第102話 後悔のない不良と
―――お金がない。
私の感触を知らないスポーツ少女にたくさん私の体を知ってもらったりいろいろと好き勝手やっていればそれもそのはずだ。
以前までは貯金が趣味みたいなところあったからバイト代とかたっぷりためていたけど、その一年ちょっと分がもうそろそろ底をつきそう。
なにせもう百回以上は使ってるんだ。
その他経費を合わせると、この数か月で30万円くらいにまで届きそうっていう―――うん。なんか、うん。
色狂いで破産するとか人としてなんか……なんか……
とか思いつつ、でも使いたい気持ちがくると使ってしまうこの心の弱さ。
プリペイド方式だから残高以上に使えたりはしないんだけど、一体それが何の救いになるだろう。
―――というわけで。
私はできるだけリルカを節約するための特訓をすることにした。
特別ゲストは屋上を根城にする不良さん。
多分きっと明らかに適任者じゃないんだろうなあとは思うけど……深く考えるのはやめておく。
で。
実際どうやって特訓するかといえば、それは彼女発案の方法だったりする。
「よーはてめぇがオレを欲しくなればいいワケだろぉが」
そんな身も蓋もないことを言った彼女に後ろから抱きしめられつつ座り込んで。
何をされるかといえば、まあ、……ご、拷問?
「ユミカ。カワイイな」
「スキだぜ。……改めて言うのは気恥ずかしいがよ」
「どちらかっつーとオレぁあれこれ言ってやんのもバカらしいって思うけどよ―――てめぇのその顔はワルかねぇ」
「んだよ。ダメだぜ、てめぇはいまはオレんだ」
―――などなど。
ひたすらに言葉攻めにされながら、リルカを使おうと思うとその途端に手を止められる。
おかげで私はされるがまま―――いや、べつにリルカがないと反撃しちゃいけないとかそういうことはないんだけど、この圧倒的攻撃力を前にバフなしでなにかできるとは思えない……
……いや。
もしかしたら、その考えこそがダメなんだろうか。
いつもリルカにばかり頼っているから、隙あらば散財して破滅に向かっていくようなダメ人間になってしまうんだ。
リルカを節約するということは、愛することを自制することじゃない―――そうなんじゃないのか、
「―――サクラちゃん」
「んだよ」
くるりと振り向いて逆に彼女を押し倒す。
両手をぐっと拘束しながら、冷ややかな視線と衝突する。
「どきやがれよ」
「ふふ。やだ」
私は笑い、彼女の耳元に口を寄せる。
「私も好きだよ、サクラちゃん」
「ハッ。知ってるぜ」
「うん。でも、きっと知ってるよりもっと好きだよ」
彼女の首筋に唇を触れる。
すす、となでる肌の心地よさに、くらりくらりと誘われる。
「ずっとさ、ほんとはズルいなって思ってたんだ」
「……なにがだよ」
「分かるくせに」
肩にそっと歯で触れてくにくにとなじる。
なんてことないふりをしていても、私には彼女の心音が聞こえているから無駄だった。
なんだ、彼女だってされたいんだ。
「私も、お返し」
「ッ」
がぶり、と。
肩に噛みつく。
ぎゅ、と身体を抱きしめる心地。
痛いんだろう。
それなのに、痛みを与える私にすがっている。
だから私はもっともっとと彼女に与えたくなる。
だけどもちろん、痛いだけなんて可哀そうだから、気持ちよくもしてあげようと手を這わす。
肺から漏れ出す熱い吐息。
ああなんてかわいいんだろう―――
「ちょ、うしのんな……ッ!」
彼女の手が私に触れる。
だけど今は私の番だ。
反抗するだなんて―――お仕置きしてあげないと。
「だぁめ」
「セツヤクとかってなんだったんだよ……!」
二つ目の痕を刻みながら差し出すリルカ。
彼女が何かを言っているけど、知ったことじゃない。
お金よりも大事なことなんていくらでもある。
そして彼女はそのひとつだ。
だからこうすることに後悔なんて―――ないッ!
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