第三百二十三話 魔物の王カール その三
≪カール視点≫
俺が人と戦うために作った組織は、連携を上手く出来るような訓練を毎日続けていた。
前衛はオークやオーガと言った体が大きなものが勤め、後衛は俺とラミア等の魔法や遠距離から攻撃出来るものを選んだ。
それに奇襲部隊として、足の速い魔物を集めた部隊も作った。
幾ら魔物が丈夫とは言え、剣や魔法の攻撃をずっと受け続けられるはずもない。
俺が魔法で守りはするが、それでは勝てないと思ったからだ。
俺がいる部隊が戦っている間に、奇襲部隊で側面や背後からの奇襲を掛ける事が出来れば勝率はかなり上がるだろう。
森の奥まで入って来る敵は手練れぞろいだ。
それは、これまで襲って来た者達を見れば明白だ。
なので、戦う者は死ぬ危険が非常に高い。
そう説明して、戦う仲間を集めたのだが…。
「オレタチ、シヌノハコワクナイ」
「オウサマト、トモニタタカウ」
「ヒト、ニクイ」
「ナカマノカタキ、ウツ」
「よし!共に戦おう!」
多くの者が集まってくれた事に、俺は感動した。
そして、勇気ある仲間達を死なせないように、俺も頑張ると誓った!
「テキ、ミツケタ」
偵察は、新たに仲間になった飛行できるハーピーに任せていて、魔物を狩りに来た人の集団を見つけたと報告して来た。
「よし、皆訓練通りやれば俺達は負けない!
今までの恨み、晴らそうぞ!!」
「「「「「ウォォォォォォォォッ!」」」」」
俺は仲間達と共に、敵を倒しに向かって行った。
「ダリオンがやられた!援護を頼む!」
「無理だ!後ろからも攻撃を受けている!」
「左からも来た!」
「このままでは囲まれてしまう!逃げられる者だけでも逃げろ!
「もうだめだ!逃げられねぇ!」
上手く連携する事で、あっさりと勝つことが出来た。
敵が弱かったのか?
いや、仲間達が強いのだ!
元々身体能力は魔物達の方が人より上だ。
俺が指示を出し、負傷者の治療を行う事で簡単に勝ててしまう。
「オウサマ、タベテイイカ?」
「構わないぞ。装備は壊さず剥ぎ取ってくれ」
「ワカッタ」
仲間達は倒した人の装備を剥がし、今までの恨みを晴らすかの如く、倒した人達を食らいつくしていた。
俺はその光景を見て思う事は何もなかった。
仲間達はただ食事をしているだけだ。
人もまた、動物や魔物を倒して食料にしている。
強者が弱者を食料にすることは、なにも不思議な事ではない。
魔物達も今まで、人に倒されて食料とされて来たのだ。
その立場が変わっただけの事だ。
「剣は使えるか?」
「ヤッテミル」
魔物達に人の武器は少し小さすぎるが、棍棒を使うよりはるかにましだろう。
防具は、体の大きさや作りが違うので使えないが、何かの役に立つかもしれないので保管させておく。
俺も防具を着る必要は無いし、金属の防具は重すぎて動きが遅くなる。
「よし!今までやられた分、やり返そうでは無いか!」
人に勝利した事で、仲間達の戦意も上がっている。
侵入してくる敵は、全て排除してやろうと気合を入れた。
それからも、人達と幾度となく戦ってきたが、全て勝利して来た。
最近は警戒されるようになったのか、森に人が侵入してくる事は無くなった。
これで、仲間達が平和に暮らせることが出来る。
そう、安心した時の出来事だった…。
「オウサマ、テキ、オオイ!」
「女子供をまず逃がせ!俺達は仲間が逃げる時間を稼ぐぞ!」
千人以上の人が、俺達が暮らす森に攻め込んで来た!
俺達の戦える部隊は百人程度、十倍以上の差がある。
いくら仲間が強いとはいえ、数には勝てるはずも無い。
出来る限り前で戦う仲間を守りつつ、後ろに敵が行かない様に魔法で牽制を続ける。
単なる時間稼ぎにしかならないが、俺達が守らなければ、また弱い女子供が狙われてしまう!
それだけは避けなければならない!
俺達は必死に戦い続けた!
「オウサマ…ナカマヲタノム…」
「分かった…」
仲間が、一人、また一人と倒されて行く…。
ここで俺が抜ければ、一気に戦線が崩壊する。
しかし、数多くの敵が俺達の横を素通りして、逃げている仲間を追いかけて行った。
多くの仲間を助けるのであれば、俺は逃げ出した仲間の元に駆け付けるべきだろう。
だが、ここで仲間の為に必死で戦っている者達を見捨てる事は出来ない!
「密集し、後方に撤退するぞ!」
俺は前方にいる敵に向け、特大の風を放った!
これで倒す事は出来ないだろうが、俺達が下がる時間は稼げるはず。
「よし今だ!全員走って逃げろ!」
俺は敵に魔法を放ちながら、仲間と共に撤退して行った…。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
撤退し、逃げ出した仲間達の元へと急いで行ったのだが、襲い掛かって来た人達の手によって、皆殺されてしまっていた…。
またしても俺は仲間を守り切れなかった!
弱い俺が憎い!
もっと!もっと!もっと!俺は強くなりたい!
いいや!強くならなくてはならない!
もっと力を!仲間を守れる力が欲しい!!
「残りは魔族だけだ。誰がやる?」
「俺様に任せろ!」
「抜け駆けはズルいなぁ。僕も倒したいのに」
「早い者勝ちって事で良いな?」
「しょうがないな~」
最後に残っていた仲間も倒され、俺一人となってしまった。
敵は
いいだろう。
俺は最後まで足掻き、一人でも多く道ずれにしてやる!!
「ぶっ殺してやる!うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
俺は吠え!力を最大限に高めようと全身に魔力を集めた!
するとその時、胸にある魔石が熱くなってまばゆい光を発した!
この事象には覚えがある!
以前仲間を喪った際にも同じ事が起こり、俺は力を手に入れた。
今回も、死んだ仲間達から力を得たと言うのだろう…。
仲間の魔力が俺の中に集まって来る!
これなら勝てる!
いや、勝つ!!
「仲間の仇!全員死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺はありったけの魔力を魔法に変え、極大の魔法を放ち周囲のありとあらゆるものを燃やし尽くした!
「はぁ、はぁ、はぁ…」
俺以外、生きている者は誰もいない。
仲間の仇は取った!
いや…人がいる限り、魔物達は殺され続けるだろう。
俺の仲間だった魔物達はもういない。
しかし、俺に力をくれた仲間の同族を守りたい。
守らなくてはならない!
その為に、人を皆殺しにしよう!
かつてローアライズ大陸で英雄が魔物を滅ぼしたように、俺はこの地で人を滅ぼす!
そして、この地を魔物の楽園にすれば、今日のような悲劇は起きなくなるはずだ!
「俺はこの地を魔物達の楽園にすると誓う!」
俺は死んでいった仲間達に誓った…。
数日間焼け野原となった地で魔力の回復をし、それから人の住む場所へと向かって行った。
「燃え尽きろ!」
特大の魔法を放ち、町を一瞬のうちに焼き尽くす!
逃げる暇などあるはずもない!
運良く、町の外にいて被害から逃れた者達もいたが、その者達も同様に焼き尽くして行く。
そして、倒した者達から魔力を吸収していく!
そうだ、俺は敵を倒して強くなれる事を知った!
いいや、俺を魔人にしたローレッドに教わっていたが、今まではやり方が分からなかっただけだ。
やり方を覚えた俺は敵を倒す度に強くなる!
人も馬鹿では無い。
俺が町を襲えば、軍を集めて俺を倒しに来るはずだ。
その前に、多くの人を殺して強くなって行かなければならない!
敵の準備が整う前に、次々と町を襲い続けて行く事にした。
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