第二百七十二話 温泉
「で、だ、色々と話したい事は山ほどあるが、先ずは宴会だ!」
ルリア達を紹介する間も無く、そのまま宴会になってしまった…。
料理は美味しいし、ルリア達も満足しているからいいのだが、相変わらずお酒が飲めないのが残念でならない。
「エルレイ、そっちの嫁がエレオノラに勝ったそうだな?」
「はい、名前はルリアと言い、僕に匹敵するほどの魔法使いでもあります」
「国王陛下、ルリア・ヴァン・ラノフェリアです」
ルリアが立ち上がってお辞儀をすると、レオンは少し表情を歪めながら座る様に言った。
「国王陛下何て仰々しい呼び方は止めてくれ!エルレイの嫁なら、俺の事はレオンと呼んで貰って構わないぜ」
「…分かりました。レオン様、よろしくお願いします」
「で、だ、一つその腕前を俺に見せてくれ!」
レオンの提案に、ルリアは困った様は表情を見せながら俺に視線を向けて来たので、俺はルリアの剣を収納から取り出して手渡した。
女中さんが、すぐさま場所を空けてくれて、急遽宴会場でレオンとルリアが戦う事になった。
「エルレイさん、止めなくていいのですか?」
「大丈夫、レオンも手加減してくれるはずだ」
リリーが心配して声をかけて来たけれど、ルリアもレオンも傷付く事は無いだろう。
「行きます!」
ルリアは最初から全力で攻撃を仕掛けたが、レオンは子供をあやすようにルリアの攻撃を全て受け止めていた。
「参りました…」
「いい腕だ!エルレイの嫁で無かったら俺が欲しかった所だぜ!」
レオンが何と言おうと、ルリアは絶対に譲らないからな!
ルリアとレオンが戦っていた時間は短かったが、ルリアは大粒の汗を流していた。
俺はルリアから剣を受け取り、ロゼが手渡してくれた布でルリアの汗を拭ってあげた。
「ありがとう」
「うん、どうだった?」
「全く勝てるとは思えなかったわ」
「僕も同じだったからね…」
「そう、でもいい刺激にはなったわ!」
ルリアは負けたが、俺と同じように強者がいた事に歓喜している。
時間に余裕が出来て来たから、ルリアとここに通ってレオンに鍛えて貰うのもいいかもしれないな。
「今日はゆっくりと休んで、難しい話は明日しようぜ!」
レオンが気を利かせてくれて、俺達は与えられた部屋へと通された。
人数が多いので、部屋もかなり広くていいな。
和室の部屋に戸惑っているルリア達に、エンリーカ達が親切に説明していた。
随分と仲良くなったと内心喜びつつ、俺は畳の上に座って出されたお茶を飲んで一息ついていた。
やっぱり和室は落ち着くよな…。
時間も空いた事だし、帰ったらリアネ城に和室を作る事にしよう。
説明が終わったのか、ルリア達が戻って来て俺の周りに座って来たのだけれど、エレオノラだけ俺の背中から抱き付いて来た。
「レイちゃん、お風呂に入ろう!」
「うん、それは良いな!」
ここの温泉は疲れが癒されるからな。
ゆっくりと浸かって、今までの疲れを癒したいと思ったのだが…。
「アルティナ姉さんが、なぜついて来ているのですか?」
「勿論エルレイと一緒にお風呂に入るためだけれど?」
アルティナ姉さんは、それが当然だと言わんばかりの態度で平然とついて来ていた。
アルティナ姉さんだけでは無いな。
俺を風呂に誘ったエレオノラを始めとした四姉妹に加えて、ロレーナ、ユーティア、エルミーヌの姿も見られる。
「リゼから、ずっと二人でお風呂に入っていたと聞いたのよ。
それなら、私達も当然エルレイと一緒に入って問題無い筈よね!」
「そ、そうじゃ!私達はふ、ふ、夫婦なのじゃからな!」
「うっ、しかし、それは…」
「レイちゃん、僕達は気にしないから、さぁ服を脱いで一緒に入ろう!」
「そうですわ!」
脱衣所に着くと、皆から寄ってたかって服を脱がされ全裸にさせられてしまった。
まぁ、普段から部屋で着替えているのを見られているので今更だとは思うが、でもやはり育ちきっていない息子を見られるのは非常に恥ずかしい!
「エルちゃん」
「レイちゃん」
「「可愛い!」」
リディアとミディアは、息子をつつくかないで貰いたい…。
俺はリディアとミディアから逃げるように風呂に入って行くと、そこはとても広い大浴場だった。
広い浴槽の奥には岩山が作られていて、そこからかけ流しのお湯が注がれていた。
「凄いでしょう!」
「うん、凄い!」
エレオノラの声が聞こえて振り向くと、そこには引き締まった美しいエレオノラの裸があった。
エレオノラだけでは無いな。エンリーカ、アルティナ姉さん、リディア、ミディアの姿もあった。
「エルレイ、お姉ちゃんが洗ってあげるね!」
「ティナさん、ずるいですわ!私もエルさんを洗って差し上げますわ!」
俺はアルティナ姉さんとエンリーカから、体の隅々まで洗われてしまった…。
俺が体を洗われている時に、少し恥ずかしそうにしながらロレーナとユーティアとエルミーヌも入って来た。
うん…皆の裸はとても美しく、何処を見ても幸せな気持ちになれるな!
特にエルミーヌの胸の破壊力はすさまじいものがある!
しかし、エルミーヌはあまり胸を見られるのは嫌だとユーティアから教えられたし、出来る限り見ない様にしないといけない。
体を洗って貰った後、皆と湯船に浸かっていると、ロゼ、リゼ、ラウラに連れられて、ルリア、リリー、ヘルミーネも入って来た。
ルリアとリリーは恥ずかしそうに両手で体を隠しているが、ヘルミーネは堂々としているな。
まぁ、まだお子様体型だし、恥ずかしいと言う気持ちは無いのかも知れない。
ヘルミーネはラウラに体を洗って貰った後、俺の横に飛び込んで来た。
「ヘルミーネ危ないじゃないか!」
「誰も怪我はしておらぬし、私が治療してやるから問題無い!
それよりアルティナ、場所を代わってくれ!」
「仕方ないわね。順番だから、すぐに代わってあげるのよ!」
「分かっておる!」
俺の両隣は常に誰かが交代で居てくれていて、今はアルティナ姉さんとエンリーカだったのだが、ヘルミーネとラウラに代わった。
「いい湯だな!」
「うん、ここは温泉になっているからね」
ヘルミーネ、ラウラと温泉を楽しんでいると、ルリアとリリーが代わりに俺の隣に入って来た。
「あ、あまり見ないでよね!」
「エルレイさん、少し恥ずかしいですけど…一緒にお風呂に入れるのは嬉しいです」
「うん、僕も嬉しいよ」
リリーは恥ずかしそうにしながらも俺に体を寄せて来てくれているし、リリーの真っ白な肌に見惚れてしまうな…。
ルリアは体を横に向けて裸を見せてはくれなかったけれど、その背中が綺麗で思わず背後から抱きしめたくなった。
しかし、そんな事をすればルリアから殴られるのは分かっているし、周囲にいる皆も同様に抱きしめなくてはいけなくなるだろう。
いや…それはそれでありだな。
でも…ルリアは間違いなく怒って二度と一緒のお風呂に入ってくれない気がする。
折角ここまで進展して来たのに、また元に戻すような事はしたくないな。
皆と一緒にお風呂に入る事が出来たのだし、今は焦らず節度を保って、少しずつ親密な関係になっていこうと思う。
長湯をしてのぼせてしまったが、リリーが治療してくれたので問題は無い。
心も体も癒された。
ここは良い場所だし、レオンにお願いして別荘なんか作りたいな。
そうすれば休みごとに訪れて、皆とこのようにお風呂に入る事が出来る。
その為には、自由に使う事が出来るお金を貯めなくてはいけないな!
武闘大会でお金は入って来たが、俺が自由に使えるお金ではない。
教育施設も作らないといけないし、まだまだ俺の領地をよくするためにお金が必要だ。
また、新たにお金を稼げる物を作らないといけないな。
風呂上がりに皆と寛ぎながら、新たに作る物を思案し続けていた…。
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