第6話 あまりにも強すぎるエイリアンの襲撃
黒ヒョウちゃんは、無意識の海の底からいろいろな知識を拾ってくるようになった。
俺が結界の中で新しい世界を創造するための材料を集めてきてくれるのだ。
無意識の海の底には、いろいろな危険もあるが、宝物もあるらしい。
どうやらあらゆる時空間につながっている巨大な図書館のようなものがあるらしい。
黒ヒョウちゃんが、自慢げに咥えてくるものの中には、素晴らしい知恵やイメージがあった。
異世界の魔王やその娘さんを連れてきた時は、それは驚いたものだ。
「なんでそんなの拾ってくるんだよ! 元の場所に戻してきなさい!」などと言うと魔王の娘さんがとても悲しそうな顔をするので、仕方なく一緒にお茶を飲むことにした。
何かいろいろと事情があるようだ。
どうやら、話を聞いてみると、魔王の世界が滅びかけているらしい。
魔王の魔物軍団が、他の種族をすべて滅ぼした結果、魔物同士が世界が滅ぼるくらいの勢いで争いはじめたらしい。
誰かを襲わずにはいられないという残念な本能をプログラムしたために、そうしたことになってしまったらしい。
「馬鹿よね」と黒ヒョウちゃんは、他人ごとのように言う。
そうは言いながらも、黒ヒョウちゃんは、魔王と魔王の娘さんを見捨てずに俺のところに連れてきたらしい。
まったく……
プログラムミスなら、プログラムを書き換えればいいじゃないかと思う。
しかし、書き換えようとすると襲ってくるので無理らしい。
魔王の世界では「強い」ということが正義となっていたので、とうとう魔王でもかなわないような魔物たちがたくさん生まれてしまったという。
まるで人類と大量破壊兵器の歴史に似ているなと思う。
敵に勝つための力を得るためには、その力で自分たちが自滅する危険性などはどうでもいいのだ。
そりゃ、滅亡するよな~と思う。
時間の問題だ。
そんな本能をプログラムされて、そんな世界に生み出されてしまった魔物たちもある意味被害者だ。
いいかげんにしろ!と思う。
そんなことを思っていると、俺の結界の壁に激しい衝撃が発生した。
その衝撃部分を見ると、巨大なエイリアンもびっくり的な魔物が壁に張りついている。
そのとがった槍のようなくちばしで激しく俺の世界の結界壁を超高速でつついている。
「おい!やめろ!」
俺は激しく狼狽する。
見ると、それは先発隊だったようで、次々と似たようなエイリアンが怒涛のようにやってくるのが見える。
黒ヒョウちゃん曰く、彼らは、どうやら、魔王のもとに集まる習性があるようだ。
そんなことは早く伝えてくれ。
俺は魔王を結界から追い出そうと考えたが、魔王の娘さんが泣きそうになっているので思いとどまった。
魔王よ…娘さんに感謝せよ……
エイリアンたちのくちばしは、結界壁が破壊できそうにないと見るや、ドリル型に変形しはじめた。
なんという奴らだ。知性があるようだ。
結界壁を維持するには、相当の意志力を必要とする。
それは俺の仕事だ。
結界壁が破られたら、みんなやられてしまうだろう。
俺は全身全霊で結界壁を維持することに意識を集中する。
だが、エイリアンたちの数が多すぎる。見ている先から、どんどんと分裂して増えてゆくのだ。
反則だろ……
こうなってくれば、もう、俺も手加減などしているわけにはいかない。
破壊本能をプログラムされてしまった魔物に能動的な恨みはないが、俺の世界と黒ヒョウちゃんと魔王の娘さんを救わねばならない。
すると、魔王が悲しそうな顔をする…
魔王ともなるとテレパシーで以心伝心で俺の心がわかるらしい。
仕方がない奴だ…「ならば保護してやるから、協力せよ!」とテレパシーで言い放つ。
俺は、魔王の能力を一瞬で調べ、コピーして無数の魔王をイメージする。
魔物たちも強いが、魔王だってそれなりには強い。
魔王一人で勝てなくても、たくさんの魔王ブラザーズがいれば、応戦できるはずだと思ったのだ。
魔王はさすがに魔王と言われるだけあり、いろいろな魔法が使える。
魔王ブラザーズの連携魔法攻撃によって、エイリアンの数が減り始めた。
しかし、エイリアンたちは知性があるので、分裂速度を増大しはじめた。
エイリアンたちの分裂速度が速すぎる。
等比級数的に増え続けている。
魔王ブラザーズの連携魔法攻撃が追いつかない。
これでは、世界が滅びて当然だ。
結界の中の空間はそんなに広くないので、魔王を増やすには限界がある。
しょうがないので、無数の魔王を俺は、結界の外にテレポートさせる。
ほんの一瞬ではあるが、そのためにはどこかの結界壁を開けなければならない。
その一瞬の隙をついて、エイリアンが数体、結界内に入ってきた。
やばい…!
しかもすぐに結界内で超高速分裂をはじめやがった。
2体、4体、8体、16体……爆発的に増えてゆく。
俺は、本能的にこのままでは結界がもたないと判断した。
仕方ない…
俺は、黒ヒョウちゃんと魔王の娘さんと魔王と自分を一気に別の時空間に転送した。
つまりは、逃げたのだ。
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