第7話 物理世界と意識世界の真実
こんな状態になってしまえば、もう、逃げるが勝ちだ。
時空間を超えれば、さすがのエイリアンたちも追跡できないはずだ。
物理の力では、時空間は超えれない。
そして、物理の世界なら、そのメイン電源を抜けば消滅するのだ。
それは、攻略不可能なゲームに対する強制終了措置だ。
電源を落としてしまえば、いかに最悪最強の無理ゲームであろうとも、すべて消え失せる。
そうしたことを、俺はすでに元の世界の消滅の原因調査において知っていたのだ。
物理世界ゲームを維持しているコンセントを引っこ抜けば、物理世界のすべては消せる。
こうしてからくも俺たちは、エイリアンたちから逃れることができた。
あのままエイリアンたちが増殖して共食いをするよりは、世界ごと消してやった方が、ましだと思った。
そうしてから、俺は時を遡る。
そう、意識だけの世界では、それができるのだ。
エイリアンたちの出現する前の時空にアクセスし、エイリアンたちのプログラムを書き換える。
みんなで仲良く愉快に暮らしたくなる……という本能をプログラムする。
こんなものは、プログラム次第なのだ。
この時点で間違うと、今回のような事になる。
俺は、「ぐはは、最強の魔物を作ってやるぞ!」などと言っている魔王を捕まえ、その後の未来を見せてやる。
魔王は目を白黒させながら、エイリアンたちに襲われている自分を見て、やっと自分が何をしようとしていたのかを理解した。
無限に分岐した未来の中には、娘さんがエイリアンに食われてしまう未来もあった。
魔王はそれを見て、おいおいと泣き始めた。
こうして俺は、無数の悲惨な未来を書き換えはじめた。
本来、時空間というものは、存在していなくて、それはたくさんある本を順番に読んでいるだけのことだったのだ。
本を読む順番も、本の内容も、意識だけの世界では自由に変えることができる。
つまり、過去も未来も変えることができるのだ。
意識だけの世界であれば……だが……
物理的な世界の存在も物理的な肉体も完全に忘れるくらいに何かに没頭していると時間も世界もどうでもいいと感じる感覚と似ている。
それはつまり、世界も肉体も捨てる覚悟と準備が100%以上あれば、過去も現在も未来も、どうにでもできるようになるということでもあった。
肉体として生き残ろうとしているうちは、それは不可能だが、物理世界の存続を願っているうちは不可能だが、そんなものはどうでもいいという思いが100%以上になれば、実は、意識は時空間の束縛から自由になれるのだ。
つまり、生きるも死ぬもどっちでもいいし、世界が存続しようが、消えようがどっちでもいい……というような境地に達した者たちは、時空間の束縛から自由になれる。
そんな者は、俺がいた元の世界には、ほとんどいなかったのだけど……もし、そうした者たちが一定数以上いれば俺の世界が消えるということもなかったのかもしれないなと思った。
なぜなら、そうした者たちは、意識だけの存在になり、時空間を超えて、過去や未来の結果を書き換えれるからだ。
だが、俺のもといた不自由な世界では、そうした知識が、意図的に支配者たちによって隠されていたようだ。
「そんな馬鹿な話など、あるわけないだろ!」と昔の俺なら、一笑に付したことだろう。
だが、まあ、こうなってしまった以上、俺が過去と未来を、いい感じに書き換えてやればいいのだと思う。
それは、暴力バーが営業していたら、その店を営業停止処分にして、みんなが楽しめるお店をそこに新しく作るような感じだ。
はっきり言って、今から思えば、俺の元いた世界は、強制収容所みたいな世界だった。
誰もが楽しめるお店とかでは、明らかになかったなと思う。
もっと早くこのことに気づいていればよかったのになと思うが、まあ、今からでも手直しはできるかと思う。
俺がいた物理世界は消滅したが、それは時空間フイルムの一部なのだ。
何を本気で願うか 次第でそのフィルムが出来上がる。
つまり、その気になれば、いかようにも修正できる。
ただ、修正するまでの紆余曲折は、その時空間にかかわっている魂たちの選択次第ということになる。
肉体を持たない意識だけの俺でも、これを選ぶと、こうした酷い結果になるよ、というような知恵を授ける程度のことならできる。
まあ、簡単に言えば、結局、自業自得的な未来になるわけだ。
自業自得の法則に応じて、自分にとって悪い選択をすれば悪い未来が、良い選択をすれば良い未来になる。
その選択を意識的にすることよって魂が成長する。
自分の右手で左手を痛めつけたい……などと願うと痛い目にあうのだが、なぜそうなるのかがわからなければ、無限にそうしたことを繰り返す危険もある。
だから、意識だけの存在たちが、酷い結果の無限ループにだけはならないように、できるだけ配慮しアドバイスなどをする……
こうして世界は次第にあらゆる魂たちにとって良い方向に進化するらしい。
それでもどうしても良い方向に進化できない世界は、ある時点で消滅するらしい。
半永久的にいずれかの魂が苦しみ続ける世界は、あらゆる魂たちにとっての危険物だと判断されるようだ。
黒ヒョウちゃんが無意識の海の底から咥えてくる巻物の中に、そのようなことが記されていたのだ。
そこには「大意識世界攻略本 弟7巻」などと書かれていた。
他にもいろいろな攻略方法がどうやらあるらしい……黒ヒョウちゃんの活躍に期待しよう。
俺は、もうこうなれば、何としても誰もが自由な世界を実現しなければならない!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます