第10話 俺は、俺の自由世界ではプライベートを秘密にできるようにした
魔王と魔王の娘さんと俺と黒ヒョウちゃんで、いろいろ話し合った結果、魔王は、かなり以前よりもイケメンになった。
ほとんど以前の面影がないくらいにイケメンになってしまった。
意識だけの世界、あるあるだ。
魔王の娘さんは、微妙に大人の美しさが増してしまった。
俺としては、以前の方がよかったのだが、俺が注文をつけるわけにもいかない。
こんな世界は嫌だ!!!と思われたら、世界ごと、消されてしまうのだから、俺のわがままを通すわけにはいかないのだ。
仕方がないので、俺は、以前の魔王の娘さんをコピーしておいて、俺のプライベートルームで実体化させてみた。
だが、困ったことに、意識だけの世界では、すぐにこちらの思いが以心伝心してしまって、プライベート状態を維持できないことに気づいた。
魔王の娘さんが、すぐさまテレポートしてきて「こういうのは、ダメです!!!」とダメ押しをされてしまったのだ。
俺はがっかりしてしまった。
何のために、魔王とセットになった魔王の娘さんを保護したと思っているのだ……
するとその思いを察知してしまった黒ヒョウちゃんがメイド服を着た魔王の姿に変身して、あーだこーだと叱り始めたのだ。
動機が不純だとか言うのだ。 いいがかりだ……メイド服の魔王はやめてくれ……
妙な部分で潔癖というか、変態というか……俺にはそういう趣味はないんだよ……俺のプライベートルームでくらい、俺の好きなことをさせてくれよと思う。
この問題は、大事な問題だったので、けんけんがくがく、みんなで話し合われた。
そもそも、プライベートなんだし、意識だけの世界でリスクもないんだから、どんな夢を見るかとか、どんなビデオを見るかとか……にまで他の魂が介入してくるのは問題ではないのか?と俺は必死に訴えた。
完全にプライベートにしておくなら、その内容が他の魂にとって嫌なことでもそれを知らなければ、嫌な思いをする者が発生しないのだから、プライベートの秘密は守られるべきではないのか?と主張した。
こんなもの自分のプライベートな部屋に誰もが覗き見ができる監視カメラを設置しているようなものだろう? みんな、それでもいいのかよ?! と訴えた。
すると、魔王の娘さんも、考え込みはじめ、「確かに、それは困りますっ!」と言う。
やったー!と俺は思う。
だが、魔王は、自分は父なのだから、娘のプライベートも気になるとか言い始める。
ついには、父と娘で言い争いになる。
「じゃあ、お父様のあの恥ずかしい秘密をすべて公開してもいいんですか!」などと言われると、魔王は急にシュンとなってしまった。一体、過去に何があったのだ……
黒ヒョウちゃんは、どっちでもいいみたいだ。そもそも黒ヒョウちゃんは、何にでも変身してしまう癖があるので、見られては困るプライベートなどないのだろう。
むしろ、俺が驚く反応を楽しんで、とんでもない姿を見せたがる傾向がある。
そんな会議の結果、やはりお互いのプライベートの世界は尊重しあって、自分のプライベート領域でだけは、思いや様子が以心伝心で伝わらないように工夫しようということになった。
そこで俺は、中のことは外部に漏れないようにしたミニ結界世界を無数に創造した。
かくあれ! と明確にイメージして願えば、そんなミニ世界のようなものでも何でも実現してしまう。
意識だけの世界は、そういう部分が自由でよい。
こうして俺は、エイリアンたちから避難してきた時空間に、まずは大きな自由世界結界を創造し、その中にプライベート用のミニ世界結界を無数に創造した。
それは、まるでいろいろな個性のあるお店を誰もが自由に自作し、分かち合い、楽しめるような感じとなり、なかなか良いなと思えた。
もちろん俺の自由世界にはお金などというものはないので、どの店に入って楽しもうとすべてタダだ。
せいぜい、守るべきことがあるとしたら、「楽しめない店には入るべからず」という程度を守るくらいだ。
一人だけで入ることもできるし、合意があれば複数の魂で入って楽しむこともできるという感じだ。
このプライベートミニ世界は、徹底的に完璧に完全無欠に引きこもることもできるし、気の合った者たちとのパーティ用に使うこともできる。
プライベートミニ世界の大きさ、広さも、自由自在にできるようにした。
そもそも意識だけの世界では、時空間は、そのイメージさえできればいくらでも拡大できるので、そうしても問題ない。
いろいろ試してみると、俺の元いた世界を丸ごとコピーしてミニ世界に入れることもできるということもわかった。
まあ、細部のコピーまではまったく同じではないにしろ、似たようなミニ世界を創造するくらいならばわけなくできた。
意識だけの状態なら、いったん過去に戻って、消滅した世界の必要情報を集め、その情報をミニ世界にコピーすることもできたので、いくらでも本物に近づけてゆくことも可能だ。
だが、本物と全く同じにすると、いろいろ危険なので、改良版をいくつか試作して危険性をかなり減らした。
元の世界のの恐怖政治国家の拷問強制収容所みたいなものをそのまま再現するわけにはいかないのだ。
そういうのはいったん入ったら出れなくなるからな。
歴史上の危険な権力者たちなども、残念ながら、はじかせてもらった。
俺の自由世界で、いろいろな黒歴史などを生み出されては困るからだ。
あまりに手直しすべきところが多かったので、ほとんど元の世界とは似て非なるミニ世界になったが、まあ、仕方あるまい。
こうして、俺は、過去の世界で俺の世界への避難を望む魂があれば、時々、俺の世界に招待するようになった。
あくまで相手が心から望めば……なので、お試しをしてみて、嫌だということになれば、元の世界に戻してあげた。
まあ、意識だけの状態になれる者たちだけしか招待できなかったのだけども……
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