白か?黒か?

黒と白の陣営に分かれ、キングを守りながら己が願いの為に殺し合う。勝った陣営には永遠の幸福とたった一つの願いを叶える権利が与えられる。だが負けた陣営には果てなき闇に堕ちて、世界中のマイナスエネルギーをその身に受けるという罰が与えられる。


「どう考えてもデスゲームでしょ……」


金髪の男は頭を掻きむしりながら呟いた。


「そうは言ってもねェ、チェスの駒に選ばれた以上このゲームからは逃げられないんだよォ。」


銀髪の老人は愉快そうな口調で言う。


「いい加減腹くくれや!おめえさんだってこの話に乗ったんだろう?」


スキンヘッドの大男が金髪の男の胸ぐらを掴む。


「そりゃあ……まぁな……」


金髪の男は気まずそうに目を逸らす。


「おいおい少尉、その辺にしときなよォ。」

「へいへい、わかりましたよ。」


スキンヘッドの男は不機嫌そうに手を振りながら部屋から出て行った。


「まあこんな棒無し根性じゃあ生き残れないヨネ!!」


真っ黒なコアラに純白の羽が生えたような生物(?)がケラケラと笑う。


「うっせ……」


金髪の男は俯きながらそう呟いた。


「“黒のナイト”に選ばれた君なら大丈夫だよ。なんたってを持ってるんだからさァ!」


チェス戦争において参加者は全員、カリスマと呼ばれる特殊な能力を一つだけ持っている。


「能力だけでは勝敗は決まらない。それはあんたらオーナーが一番よくわかっているだろう?」


金髪の男は真剣な眼差しで言い放つ。


「確かにィ、その通りだネェ。」


老人は口元に笑みを浮かべている。


「ははは!!分かってんじゃあねえか!!!」


少尉と呼ばれた大男は豪快に笑い飛ばした。


「分かってんなら早くイキナヨ!!ウジウジ虫君!!」


コアラ(?)は金髪の男を嘲笑うように言った。


「チッ……言われなくても行くっつーの。」


金髪の男は舌打ちをしながら部屋を出ていった。


「さてと少尉、某国はどんな動きをすると思うかい?」


チェス戦争の舞台となる国の名は『日本国』。この戦いが一般に露見した場合、最悪一つの島が地球上から消え去ることとなる。それ程までにチェス戦争は危険なものなのだ。


「そうだな……まずは俺達の動きを探ろうとするはずだぜ?特にこの国は色んな集団が蠢いてる国だからな。」


少尉の言葉を聞いた老人は同意する様にニヤリと笑う。


「ふむ、政治家共に土蜘蛛、宙海教の連中にフリーメイソン関係者、その他諸々。実に厄介だねぇ……」


老人は肩を落とす。


「そうそう日本の警察は優秀だからネ。特に警察庁長官の有能さは異常だよネ。うちの連中にも見習って欲しいくらいサ。」


コアラ(?)は頬杖を突きながら愚痴を言う。


「俺としては海兵のヤツらの方が骨が折れるがな。」


少尉は腕を組みながら天井を見上げる。


「ああ、そんな奴らもいたナア……その所為で僕達が直接行けなくなったんだから勘弁して欲しいヨネ……」


コアラ(?)は深いため息をつく。


「さて愚痴ここまでにして、お客さんだ。」


■の■■■が■■す■まであ■■■


******


「さて黒のキングに選ばれた気分はどうだい?」


真っ青なローブに真っ黒な仮面を被った人物が問いかける。


「クソッタレが。たまったもんじゃないね。」


この老人は大企業『黒井津コーポレーション』の代表取締役である黒井津 清治という男だ。年齢は今年で60歳になるが、未だに若々しく見える。


「ふむ、随分と不機嫌そうじゃないかい?」

「当たり前だろうが。老い先短い人生だってのにこんなゲームに巻き込まれちまってよぉ。俺はただ静かに暮らしたかっただけなのによ。」

「人生勝ち組の人生を送ってきた人間にしか言えないセリフだな。」


ローブの人物は鼻で笑う。


「うるせぇよ。」


黒井津は苛立ちを抑えながら答える。


「まあいい、お前のカリスマ能力についてだが……」


ローブの人物は淡々と説明を続ける。


か。いかにも大企業の経営者に相応しい力じゃあないか。」

「これは鉱物の金だけなのか?」


黒井津の問いに対してローブの人物は首を横に振る。


「いや元素記号Au金鉱石に限らず、ある程度価値がある宝石や形の無いネットマネーなども消費対象に入るようだ。」


黒井津は顎に手を当てながら考える。まさに地獄の沙汰も金次第という言葉があるように、金さえあればありとあらゆる生物を意のままに操ることができる。


「好きに能力を使って構わんが、ゲームの存在をバラさないよう気をつけろ。」


そう言い残してローブの人物は姿を消した。ゲームの存在を一般に公開した者はキングに選ばれた者であろうと処刑される。その場合新たなキングが補充される仕組みとなっているのだ。

戦いが始まろうとしていた……



【用語集】

日本国ヒノモトノクニ︰作中の舞台となる島国。様々な集団の思惑が絡み合い、混沌とした内部状況となっている。

政治家︰良くも悪くも人によって態度をコロコロ変える。曲者ぞろいで腹に一物抱えている者が多い。

土蜘蛛︰古き風習に囚われた一族。国家から切り離された閉鎖的な地域に住む少数民族。

密教会︰数年前に頭角を現した宗教団体。特に悪事を働いている訳ではないが、その教義は謎に包まれており、信者達は地下組織を形成している。

フリーメイソン関係者︰都市伝説では世界を支配する秘密結社と言われている。しかし、実際は会員制の起業家や資産家達による相互扶助組織である。

警察庁︰政府からは独立している警察機関。その長である警察庁長官は天才と呼ぶに相応しい切れ者であり、その人脈の広さと行動力は群を抜いている。

日本海安兵舎連盟︰政府直属の武装部隊であり、その装備は最新式である。裏の世界では海兵と略されて呼ばれている。





■の■■■が■■す■まであ■■■

黒の■■トが■■するまであ■■日

黒のナ■トが■■するまであと五日

黒のナイトが死亡するまであと五日

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る