第23話 あまいもの好きの双子ロリと
ムッツリな親友の本性をさらけ出してやろうと調子に乗っていたら親友を失ったかもしれない。
放課後になるなり駆け足で帰ってしまった彼女を見送りながらそんなことを思う。
ぴろりん♪と届いた『またあした』というひどく短いメッセージがなんというか……どうしようこれ。
うむむ、と考え込んでいるうちに私は無意識に自宅近くの公園に来ていて、ブランコに揺られながら思案に浸っていた。
ら。
「ゆみー!」
「ゆみかちゃん。こんばんは」
双子ちゃんがてこてことやってきてはじゃれついてくる。
そこそこ日が長いとはいえあまり遅くまで遊んでいてはいけないとそれとなく諭してみると、どうやらちょうど帰ろうとしたところで私を見つけて慰めに来てくれたらしい。
天使かな。
うつうつと頭を埋め尽くしていた悩み事がすっきりと吹き飛んでいく。
この世の中にこんな素敵な子たちがいるっていうのにいったいなにを悩む必要があるっていうんだ。
とりあえずお小遣い気分でリルカを差し出すと、おねえちゃんはとたんにゆで上がって、いもうとちゃんはにこにこと笑う。
恥じらいながらもおねえちゃんはカードを受け入れてくれるから、私はとりあえずふたりを連れて移動することにした。
両手にましまろ。ふにふにおててを誘拐していく先はドーム型の遊具の中。薄闇の下、少女二人を暗がりの秘所に連れ込むというだけで背徳感が凄い。
座り込んだとたんにじゃれついてくる彼女らは甘酸っぱくて苺みたいな匂いがする。
相変わらず恥ずかしがりやなおねえちゃんは灰色のシャツにネクタイと長めのスカート。おねえちゃんと絡み合いながらおねだりするように瞳を濡らすいもうとちゃんは裾の長い服に短めのスカート、ベレー帽という絵描きさんみたいな服装。
「おねぇちゃん。ふふ、ずっとあそんでたからちょっぴりあせのにおいがするね」
「やぁ、はずかしいって。みくちゃん……」
「もっとはずかしいことしよ?ゆみかちゃんがみたがってるよ」
「うぅ……」
恥ずかしがりながらも、いもうとちゃんにされるがままなおねえちゃん。
正直あれだよね。
私をダシにいちゃつきたいだけだよね、いもうとちゃんって。
仲良きことは美しきかなとか言うけど、場所が場所なだけにふたりがじゃれ合っている姿を見ているだけでセンシティブに思えてくる。
とはいえどうやら今日はささやき多めらしくて、前回ほどに大変な感じはない。不思議な密閉間のあるここはあっという間にひそひそというあまい声に満ちていくけど、それくらいだ。
だからといって安心はできない。
私はこのふたりの絡みを楽しみながらもギリギリ健全に留めておくという義務がある。というかろりめいてるばかりじゃ下手したら犯罪に巻き込まれそうだから自衛しなきゃいけない。
そのための秘策は一応カバンの中にある。
さっそく取り出したそれをふたりに見せつけた。
「ところでふたりとも。これなーんだ」
「わっ。あめちゃん!」
「あめ、ですか?」
「大当たりー。はいどうぞ」
私の差し出したふたつのロリポップキャンディーをそれぞれ受け取る。
おねえちゃんはいちごミルク、いもうとちゃんははちみつレモン。
「ありがとぉ」
「ありがとう、ゆみかちゃん」
「いえいえ。どうぞ好きにお食べください」
ふたりは年相応に嬉しそうなようすで包装を解くと、その摘まみやすそうな小さくてピンク色の唇ではむっとキャンディーを咥える。ほにょんとゆるむもちもちのほっぺがかわいらしい。
ついついふたりのほっぺにむいむいと触れてしまうと、舌やキャンディーを押し付けてきてちょっと楽しい。
うーむ。かわいい。
お菓子作戦は功を奏しているらしい。
ほかにもホワイトチョコでコーティングしたバターの香るクッキー菓子とか用意してあるけど、ひとまずはキャンディで様子を見よう。
かろかろころころとキャンディを舐めてにこにこするふたりはとてもかわいい。
それを愛でながらのんびりしていると、まるで予定調和みたいにいもうとちゃんがおねえちゃんにささやいた。
「ねぇおねぇちゃん。おいしいねぇ」
「うんっ。そうだね。ゆみもたまにはやさしいね」
「えぇ。私いつもけっこう優しいと思うんだけど」
大袈裟に頬を膨らませてみせるとふたりはきらきら笑った。
なんともほのぼの。すなおにかわいい。
ついにこにこしていると、いもうとちゃんはさらにおねえちゃんに接近する。
「おねぇちゃんのキャンディ、おいしそうね」
「えぅ……うん……みくちゃんのキャンディも、おいしそうだね」
姉妹二人だから通じることがあるのか、ふたりの距離が近づいていく。
手のひらを重ね合わせて、身体を交わらせて、ほっぺをすり合わせて。
そんなに近づけばもう距離なんて概念はそこにはなくて、キャンディから伸びる棒がかちちと合わさって音を立てる。
唇の端が触れあって、小さなおててがお互いの棒をちょんっと摘まんだ。
くりゅ、と歯に触れながら、唾液に濡れたキャンディが恥ずかしがるように露になる。
まるでくちづけを交わすようにキャンディが入れ替わる。
はむっと色違いのキャンディを咥えた唇がちゅっと触れあって、ふたりはゆるりと身体を離した。
……キャンディひとつもふつうに食べれないんだろうかこの双子ちゃん。
やり取りからして常套手段だよねこれ。
まったく淫靡な双子ちゃんだ。
彼女たちの自宅では一体どんなことになっているんだろう。ちょっと見てみたくもあるけど見た瞬間に世界が終わりそうでもある。
―――ところでこれはパターンというやつなんだろうか。
「ゆみも、ほしい?」
「ゆみかちゃんにもおかえししないとね」
ゆるると顔を近づけてくるふたり。
キャンディの棒が誘うようにかろかろ揺れる。
あまい吐息に唾液が溢れる。
いちごとレモンの魅惑のコラボレーションに誘われるまま、私はキャンディを楽しむことにした。
ほらだって、あまずっぱくておいしいんだもの……。
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