殿中曲【春想月花】

 第一章のタイトルでもある殿中曲「春想月花」は、曲そものものと、周羽が作中で想像していた光景の二つにそれぞれ元ネタがあります。


 こんな曲かなぁ、というのは「きらきら星」です。キラキラ光る、お空の星よっていう、誰でも歌える、簡単な歌です。でも、この曲モーツァルトが編曲したバージョンがあることをご存じでしょうか。


羽「もーつぁると?」


 ウルフガング・アマデウス・モーツァルト。3歳で作曲をして、7歳でもう宮殿で演奏していたという、規格外の「天才」だよ。


羽「7歳で殿試に受かったって事かよ……」


 そういうことじゃないかしら。彼は調べれば調べるほど人間味が深すぎて、奇行もすさまじいので周家の「曲と作曲者は別」っていう考えができるのもうなずけるくらいの人です。


羽「例えばどんな?」


 小学生男子が帰り道にゲラゲラ笑いながら話すようなギャグが好きって感じかな。


羽「で、そんな人が作った曲ってどんなのよ」


 こんな感じだよ。(モーツァルト全集)


羽「~~~~~~~~~~っ!!!???」(両手を顔に当てて、うずくまる図)


 さて、羽のキャパがオーバーしたので、羽の想像世界の元ネタの方に行きますか。


 梅花の園の想像は、私が好きな少女小説から貰ってきました。コミカライズはされておらず、今では電子書籍版しかない様なひっそりと刊行された作品です。万が一にも原作者様がこれをご存じであれば、菓子折り持参の上、土下座しに参りますのでどうか連絡先を教えてくださいませ。

 私が本格的に物語を書こうと思ったきっかけになった作品です。もしご存じの方がいらっしゃれば、うんうんと頷かれるはずです。


 あの妻溺愛皇帝陛下なら、殿中曲になることを知らずに舞の曲をプレゼントするだろうし、あの自称農民后陛下なら受け取り拒否するに違いない! と。しょんぼりと肩を落とす皇帝陛下を見かねた有能型幼馴染が「じゃあ、こうしましょう」と間を取り持ったに違いありません。

 

 后陛下は優しいのですが、その分厳しさを知っている方なので、不正や不平等には常に目を向けていました。そんな彼女のために整えた庭は二人にとって思い出の場所であり、また、画題にするにふさわしい場所だったのでしょう。


羽「その庭もその皇帝陛下が崩御されたのち、解体されてしまって何もない。もう、その当時の庭を知る手掛かりはあの絵しかない、と言ったところだろうな。今の庭がどんな風になっているかは、全く分からない」


 伝説の中であっても、送られた后陛下が舞った事実は確かなので、羽が殿試で奏でた際、踊ってくれたのです。


羽「おっさんに言われるまで、春想月花の成り立ちなんて気にもしなかったからな」


 殿中曲の中で、はっきりとその由来が分かるものは少ないんですよね。それは周家が「必要なし」と断じているからなんです。音楽の時間の鑑賞の時間を思い出してみると、思い当たる節があるかもしれません。


ただ「聴いて、感じて」だったと思います。由来なんてどこにもなくて、ただただ曲が流れるだけ。私はそれだとちょっと悲しいので、物語を作っていました。羽子伝が生まれた背景はこういうところもあるかもしれません。


羽「さっき5秒で思いついたくせに」


 そうともいう。では、次の殿中曲に行きましょうか。

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