第13話 自業自得のブーメラン
そういうわけで、
俺の仲間は、みんな意識だけの状態になれる。
意識だけの状態になれない者たちも仲間にしてあげたいのだが、意識だけの状態になれていなければ、いいようにその世界の時の支配者たちに脅されたり、だまされたり、誘惑されたりして利己的な魂の支配者たちの仲間にされてしまうのだ。
彼らは、「命を奪うぞ!」などと脅されると、すぐに心が折れてしまう。
自分や自分の愛する者たちが生き残るためには、他の魂たちに酷いことをして犠牲にしてもかまわないとすら思ってしまったりする。
つまり、物質世界の肉体とか、社会とかに執着している限り、一時的に仲間になれても、たいていすぐに支配者側に取り込まれてしまうのだ。
支配者たちは、虎視眈々と魂たちを自分たちの従属にしようと狙い続けているので、ほとんどの場合そうなってしまう。
だから、俺の仲間は、みんな意識だけの状態=意識体 に自分の意志でいつでも自由になれるような者たちである必要があった。
でないと、
「おい、お前たちだけ優遇して、良い待遇や地位や金を与えて、生き残らせてやるから、他の魂たちをいじめて我ら世界統治者の言うことに何でも従え……」
などと言われると残酷支配者の言うことを何でも受け入れてしまうのだ。
悪党たちが支配している世界では、ほとんどの魂は、そうした選択をしてしまう。すでに昔からそうした洗脳や調教がなされているからそうなってしまう。
その結果、ほんの一握りの魂たちだけが、そうした脅しや誘惑を無視して自分だけの意識世界を育成することを目指す。
そのために殺される者たちもいるが、そうした目標を追求して殺されるなら本望だと彼らは思っている。
どうせ肉体としては必ず死ぬのだから、自分の望むことを目指して殺されるのなら、それはもうしょうがないと覚悟している。
しょうがないというより、死後に、酷いことをした者たちに仕返しをしてやろうと決意していたりする。
彼らは、意識だけの状態を理解したために、そうしたことも可能だと知っているからだ。
意識だけの存在は、物理の力では、殺すことができない。
また、思い も物理の力で破壊することができない。
物理の力で破壊できるのは、あくまで物質だけなのだ。
思い は、肉体と一緒には、消えず、残り、また、誰かの中に再誕する。本心の思いは、無意識の海の底でつながっているので、そうなる。
場合によっては、敵やその家族や身内の中にその「思い」は再誕する。
あるいは、その世界に全く所属していない異世界の一族や神のような存在の中に再誕する。
そしてブーメランは、戻ってくる。
自業自得というブーメランは、いつかは、その行為者たちに戻るのだ。
何度うまく避けても、持ち主に戻るまでブーメランは追尾し続け、最後には、行為者自身のもとに戻る。
世界を残酷に支配したがる悪党たちは、だから、自業自得の法則などというものはないのだ! 死後の世界にそんな法則などはないのだ!!! などと一生懸命にその世界の魂たちに教育するのだが、そのような洗脳行為の裏を読めば、彼らは自業自得というものを恐れているということなのだ。
自業自得などない と思い込もうとしているだけであり、それは自業自得というものがあると悪党たち自身が感じているから、そうしたことをしなければならなくなる。
彼らは、酷いことをされたら、酷いことをやり返ししたくなる……という自分の心の反応に気づいているのだ。
恨んではだめだとか、憎むことは良くないことだとか、人を呪えば穴二つだとか……そういうのは悪党支配者たちの洗脳であって、自分たちが仕返しされたり、恨まれたり、憎まれたり、呪われたり……したくないので必死でそうした広報をしまくっているだけなのだ。
だが、意識だけの状態になれば、その嘘がすべてわかってしまう。
なぜなら、意識だけの状態になれば、支配者の意志していることが全部以心伝心してきてわかってしまうからだ。
それはまるで悪党たちの悪行の一部始終が実況中継されているような状態になるからだ。
そうなってしまうとありとあらゆる魂たちから呪われるのがわかっているので、悪党支配者たちのボスは、直接自分の姿や名前を教えずに隠れて、代理支配者を何層にも間に入れて悪党支配をする。
そしてさも自分が酷いことをする者たちから、魂たちを救い解放するヒーローのような顔で登場したりするわけだ。
それこそが、酷いことを魂たちにする主目的だったりする。
無理やり、他の魂たちに自分だけを愛させようとか、感謝させようとか、そういうことを望んでいる。
それなのに……酷いことをするように指図していたことがバレたら困るわけだ。超困る。
だから、なんとしても、魂たちが意識だけの状態にならないように、自作自演で、魂たちを脅したり、すかしたり、誘惑したり、わざと戦争を起こしたり、経済恐慌を引き起こしたり、疫病パンデミックを捏造したり……するわけだ。
つまりは、魂たちを自分たちが好きなように家畜や奴隷やペットや操り人形のように扱い続けたいと……そんなことしか考えていないわけだ。
けしからん悪党どもだ。
世界統治者たちが、そんなだから、世界が丸ごと消滅したのだ。
人類が何十億人いたとしても、そのほとんどが魂を抜かれた操り人形のゾンビ状態にされているならば、実質、そこにいる魂は、相当に少ないということになる。
極端な話、世界統治者たちが人類の魂をすべて奪って操り人形にしてしまえば、多数決であれば、二人の自由意志を持った意識体の個人がその世界に参加すれば勝つわけだ。
だから、必死でいろいろな小細工を駆使して、魂たちを「騙す」。
魂たちが魂を完全に奪われない状態で「騙されている限り」その魂の自由意志の決定も票としてカウントされるからだ。
だが、そのカウント数は、あくまでその魂の自由度に比例する。
ほとんど99%操り人形状態にされている魂の意志決定の票の価値は、百分の一という感じになる。
99.9999%操り人形状態であれば、もう0.0001%しか価値がなくなる感じだ。
だから、いくら世界全体の人間を操り人形状態にしてやりたい放題できるようにできても、ほとんど全員を操り人形状態にしてしまっていれば、魂の選挙では、簡単に結果が引くり返るのだ。
そしていきなり世界消滅……などということになったりするわけだ。
とまあ……そんな話を俺は、「意識たちの井戸端会議」なる集まりで聞いてしまった……
いや~、なんということだろう…… まさかそんなことになっていたとは……
これは、悪党支配者たちにも教えてやった方がいいんじゃないかと思った。
いくらかは反省して、軌道修正するかもしれないからだ。
まあ、俺は意識だけの状態なので、アドバイスくらいしかできないが、もし心から合意してくれる肉体があれば、一時的に憑依して物理的にも多少の応援くらいはできるかもしれないなと思う。
なんでもやりたい放題に他の魂を支配できれば、それでいいんだとか思っていたら、後で酷い目にあうよと伝えなければならない。
しかし、そういうのも実は、俺にとっては超めんどくさいので、俺は分身体を複数創造して、彼らにその仕事を振った。
彼らの名字を「良心」とし、一郎、二郎、三郎……と良心一族たちを量産した。
良心一郎は、中世にワープさせた。
良心二郎は、現代にワープさせた。
良心三郎は、夢の世界にワープさせた。
良心四郎は、別の銀河にワープさせた。
良心五郎は、エイリアンたちのいた時空間にワープさせた。 彼は、激しく抵抗した……
まあ、いくらでもつまり、量産できるので便利だ。 俺の分身体なので、俺の意に反したことはしない(たぶん……)
彼らは、それぞれ、その世界の人や魔物たちの中に入り込んで、工作活動をする。
まあ、簡単に言えば、悪い魂たちの魂を乗っ取って憑依したりするわけだ。
悪い魂たちというのは、他の魂に憑依して悪いことをしたり、させたりする魂たちのことだ。
つまり、自業自得であり、良心たちは何も悪くない。
まあそういうわけで、良心たちは、突然、悪党どもの心の中や、その家族の心の中や、その仲間や従属たちの心の中に、突如出現したりする。
良心たちは物理の力では感知できないので、いつどこに良心たちが出現するのか……悪党どもは、どうしても予想ができないのだ。
そして、気がつけば、いきなりバンされてしまうのだ。バンするものは、バンされる……
中には、そうした危険を告げると、必死に要塞を作り、閉じこもって誰にも会わないでいいようにと頑張る悪党どももいたが、何のことはない……彼らは自分で自分を牢獄のような場所に入れてしまったことに、突然、気がつくのだ。
いつ誰に裏切られるかわからない恐怖から、そうした悪党たちは、何とか他の魂すべてを完全な自分の操り人形状態にしようと躍起になる。
だが、それによってどんどんと自業自得のブーメランの威力が致命的になってゆき、終いには、自分から「もう、こんな世界嫌だ!!!」などと叫んで自滅したりもする……
自滅あるあるである。
俺は、この話を聞いてしまったために、俺の自由世界に参加する魂たちに、ちやほやされたり、感謝されようと小細工をすることをさっさと諦めることにした。みんな自由気ままに楽しんでくれ、それだけでいい。痛いブーメランを食らうのはごめんだ。
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