第25話 俺は分身体たちの成長を祈る

俺の分身体たちは、ほとんどが意識だけの世界生まれなので、嫌なことは嫌だと言う。



遠慮なしだ。



いいなあ…お前らは気楽で……と時々思う。



たまには、俺の元いた世界の中世あたりにでも行って魔女裁判とかでも受けてみればいいのに……などと思ったりもする。



それか、その後に発生した世界大戦とかで、強制収容所送りにでもなってみるというのもいいかもしれない……いや、それは残酷すぎるか……



俺は首をぶるぶると犬のように振って邪念を払う。



今、俺は、大型犬の姿をしているのだ。



お忍びの姿なので、他の分身たちは気づいていない。



オリジナルならではの裏技だ。



分身たちは、俺をなでたり、からかったりしているが、たまに誰も見ていないと思って蹴りを入れてくるようなのが混じっているので、そういうのを後で教育するのだ。



動物たちにも痛みや苦しみを感じる能力があるのだからして、蹴りを入れるとは何事か!!!と叱ってやらねばならない。



たまに、犬ではない姿の人間型の俺にも蹴りを入れてくる奴もいる。



まあ、そういう奴とは、タイマン勝負をして、意気投合するようなこともある。


弱い者いじめはダメだが、自分より明らかに強い相手に喧嘩をけしかけるような奴は、そう悪い奴ではなかったりする。

どちらかというと、純粋な奴で、弱いものたちには優しかったりするので、そういうのを俺は抜擢して教育担当などに推薦したりする。



相手が自分より強くても、従わないで自分の意志を貫ける魂でなければ、世界の管理はまかせれないからだ。

でないと、ちょっと相手が強ければ、相手が明らかに悪党でも、すぐに尻尾を巻いて従ってしまうからだ。

そういう性質の奴には、世界管理はだから任せれないのだ。



俺の自由世界に、外敵が押しかけてきたら、外敵に従いかねないからだ。



そこで刺し違えてでも、自由世界を守ろうとする奴でないと、俺の自由世界の管理はまかせれない。



刺し違える覚悟で対抗すれば、相手が悪ければ、最悪、俺の自由世界も消滅するかもしれない。

裏技には、世界全体のメイン電源を抜いてしまう……的な技もあるのだから、その可能性がある。



だが、いいではないか……世界は消滅してもまた創造すればいい。



それぞれの意識の中に、素晴らしい自由世界の設計図やイメージが格納されていれば、世界消滅などなんともない。へっちゃらだ。



それくらいの覚悟や気概がなければ、世界に良き調和などもたらせない。



あらゆる意識が満足できる世界を実現し、さらにそれを永久に維持してゆくには、そのくらいの覚悟がある意識がどうしても不可欠になるなのだ。



俺は、「ワン!」と吠え、分身たちの成長を祈った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る