第三百二十四話 結婚式の準備と休日
ラノフェリア公爵の長女マルティナの結婚式に出席し、一か月後に次女エクセアの結婚式にも出席した。
短い期間に二度の結婚式への出席は大変だったが、自分の結婚式の大変参考にはなった。
ルリア達もかなり盛り上がって来ているみたいだ。
と言っても、まだ俺達の結婚式には半年以上の時間がある。
しかし、アドルフ達は連日結婚式に向けて忙しそうに働いてくれている。
今は、来賓の最終確認を行っている所だ。
「アドルフ、国王陛下はいらっしゃるのだろうか?」
「はい、その予定でございます」
「それは良かった」
当初は、ヴィクトル第一王子のみ出席する予定だったらしいが、レオンが出席する事を知らせると、国王として出席せざるを得なかったと言う事だ。
ただ、国王が俺のリアネ城に来るにあたって色々調整しなくてはならないらしく、なかなか決まらないでいた。
簡単に、俺が国王を迎えに行ってリアネ城に連れてくることは出来ず、リアネ城に来るまで色々な領地に寄り道して来ないといけないらしい…。
それで今まで、何処の領地に寄るかで揉めていた。
それがやっと終わり、正式に国王が俺達の結婚式に参加する事が決まった。
ルフトル王国のセシリア女王は出席しない。
何故なら、セシリア女王は結界の維持のために、あの場所から動けないそうだ。
その代わり、ソフィア達が出席してくれる事になっている。
当然、姿は魔法で変わっていてエルフだとは分からないので問題は無い。
予行練習として、一度ソフィア達にもリアネ城に来てもらっている。
アドルフも、ソフィアがエルフだとは気付く事なく普通に挨拶を交わしていたからな。
貴族達への招待状は既に送っていて、返事も徐々に返ってきている。
殆どが、俺の領地の貴族とラノフェリア公爵傘下の貴族で占められているが、ポメライム公爵にも招待状は送っている。
ポメライム公爵を招待したくはなかったが、同じ公爵家として招待しなくてはならないし、向こう側としても参加しない訳にはいかないだろう。
それに今回は、キュロクバーラ王国国王レオンフィルと、ルフトル王国女王代理ソフィアが出席する。
ポメライム公爵の領地はルフトル王国に近く、貿易も盛んにおこなわれている。
ポメライム公爵としては、是非ともソフィアと話をしたい事だろう。
アドルフ達は結婚式の準備で忙しくしているので、俺はエンリーカと共に領地経営の方を頑張っている。
と言っても、俺とエンリーカで出来るほど簡単な物では無いので、新しく入って来た人達と共にやっている。
「エルレイ様、こちらの予算内容ですが、無駄と思われる予算を削った物を策定致しましたので、ご確認ください」
「うん、ありがとう。でも、予算は多少余裕が出て来たし、無理に削る必要は無かったのではないのか?」
「いいえ、余裕があるからと言って無駄に使って良い予算などありません!」
「そうだな…」
仕事は早いし、彼らが来てから予算に余裕が出来た。
余裕が出来た分は、別の所に使えるので非常に助かっている。
ただ…アドルフ以上余った予算で俺に何かやらせようとするのだけは、やめて貰いたいと思う…。
俺は何でも出来る訳では無いし、次から次へと良い案が浮かんでくるはずも無い。
でも、頑張ってお金を作ってくれた分は、俺も頑張らないといけないんだよな…。
仕事を終え、和室の畳の上に寝転ぶのが日課となっている。
これで、誰かが膝枕してくれれば最高なのだが、俺が下敷きになっている事が多い…。
俺の側にいるのは日替わりで変わっていて、今日はリディアとミディアが側にいてくれている。
そして、寝転がった俺のお腹を枕にリディアとミディアが寝転んでいる。
「エルちゃん」
「レイちゃん」
「「今度のお休みは何処に行く?」」
「そうだな…」
休みの日は大抵、レオンの所の別荘に行って寛いでいたが、リディアとミディアには不評だ。
それは、エンリーカとエレオノラも同じなのだが、彼女たちにとっては温泉に入る事は普通の事なのだからな。
俺の部屋にも和室を作ったので、ヘルミーネも別荘で過ごすのには飽きて来ているみたいだ。
かと言って、他に気軽に行ける場所は無い。
久々に、リアネの街に遊びに行くのはいいな。
スラム街を無くしてから犯罪はかなり減少して来ているし、以前のような事は起きないだろう。
魔法使いのおばあさんが作るお菓子も食べに行きたいし、今度の休みはリアネの街に行くのもいいな。
そう考えていたら、リディアとミディアの方から提案して来た。
「「ロレーナのお家に行ってみたい」」
「うん、それはいいかもね」
ソフィアがリアネ城に来た際に、俺の婚約者達は結界内の連れてきていいとは言われていた。
その時は、結婚式を挙げた後に行こうと言いう話になっていたのだが、準備も落ち着いて来た事だし、一度行ってみるのも良いのかもしれない。
「ロレーナ、今度の休みに皆をルフトル王国に連れて遊びに行こうと思うけれど、どうだろう?」
「い、良いと思うのじゃ!」
「分かった。ソフィアさんに確認して、今度の休みにルフトル王国に遊びに行く事にしよう」
「エルちゃん」
「レイちゃん」
「「ありがとう」」
ソフィアに連絡を取り、アドルフにも許可を得て、休日に皆を連れてルフトル王国の結界前へとやって来た。
「皆様、ようこそいらっしゃいました」
ソフィアに出迎えられて、結界内へと入って行く。
そして、エルフの姿に戻ったソフィアを見て、知らなかったユーティアやエンリーカ達はとても驚いていた。
ユーティアが珍しく、自室以外で声を上げていたくらいだからな。
「ソフィアお姉ちゃん」
「耳触ってもいい?」
「良いですよ」
「「ありがとう」」
リディアとミディアは、ソフィアの長い耳を触らせてもらっていた。
俺も触りたいと今まで何度も思って来た事をあっさりとやられてしまい、かなり羨ましいと思ってしまった。
エルフの町で観光する前に、セシリア女王に挨拶をしなくてはいけないので、皆と一緒にセシリア女王の所へとやって来た。
最近は結婚式の事で何度か会っていたが、ロレーナ以外の婚約者を連れては来ていなかった。
「話には聞いていましたが、随分と増えましたね」
「はい、全員僕の大切な婚約者です」
セシリア女王は俺が連れて来た婚約者達を見て、一人ずつ微笑みかけてくれていた。
しかし、セシリア女王の周囲にいる者達は婚約者の多さを見て、ロレーナが大事にされていないのではないかと心配そうな表情を見せている。
俺としては全員を大切にすることで、その心配を払拭する事しか出来ない。
セシリア女王は俺に視線を戻したのだが、珍しく表情を硬くし、困惑気味に話しかけて来た。
「結婚式を直前に控えたエルレイに、話していい物か迷ったのですが…」
セシリア女王はそこで口をつぐんでしまい、逡巡している様子だ。
また、リースレイア王国が攻め込んで来ようとしているのか?
でも、あの国はお金が無いから戦争は出来ないと言う話だった。
今の所、リースレイア王国以外でルフトル王国の脅威となる国はいない。
もしかして、ミスクール帝国で人を魔人に変える魔石が再び作られたのか?
そうだとしたら、すぐにでも止めに行かないと、また悲劇が繰り返されてしまう!
どちらにしても、セシリア女王から話を聞かない事には始まらない。
「セシリア女王様、僕に出来る事でしたら遠慮なく仰ってください!」
俺はセシリア女王を真っすぐと見ながら力強く言った。
セシリア女王の表情が緩む事は無かったが、ゆっくりと口を開いて話し始めてくれた…。
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