第二百七十八話 カッスター砦襲撃 その二

「エルレイさん、敵魔法使いが上がって来ました!対応お願いします!」

「はい、分かりました!」

砦まであと少しと言う所で、敵魔法使いが迎撃に上がって来た。

魔法使いの数は、ざっと百人程度だろうか?

数は多いが、グリフォンを守り切らなければいけない!

「ルリア、行けるな?」

「えぇ、大丈夫よ!エリザベート!」

ルリアは返事をするなり魔剣を発動させてから一気に加速し、敵魔法使い達に突っ込んで行った!


「リリー、ロゼ、ルリアを頼む!」

ロゼは返事をするより先に、慌ててルリアを追いかけていた。

ロゼも、ルリアが一人で突っ込んでいくとは思っていなかったのだろうな。

ルリアは魔剣をとても気に入っていて、こうなるだろうと言う事は予想していた。

遠距離から魔法の打ち合いをした方が安全ではあるが、ルリアにはあの戦い方が合っているのだろう。


「マスター、俺様も斬り合いたいぜ!」

「すまないな、僕の役目はグリフォンの護衛だ。

グールは仕える主人を間違えた様だな?」

「俺様も最近そう思う様になって来たぜ…」

ルリアの戦い方こそ、グールが望んでいる物だろう。

俺としても、ルリアと同じように戦いたいと思っているが、役目を忘れる訳にはいかない。

ルリアが漏らした敵の排除を行うだけだな。


「エルレイ様、グリフォンが上昇しています」

「そうだな、下の方に移動しよう」

グリフォン部隊は敵が来たからか、砦を前にして急上昇していた。

俺はグリフォン部隊を守るべく、敵魔法使い達とグリフォン部隊の間に入り込んだ。

「リゼ、近づいてくる敵は容赦なく撃ち落とせ!」

「はい、頑張ります!」

敵魔法使いの数が多いから、ルリアが仕留め切れないで上がって来る者もいるだろう。

そう思っていたのだが…。

「エルレイ様、私の出番は無さそうです」

「その様だな…」

ルリアが魔剣を手にして敵魔法使いたちの中に突っ込んで混乱させ、リリーが逃れ出た者達を撃ち落としていた。

あの様子なら、リゼが手を出すまでも無さそうだ。


『エルレイさん、攻撃を開始しますので注意してください』

『分かりました』

マティアスから念話で連絡を受け、ルリア達にもグリフォンの攻撃に注意する様に連絡を入れた。

「エルレイ様、あれは…」

「なるほど、試したい策とはあれの事だったのか…」

砦の上空に到着したグリフォン部隊からは、両手に抱えるくらいの大きさの石が次々と投下されていた。

俺がやった方法を早速試すとは、レオンの行動力には頭が下がる思いだ。

石の大きさは俺のよりは小さいが、数が多いので俺のやったのより破壊力はありそうだ。

砦の方でも、魔法障壁を張って必死に守ろうとしている様だが、数の前に脆く崩れ去っている。

砦も砦内にある建物も、落とされる石で壊されて行っている。

流石に砦の方は全て壊れてはいないが、砦内の建物は全滅だな…。

物資が建物内に保管されている様なら、レオンの目的は達成できたと言っていいだろう。


『エルレイさん、撤退します!』

『分かりました、殿は任せてください』

『よろしくお願いします』

マティアスから撤退の連絡があり、ルリア達にも下がるように伝えた。


『エルレイ、ちょっとこっちに来て頂戴!』

『分かった、すぐに行く!』

何か異常事態が起こったのかと思い、地上に向けて降りて行っているルリアを追いかけて行った!

「エルレイ、この遺体から杖を回収して頂戴!」

ルリアの横に下り立つと、そこにはルリアが倒した魔法使いの遺体が横たわっていた。

俺はルリアに言われた通り、遺体の手に握られていた杖を回収した。

「マスター、その指輪もだぜ!」

「これか?」

グールに言われた通り、遺体の指にはまっていた指輪も回収し、杖と共に収納魔法に収めた。

「他に回収する物は無いな?」

「えぇ、グール、他に無いわよね?」

「もう何も無いぜ!」

「じゃ戻ろう!」

「分かったわ!」

上で待っているリリーとロゼと合流し、撤退して行っているグリフォン部隊を追いかけて行った。


グリフォンの速度に追いつける魔法使いはいないのか、前線基地まで追撃される事無く無事に辿り着く事が出来た。

グリフォンから降りた兵士達は、作戦成功に歓喜していた。

そんな兵士達をよくやったと褒めながら、レオンが俺の所までやって来た。

「エルレイ、お前のやり方を使わせて貰った。感謝するぞ!」

「いいえ、上手くいったみたいで何よりです」

レオンは、俺の肩をバンバンと叩きながら感謝を伝えて来た。

レオンの力で叩かれると痛いが、それだけ嬉しかったのだろうと我慢する。

「エルレイの嫁たちの魔法も素晴らしかったぜ!」

レオンはルリア達の事も褒めてくれたので、俺も気分が非常に良くなり、叩かれた痛みなど忘れるほどだった。


「で、回収して来た物を見せてくれないか?」

「はい」

だから油断したと言う事では無いが、レオンの言葉に素直にうなずいてしまった。

俺達が地上に下り、遺体から敵の武器を回収していたのを見られていたのだろう。

仕方なく、収納魔法から回収してきた杖と指輪を取り出してレオンに見せた。


「エルレイ、これがどの様な魔法を発動させるのか分かるか?」

「えっと、今からグールに調べさせますので、少々お待ちください」

俺は懐からグールを取り出し、杖と指輪に添えた。

「グール、頼んだ」

「マスター、了解したぜ」

グールが魔法を使うと、魔剣の時と同じように杖と指輪から魔法陣が浮かび上がった。

「マスター、杖の方はフレイムランスをニ十回撃ち出す事が出来、指輪の方は飛行魔法を使う事が出来るぜ!」

「グール、それは魔法使いじゃなくても使えるんだな?」

「そうだぜ!魔石に魔力さえ込められていれば誰でも使用可能と言うのが、魔道具や魔剣の利点と言う事だぜ!」

「なるほど…」

レオンやルリア達もグールの説明を聞いて、回収して来た杖と指輪に興味を示していた。


「エルレイ、私が回収したのだから使って見てもいいわよね?」

「うん、危なくない所でなら…」

「分かっているわ!グール、使い方を教えなさい!」

「仕方ねーな。杖の方は撃ち出す方向に向けてフレイムランスだ。

指輪は指にはめてフライだぜ!」

「分かったわ!フライ!」

ルリアが指輪を使い飛びあがって行って、上空で杖を使って炎を撃ち出していた。


「特に強化されている訳ではない普通の魔法ね」

「そうか」

ルリアが下りて来て杖と指輪の感想を伝えてくれながら、杖と指輪を返してくれた。

「俺にも貸してくれ」

「いいですよ」

レオンに杖と指輪を渡すと、早速指輪を使って飛びあがった。


「難しいものだな…」

「はい、最初は上下から始めた方が簡単です」

「そうか」

俺もレオンに付き添い、飛び方の指導をしてやることになった…。

グリフォンに乗っているからか、レオンは意外と早く自由に飛び回れる様になったな。

「マスター、指輪の魔力がもうすぐ切れるぜ」

「レオンさん、急いで地上に降りててください」

「分かった」

レオンが地上に降り立つまで指輪の魔力が持ったので良かったが、もう少し早めに教えて貰いたかった…。


「魔法が使えない俺でも、空を飛ぶ事が出来た。

つまりミスクール帝国軍は、全員空を飛べ、魔法を撃ち出す事が出来ると言う事だ」

「恐ろしい事ですね…」

「はっはっはっ!その帝国軍を簡単に倒した奴が言う事か?」

「いや、まぁそうですけど…」

レオンは笑いながら、指輪と杖を返してくれた。

「あれ、これは要らないのですか?」

「ん、それはエルレイが持ち帰ったものだ、くれると言うのなら遠慮なく貰うぞ?」

「そうですね…」

俺は少し考え、杖と指輪をレオンに渡した。


「いいのか?」

「はい、僕には不要の物ですから」

「そうか、遠慮なく貰うぜ!」

レオンには借りがあるし、少しずつでも返して行かなくては、後でとんでもない事を言われそうだ。

レオンはグールに魔力の込め方などを聞いてから、杖と指輪を持って行った。

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