第110話 反逆の双子ロリと
―――島波由美佳、完全復活。
この報せは校内を駆け巡り……なんかはまあしないけど、回復祝いに何人かに顔見せしておいた。
それでちらっと様子を見たところ、口封じしてきた担任教師との密会はどうやら誰も知らないらしい。さすがすぎる。
なんにせよ心配かけた分なにかお礼をしようかなぁと、親友の舌をひっそり弄んだりする一日だった。
そしてその帰り道でのこと。
近くの公園を通りがかると、草むらから飛び出してきたかわいらしい襲撃者に拘束されて公園のトイレに監禁された。
かわゆいかわゆいとかでれでれしてる間に手とか縄跳びで結ばれてる。
あれ?
もしかして結構危ない状況なのでは……?
なんてにわかに不安がこみあげてくる私を挟んで、襲撃者たちは愛らしく首をかしげる。
「ゆみ、きのうどうしたの?」
「ゆみかちゃん、きのうはおやすみだったんですか?」
どうやら昨日休んでしまったから不安がらせてしまったらしい。
確かに帰宅途中で、彼女たちには手を振っていったりもする。
だけどそれは別に毎日のことでもないのに、よくもまあ気が付いたものだ。
もしかして、私が気が付いていないときでも彼女たちは気が付いているんだろうか。
……いや、というか心配の結果がコレって……?
「実は一昨日まで熱があってね。昨日は大事をとってお休みしてたんだ。だから別に悪いことをして警察のお世話になっていたわけじゃないよ……?」
「けーさつ?」
「うふふ。ゆみかちゃんはあながちじょうだんじゃないですね♪」
冗談だよ。あながちもなにもガチで冗談だよ。
というか、そうか、別に私がなにかしらの罪を犯したと思われているわけじゃないのか。
「じゃあえっと、なんで?」
後ろ手に結ばれた手を軽く上げれば、ふたりは顔を見合わせる。
「きのうママたちがしてたんです」
「みくちゃんがやろーって」
「ママさん??????」
えっ。
うそ。
あのふたりってそんな感じなんだ……?
この際いもうとちゃんに関してはしかたないとして、なんかこう……印象変わるな。
「みくちゃんがぷりきゅあゴッコしたいってゆーから、つかまったイッパンジンやくだったんだよ」
「うふふ。そうなんです」
にこぱぁと笑うおねえちゃんと、なにか見透かすように艶然と笑むいもうとちゃん。
どうやらいもうとちゃんにからかわれたということらしい。
悔しさはあるけど、ふたりのご両親がアブノーマルなご趣味を持っていてしかも子供にそれを目撃されているみたいな地獄がこの世に存在していなかったことへの安堵があまりにも強すぎた。
―――というか。
「結局私がされてる理由は……?」
「みくちゃんがやろーって」
「きのうたのしかったので♪」
そこはそれなんだ?
いもうとちゃんの手遅れ感が止まらない……
まあいつか黒歴史にでも……なるかなぁ……なっといてほしいところ。
とりあえず。
「うーん。ちょっとキツすぎて痛いかも」
「わっ。ごめんゆみ!」
「むぅ。すこしだけならゆるめてあげます」
おねえちゃんは慌てて、いもうとちゃんは渋々私の拘束を解こうといじる。
やがてなんとか拘束は解けて、その隙に素早く立ち上がった私は縄跳びでいもうとちゃんの手をくるくると巻いた。
ぱちくりと瞬いたいもうとちゃんが自分の手を見下ろして、それから冷ややかに私を見つめてくる。
「……ゆみかちゃん?」
「うん。似合ってるよ」
「……ゆみかちゃんってやっぱりヘンタイさんなんですね」
「そうだね。だから抵抗できないあなたにいろんなことしちゃうかも」
「ッ」
さっと青ざめて警戒する彼女をふたの上に座らせる。
おねえちゃんが不安がって袖を引いてくるから、私はにっこりと笑いかけた。
「大丈夫だよ。嫌がることなんてしないから」
「ほんと……?」
「うん。むしろ、うれしいことをしてあげるの。おねえちゃんも一緒にやろっか」
「うれしいこと?」
こてんと首をかしげるおねえちゃん。
その視線が私に向いているのをいいことに、いもうとちゃんの口はそっとふさがせてもらっている。
しばらく静かにしていてね?
「そうそう。いもうとちゃんにやられてうれしかったこと、あるでしょ?」
「うれしかったこと……」
おねえちゃんが考えこみながらいもうとちゃんを見る。
私の口封じから逃れたいもうとちゃんが、私を睨みつけながら歯噛みする。
「おねぇちゃん、こんなヘンタイさんにダマされちゃだめです」
「でも、いつもうれしいことしてくれて、わたしからしてあげたことないよね……」
「わたしはだいじょうぶなのっ、んむぐ」
おねえちゃんがさっそくいもうとちゃんの口を口でふさぐ。
さすがの決断力だ。
負けじと私はいもうとちゃんとおねえちゃんの頭をなでてあげた。
いもうとちゃんはぎろりと私をにらみつけてくるけど、ひとときまんざらでもなさそうに目じりが落ちたのを見逃しはしない。
いい調子だ。
わりとこの三人の中だと好き放題やりがちな暴走機関車であるいもうとちゃんに、この調子でやられる側の感覚というものを仕込んであげよう。
「んっ。……うれしかった、こと」
「おねぇちゃ、んぁっ」
口を離したおねえちゃんがいもうとちゃんの耳をくわえる。
己の
えっ。
ていうかそうじゃん。
リルカも使ってないしこれ、傍から見ても純然たる犯罪行為なのでは……?
い、いやでもやっているのはこの幼女ふたり……だめだ逃れられる気がしない。
私は慌ててリルカを取り出すとふたりの30分を買い取る。
まさか犯罪回避のためにリルカを使う時が来るとは……そろそろ本格的に自首を考えたほうがいいかもしれない。
とはいえ買ってしまった以上はしかたがない。
熱心にいもうとちゃんの耳を舐りながらさわさわと身体のあちこちをまさぐるおねえちゃんの所業を眺めつつ、私はそっといもうとちゃんの口に中指を差し込んだ。
もちろんがぶがぶと―――どころの騒ぎじゃなく結構がっつり噛みつかれるけど、気にせず舌をいじいじ。
していると次第に噛む力もなくなって、戯れるように舌が躍る。
酸欠となにかでとろんとぼやける瞳をのぞき込んだおねえちゃんが、頬を真っ赤に上気させながらこぼれる唾液を舌で拭う。
「みくちゃん、かわいい……」
そっと指を引き抜くと、今度はおねえちゃんがその小さな指をいもうとちゃんの口腔に侵入させる。
するといもうとちゃんはそれをちゅぱ、とくわえて、ちゅるちゅるすすりながらくちゅくちゅと舐り始める。
……えっちだ。
ダメな奴だこれ。
そう思ってそっと距離を置こうとすると、妹ちゃんの足が私の足にぎゅぎゅっと絡みついてくる。
請うようにこぼれる瞳。
喉の奥から滲み出す艶やかな鳴き声。
おねえちゃんがそれに誘われるようになんどもいろんな場所にくちづけて、そのたびに嬌声を上げながらいもうとちゃんが私を見つめる、見つめる、見つめる―――
もしもこの前親友に同じような顔されてなかったらきっと即死だっただろう。
私は辛うじてその視線に耐えて、きわめて理性的に彼女の頬をなで、髪をかき上げるようにくすぐってあげる。
心地よさそうにほおずりする彼女にほっと安心して、私はそれからもなんとかあまり危なくなさそうな方法でいもうとちゃんをかわいがるのだった。
おねえちゃんはまあ……うん……
こ、これからも姉妹でなかよく、ね……?
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