態で腕輪を触れさせた人だけが現代に戻れるようにする。」
うん、わかった。理由は納得いかないけど。
「二つ目!無い!」
無いんかい!
「じいちゃんらしい…。」
「君たちには、女房になって、定子様に仕えてもらうぞ。」
そう博士が言った時、美沙さんが床をドンドンと叩き出す。
「にょ、女房、定子様ぁ〜⁉︎」
美沙さん、揺れるから、やめてください。
…ていしさまって誰だろ。
「ていしさまって、誰ですか?」
「定子様は◯※△☆…、私の推し!」
へぇ、推しなんだぁ…、美沙さんの好みしか分からなかったなぁ。
「女房って?」
「貴族の身の回りでお世話をする人でっ…!」
美沙さん、フリーズ。
うわー、めっちゃ幸せそう。
ちょっと、楽しみかも。
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