第三百四十四話 ルリアと真剣勝負 その五
「とどめよ!」
「なっ!?」
ルリアが作り出した炎の塊を消し去る隙をついて、ルリアは斬り込んで来るだろうと予想してた。
しかし、ルリアは俺の予想に反し、同じ炎の塊を三つ作り出して俺に向けて放って来た!
一つなら消滅させられるが、三つは無理だ!
ルリアは、観客席にいる人達を巻き込んでいいと考えているのか!?
いや、ルリアがそんな考えを持っているとは思えない。
だとしたら?
「マスター、俺様が吸収してやってもいいぜ!」
「いや、それは禁止だと言っただろう!俺が何とかする!」
グールに何とかするとは言ったものの、どうすれば観客席に被害を与えずに消し去る事が出来る?
無理だ…。
二つは無理をすれば何とかなりそうだが、三つ目は爆発してしまうだろう。
全てを消し去れないのであれば、観客席に被害が行かない様にしなくてはならない!
「一つ!二つ!三つ!」
ルリアが撃ち出して来た炎の塊を全て受け止めた!
「マスター、俺様を巻き込まないでほしいぜ…」
「お前は復活できるから問題無いだろ?」
「そーだけど、痛みは感じるんだぜ!」
「それはすまないな。一緒に燃えてくれ!」
俺は自身に掛けてある障壁を強化し、そして俺を中心として三つの炎の塊も障壁で包み込んだ。
次の瞬間、三つの炎の塊が爆発し、激しい衝撃と燃え盛る炎の高温が俺に襲い掛かって来た!
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
俺は全力で自分に張っている内の障壁と、爆発の衝撃を逃がさないように張っている外の障壁の強化を行っていく!
「熱い、熱い、熱い!」
グールが熱いと叫び回っているが、俺もものすごく熱くて泣き叫びたいほどだ。
と言うより、体の表面は酷い火傷で手足の先なんかは、真っ黒く炭化してしまっている…。
俺は死なない様に、頭と体を中心に障壁魔法と治癒魔法を掛けて守っていて、手足まで守る余裕はない!
今は俺の手足より、観客席に被害が行かないようにするのが重要だ。
「はぁはぁはぁはぁ…」
何とか爆発の衝撃と炎を押さえ込む事に成功した…。
しかし、勝負は終わった訳では無い。
ルリアは上空で、次の攻撃の準備を整え終えていた。
「エルレイ、休ませはしないわよ!」
ルリアの周囲には数えきれないほどの炎の矢が浮かんでいて、それを俺に向けて撃ち出しながら斬り込んで来た!
「くそっ!」
ルリアの撃ち出してくる炎の矢は、見た目以上の威力と速度を持っている。
俺はそれを躱す事は可能だが、炎の矢を躱していてはルリアの魔剣エリザベートを躱せないので、炎の矢は障壁で受け止めるしかない。
飛んでいるので、炎の矢を障壁で受け止めると体制を僅かに狂わされる。
そこに、ルリアの魔剣エリザベートが襲い掛かって来る。
「エルレイ、動きが鈍いわよ!」
「くっ、少しは手加減してくれてもいいんだけれどな!」
「手加減なんてしないわよ!」
俺の動きが鈍いのは、先程の傷が癒えきっていないからだ。
手足はまだ治療出来ていなくて、感覚が鈍い。
ルリアも、俺に治療する隙を与えない様に連続で攻撃を続けている。
手の治療が出来ていないから、グールを持つ事も出来ないので必死で避け続けているが、それも限界が来た。
「右腕は貰ったわ!次は左腕よ!」
ルリアの剣を躱しきれず、右腕の肘から先を斬り落とされてしまった。
とっさに止血だけは治癒魔法で行ったが、腕一本再生させる余裕はない。
「相変わらず、恐ろしい切れ味だぜ!」
グールが感嘆するほどの切れ味なのは認めよう。
ルリアの魔剣エリザベートは、グールが改造して切れ味に特化させていた。
更にルリアは、自身の魔力を魔剣エリザベートに纏わせ威力を増している。
俺の障壁を突破できるのは、魔剣エリザベートとロゼとリゼの能力だけだろう。
つまり、攻撃を躱し損ねると致命傷に繋がる。
それを回避するためには、手を治療してグールを持てるようにしないといけないのだが…。
「エルレイ、降参しなさい!」
「いいや、まだまだ僕は戦えるぞ!」
ルリアは炎の矢と魔剣エリザベートの攻撃を休める事無く続けて来ており、俺に手を治療する隙を与えてはくれない。
どう考えても、接近戦ではルリアに分があるのは間違いない。
いや、グールがあれば接近戦でも戦えない事も無いが、今はとにかく距離をとって手の治療をしない事にはどうにもならない。
「ルリア、離れた方が良いぞ!」
「何をするつもりよ!」
俺は先程ルリアが作り出した炎の塊を目の前に作り出し、その場で爆発させた!
当然俺とルリアに、その衝撃と炎の高温が襲い掛かって来る!
俺自身にもかなりの被害があるが今更だな。
それに、ルリアにも被害を与えられたみたいだし、それにルリアとの距離を離す事に成功した。
「今度は僕の番だ!」
腕の治療をしているとルリアがまた接近して来るので、ルリアが近づいて来れない様に魔法を連続で撃ち込んで行く。
ルリアの魔法の威力は、俺を上回っているのは間違いない。
しかし、魔力量は俺の方がはるかに上だ。
ルリアの魔法に打ち負ける事は無い。
ルリアもそれは分かっていて、俺と魔法の打ち合いをしたくはないはずだ。
だから、ルリアは魔法で応戦しつつも、何とか俺に近づこうと足掻いている。
勿論俺はそうさせない様に、ルリアから距離を取りつつ魔法を撃ち続けている。
でも、このままでは魔力が切れるまで決着がつく事は無い。
どこかで戦法を変えないと、俺とルリアは日が落ちるまで撃ち続けられているだろうからな。
見ている人達にも退屈してしまうだろうし、そろそろ手の治療を行い、決着を付けようと思う。
治療をするのは左手と両足のみ。
ルリアに斬られた右腕の治療をするには、時間が足りない。
欠損部分の治療には時間と集中力を必要とするので、戦闘しながら出来る事ではない。
左手の治療が終わったので、グールを持つ事が可能となる。
利き腕は右だが、左でも剣を振るえないと言う事は無い。
戦いでどちらかの腕が使えなくなることはよくある事なので、日頃からどちらの手でも使えるように訓練をしているので問題は無い。
「グール、決着を付けに行く、耐えきってくれよ!」
「マスター、了解したぜ!」
俺は魔法を撃ち続けながら、グールを構えてルリアに接近して行った。
「ルリア、反撃させて貰う!」
「ふんっ、返り討ちにしてやるわ!」
ルリアとの、剣と魔法による激しい攻防が始まった!
ルリアは、魔剣エリザベートで俺の魔法を斬り裂きながらそのまま俺に斬りかかって来る。
俺はそれをグールで受け止め、反撃として魔法を撃ち込む。
ルリアはスッと下に降りて俺の魔法を躱し、下から魔剣エリザベートで斬りかかって来る。
飛んで戦っているので、上も下も無い。
俺はクルリと体を回して下に向け、ルリアの剣を受け止める。
腹ばいに寝そべったような状態だが、ルリアとの訓練で何度もやって来た事だ。
それはルリアも同じで、体勢の事など気にせず攻撃を続けて来る。
でも、剣が届く距離では、お互いに魔法まで完全に躱す事は出来ない。
魔法による攻撃は障壁に当たっていて、被害はそんなに大きくは無いが、積み重なって行けば動きが鈍くなって行ってしまう。
だから、出来れば躱したいのだが、お互いに躱せるような魔法は撃ちはしない。
「くっ、やったわね!お返しよ!」
俺の魔法がルリアのお腹に当たり、ルリアが痛みで一瞬怯んだが、そのまま反撃して来る元気はまだあるみたいだ。
これ以上ルリアを傷つけたくは無いが、もう少し戦い続けなければならないか。
俺の方もかなり魔力を消耗して来ているし、出来ればこの辺りで勝負を決めたい所だ。
俺は勝負を決めるべく、ルリアに向かって行く事にした。
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