第17話 苦しみ体験の中毒無限ループ
やっかいなことに、黒ヒョウちゃんが、エイリアンに変身する行為に中毒してしまった。
ほっとくと、すぐエイリアンの姿になってしまって、元に戻らないのだ。
これは一大事だ。
俺は、エイリアン姿の黒ヒョウちゃんなど、見たくないからだ。
しかもメイド服を着たエイリアンなど、見たくない。
しかもすぐに「キシャーーー!!!」などと叫ぶのだ。
こんなのとは一緒に生活してゆけないよ……
どうやら黒ヒョウちゃんの意識の中では、それが楽しいらしい。
俺が嫌がっているのが楽しいらしいのだ。
とんでもないことに中毒してしまった……
これは、放置するわけにはいかない……と思った。
これではあんまりだ。
いろいろ原因を調べてみて、そもそも、「自分のことは何でも自由にできる」とした設定に問題があるということに気づいた。
これは、良い基本設定だと思っていたのだが、甘かった。
なぜ甘かったのかといえば、
自傷的な選択に中毒してしまうと、そのままその自傷的な選択を無限に繰り返してしまうという可能性があったからだ。
麻薬中毒者みたいなものだ。
それをやめないと自分が死んでしまうことがわかっていても、苦しみ続けることがわかっていても、どうにも止めれない……という状況が稀にだが、「自分のことなら何でも自由」にしてしまうと、発生してしまうようだ。
しかも、自分ひとりだけで孤立していると、一度その沼にはまれば、もう二度と抜け出れなくなる危険性もあるのだ。
つまりは、地獄体験の無限ループだ。
幸せな体験の無限ループならば、一概にダメだともいえないが、それでも同じ体験を繰り返すと魂は飽きるという性質があるので、長い目でみればそれも危険だと思われた。
ましてや、地獄の苦しみや拷問レベルの体験を無限ループすることになれば、最悪だ。
俺は、早めにこのリスクに気づいてよかったなと思った。
そうした最悪の状態に落ちてからでは、手遅れになるところだったなと思う。
さて、そういうわけで、俺は、安全確保のための「自動的に元に戻る機能」という機能を俺の自由世界にプログラムした。
それは、一定の体験時間が経過すれば、自動的に安全な時点に戻るという機能だ。
そして安全な時点に戻ってみて、冷静に考えて、戻る前の自分の状態を継続したいと思えば、またすぐに今までの体験状態を継続することもできる……というような機能にした。
ただ、そうしておいても、なお、予期せぬ危険があるかもしれないという恐怖があったので、さらに俺は、自分の分身体や黒ヒョウちゃんや魔王や魔王の娘さんや後から参加した仲間たちに、万が一、他の魂が危険な中毒状態や無限ループ状態になれば、その状態からとりあえず救い出してほしいと依頼した。
そうすることで、中毒無限ループの沼にはまっても、互いに助け上げることができる。
こうした多重の安全措置を俺は俺の自由世界に設定した。
なかなか、あらゆる魂にとって最高の世界を創造するのは、簡単ではないなと感じ始めた。
なかなか奥が深い……
すぐに気づけないような見えないリスクなどが、結構ある。
まあ、そんなこんなで、俺は、黒ヒョウちゃんをやっとエイリアン変身病から救い出すことに成功した……
と思ったが、まだ甘かったー!!!
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