第18話 黒ヒョウちゃんの自由意志と奥義「意識合体」

黒ヒョウちゃんは、救い出されることを拒否してしまったのだ。



おいおいおい……拒否するなよ。



黒ヒョウ曰く……



「あたしは、やりたいようにやります」



だそうだ。



困ったものだ……



仕方ないので、プライベートミニ世界でやりたいようにさせてあげる。



俺の分身体を一体、プレゼントしておいた。



好きに使ってくれ。



どう扱っても本体の俺には痛くもかゆくもない。



だが、性格や反応は、俺をコピーしているので、楽しんでもらえることだろう。



分身体は、苦しむということがない。



その中に「体験者」がいないからだ。



まあ、ロボットみたいなものだ。



だが、独立型で俺と同じように行動する。



だが、俺の意識をそこに入れることもできた。



つまり望めば自由に俺の意識が出入りできる器のような感じだ。



黒ヒョウちゃんは、そそくさと俺に絡んでいろいろイタズラをしているようだ。



どうやら本物だと思っているらしい。



しめしめ……



まあ、俺が中に入れば、本物に同然になるので、本物にほとんど近いのだが、俺が中にいなければ分身体に何をされても問題ない。



分身体は、消したり、また出現させたりも自由にできる。



意識だけの世界は、実に便利だ。



ちなみに、黒ヒョウちゃんには、プライベートミニ世界に入ってもらう前に、念入りに催眠術をかけておいた。



プライベートミニ世界であるということがわからなくなるという催眠術だ。



この催眠術を開発したのは、そうすることで、プライベート世界での楽しみレベルが高まるからだ。



つまりはわざと自分を騙して、それが自作自演ではないと思えるようにするわけだ。



自作自演であるとわかってしまえば、楽しめないよ……などと文句を言われたりもしたので、こうした術も開発してみたのだ。



使い方を間違うとヤバい術かもしれないなと思ったが、まあいいやと開発してしまった。



「自動で元に戻る機能」も設置しているし、致命的な問題は発生しないだろうと思っていた。



黒ヒョウちゃんは、いつの間にか、エイリアンの姿で分身体の俺を挑発していた。



おいおい、何をしてくれてるんだよ……



挑発されている分身体の俺は、「やめろーー!!!」などと叫んでいる。



エイリアンの目が嬉しそうに光る。



とうとう、エイリアンは俺を咥えてしまった。



おい、咥えるなよ……



まるで猫にもてあそばれているネズミみたいだ……



だんだんと俺は、見ていられなくなってきた。



なぜなら、あれは、一応コピーではあっても、俺なのだから……



あのような扱いをされては、今後、俺も同じ危険にさらされるだろう……

あんなことをする癖がついてしまうと後がやっかいだ。恐ろしい……



俺は、思い切って俺のコピーの中に入った。



「うわーーーー!!!」俺は、いきなり逆さまの状態になってしまった。



エイリアンは俺の足を咥えているらしい。



ぶらんぶらんだ。



「やめろーーーー!!! はなせーーーー!!!」



俺は、必死で叫ぶ。



すると、エイリアンは、急に動きを止めて俺を見る。



「あら? マスター、なぜここに?」



などと急にメイド美少女に変身して言う。



どうやら、俺が俺のコピーに入り込んだことを察知したようだ。



「いきなり、入ってこないでくださいよー!危ないじゃないですか!」などと言う。



どうやら、彼女には、俺のコピーと俺の本体を見分けることができるらしい。



俺はなんだか騙されたような気持ちになった。



騙していたつもりだったのに、騙されていたらしい……



俺は_| ̄|○とうなだれてしまった。



「何、がっくりしているんですか? このミニ世界は楽しむために創造したのではなかったんですか? 馬鹿ですか?」



などと言う……



悔しい……



「ほらほら、せっかくのプライベート世界なんですから、がんばって楽しみましょう」



そう言うと、俺の耳に嚙みつき始めた。



「こら!噛むな!」



「いいじゃないですか! 別に噛んで減るものでもないんですからー」



「そぅいう問題じゃない!」



「じゃあ、どういう問題なんですか? 説明してくださいよ」



「あのね、なんで君は、いつもいつも……そんなにめちゃくちゃなんだ?」



「なんでなんて知りませんよ。これがあたしの本能だからですよ」



「どういう本能なんだよ、いいかげんにしてくれよ!」



「いいかげんにしてるじゃないですか!」



「ああああーーーー!!!もう、いい! 俺は帰る!」



俺は、俺のコピーから脱出して元の場所に戻ってきた。



だが、そこに待っていたのは、黒ヒョウちゃんに乗っ取られた俺の本体だった。



「はあ? なんじゃ?こりゃ?」



一応、元に戻ってはいるのだが、俺の本来の主導権を黒ヒョウちゃんが握っている。



黒ヒョウちゃんは、勝ち誇ったように言う。



「どうですか? こういうのも楽しんでみては?」



いや、これは反則だろー!



「違いますよ。これこそが、意識合体の奥義じゃないですか」



いや、奥義って……



「ほら、こうすると寂しくないでしょう?」



いや、別に、こうしなくても寂しくないよ。



「何、強がってるんですかー! 嬉しいくせにっ!」



いや、今はそういう気分じゃないんだけどね。



「自分の本心は、灯台下暗しって言ってですね、案外よく見えないだけです」



黒ヒョウちゃんは、とうとう俺の反論を押し切って、押しかけ意識となって俺の中に居座りはじめた。


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