第13話 おねだり上手な図書委員と
双子ロリのいちゃいちゃに混ざった結果当初の目的だった癒し以外の何かでいっぱいいっぱいになったから、ちょっとしばらく休もうかなとか思いつつ。
放課後図書室で本を読んでいると、ふいに影が差した。
見上げれば、図書委員の彼女がテーブルに身を乗り出して私を見つめている。
今にも泣きそうなくしゃくしゃになった表情で身を震わせる彼女に、私は自然と口角がつり上がっていくのを感じていた。
待っていた甲斐があった。
もっともっとじらしてみようと、私は頬杖をついて彼女を見返す。
「なにか用?」
「っひ、ひどい、です」
「なにが?ちゃんと言ってくれないと分からないよ」
「ぅ、う、」
顔を真っ赤にして制服の裾をぎゅっと握りしめる彼女に、うっかり舌なめずりなんかしたくなる。
彼女の口からおねだりの声が聞きたくなったから、私はなにも言わずにじっくりと彼女を視姦する。
彼女ははくはくと空気を噛んで、やがてくしゃりと歪んだ顔を上げた。
「わ、わたしは、もう用済みなんですか……?」
ぽたりぽたりと雫が落ちていく。
すこしばかり虐めすぎてしまったようだ。
その泣き顔があまりにもかわいらしかったから、ついシたくなってしまった。
今日のところはこれくらいで許してあげよう。
「ごめんね、からかってみただけなの。泣かないで?」
頬を手の平で包む。
親指でそっと涙を拭れば、彼女はおずおずと私の手に手を重ねた。
「ごめんね。あなたがかわいいから、ついイタズラしてみたくなるの」
「あの、わたしも、ごめんなさい、」
「ううん。さ、おいで?」
「は、はい」
彼女を私の隣の席に誘う。
おずおずと座った彼女は自分から身体を寄せてきて、肩が触れる。ぴくっと身体を弾ませて、だけど彼女は離れることはなかった。
「そっちから、来てくれたね」
「っ、……あの、わたし」
「いいよ、言わないで」
なにかを伝えてくれようとする彼女の言葉を遮る。
金で買って音読させるという意味の分からないプレイを強要した私にどうして自分からまた近づいてくるのかなんて気にする必要はない。
なんとなくそういう気配があるから待っていただけで、来なかったら来週にでも私からこうしていただろう。
私がリルカを取り出せば、彼女はややためらうようなそぶりを見せて、だけどスマホを取り出して重ねた。
ぴぴ、と無機質な音が前回を思い起こさせたのか、彼女はキュッと身を縮こまらせる。
やっぱりまだまだ恥ずかしいようだ。
肩に腕を回して、向こう側の耳にふにゅふにゅと触れてみる。
「きゃっ」
と上がる小さな悲鳴も可愛らしい。
「かわいいよ」
耳元に触れるささやきに彼女は身悶えする。
どうしようもないくらいにかわいい。
わざと耳元で吐息多めに笑えば、彼女は声をこらえるように歯を食いしばった。
そんな姿を延々と眺めるのもいいけど、彼女との本番はこれじゃない。
私はこの前と同じ本をさしだして、ページを開いた。
「ほら、続きから。読み聞かせて?」
「は、はい」
私の望むままに彼女は文字を追う。
前回いっぱいしてあげたからすこしは慣れたのか、かわいいかわいいと囁いてみても彼女ははにかみはするものの声を途切れさせないようだ。
私の反応をうかがうようにちらりちらりと視線をくれるそのしぐさはかわいらしいから、それでも自然に頬は緩んでしまう。
でも、せっかくならもっとかわいい姿が見てみたい。
こういうときのために秘密兵器を用意しておいてよかった。
彼女から本を取り上げ、
「あっ……」
私は代わりに一通の手紙を差し出した。
受け取った彼女は私と手紙を見比べて首をかしげる。
「開いてみて?」
「……はい」
彼女の震える指先が封筒を開いて、中から便箋を取り出す。
かさかさと開いた紙に彼女は目を通し、そしてたちまちゆで上がった。
動揺する瞳が私に向けられるけど、もちろん冗談なんかじゃない。
「ね。読んで?」
「えっ、と、あの」
「読んで?」
有無を言わさず迫れば、彼女はごくりと唾を飲み込んだ。
ちらりと手紙を読んでまた熱を増す彼女の唇がふるりと震える。
私はそんな彼女の口元に耳を寄せた。
「ふふ、はーやーくー♪」
「あ、ぅ……」
彼女の吐息が触れるのがこそばゆい。
いまから彼女の音を私の中に独占するのだと思えば興奮さえする。
彼女がなんどか空気を噛むのが伝わってくる。
かさりと、紙を握る音が聞こえる。
喉の奥で声になろうとした吐息が口のなかでくしゃくしゃになってしまう音がする。
じらされているような気分だった。
いまかいまかと待ち遠しく思うところに思わせぶりな吐息が届いて、そのたびに呼吸を心臓を止めてまで耳を澄まして。だけど届くのは吐息ばかり。
なかなか手ごわい。
刻々と制限時間が過ぎていることに彼女は気がついているのだろうか。
もしこのまま30分が経ったら……いや、それはそれでなかなか趣があるかもしれない。
そうしたら彼女は私にすがってくれるだろうか。それとも31分目に、彼女は気がつかないかもしれない。
―――すきです。
余計なことを考えるそのひとときに、彼女の声は差し込まれた。
思考を全部弾き飛ばす強烈な不意打ちに、頬が熱くなるのが分かる。
「すき、です」
彼女はもういちど同じ言葉を、今度はゆっくりと噛み砕きながらささやく。
脳髄がとろとろと溶ける心地がする。
うっとりと目を細めながら、私は彼女を振り向く。
そしてお返しに、耳元で同じ言葉を囁いた。
「好きだよ。大好き」
「ひぅっ」
小さく悲鳴さえ上げて耳まで真っ赤になる彼女につい笑みがこぼれる。
私はまた、彼女の口元に耳を向けた。
そうすれば、どうやらシステムを理解したらしい。
彼女はしばらく言葉も出ない様子でうろたえる。
彼女に渡した手紙の中には、箇条書きでたくさんの言葉が書いてある。
愛のささやきや単なる誉め言葉なんかが、いっぱい。
次はまたしばらく待つことになりそうだとそう思っていたけど、あんがいそれは早かった。
「か、かわいいです」
言い慣れていなさすぎて戸惑うところなんて壮絶にかわいい。
彼女はひとつ吐息を耳に触れさせて、それからまた、今度はしっかりとささやく。
「かわいいです」
目を向けるまでもなく分かるかわいらしい彼女の恥じらいを、ちゃんとこの目で堪能する。
俯いてしまう彼女の顎を指先で持ち上げて、硬直したところに顔を近づけていく。
ぎゅっと目を閉じた彼女の頬に唇をかすめさせ、舐るようにささやきを返す。
「かわいいよ。恥ずかしがるところもかわいい。それでもこうしておねだりしてくれるのがかわいい」
「ぅ……」
おねだりという言葉が恥ずかしいのか顔をそむけてしまう。
だけど気にしないで、私はまた耳を向けた。
彼女の舌がまた手紙の言葉を拾い上げるのは、それからすぐのことだった。
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