第二百六十七話 難民問題解決の祝賀パーティー
ネレイトのアドバイス通り、俺の領地の貴族達に要望書と将来展望書の提出を求めると続々と書類が届き、連日書類の審査に追われる事になっていた。
「エルさん、これは全然駄目ですわ!こちらは修正すればよくなりそうですので、再提出を求めてくださいな!」
「うん、ありがとう」
しかし、エンリーカが手伝ってくれたので大いに助かっているし、俺より処理する速度が速い…。
レオンが役に立つと、自信を持って言うはずだ。
その時は親馬鹿なのかとも思っていたのだが、すぐにでも謝罪したい気持ちでいっぱいだ。
エレオノラは剣技に優れていて、ルリアと一緒に訓練している。
ルリアも良い相手が出来たと喜んでいるし、そのうち俺が勝てなくなりそうで怖い…。
リディアとミディアも、料理の方で頑張ってくれている。
俺も四人に負けないように、頑張らなければならないな!
と言う事で、公爵の仕事としてお城にある俺の執務室に来て見たのだが…。
「ア、アリクレット公爵様、大変申し訳ございません!」
インリートに会うなり、頭を下げてられて謝罪されてしまった…。
理由を問いただすと書類の束を手渡され、俺はそれを読む事にした。
「…これは僕がやらなくてはならないのか?」
「は、はい、国王陛下の許可も出ております…」
「そうか…」
思わず書類を破り捨てたくなってしまったが、目の前で恐縮しているインリートを見るとそんな事は出来ないな。
書類の内容は、よりにもよってポメライム公爵が支配する領地の街道整備を、俺が行わなくてはならないと言うものだった。
暗殺者を仕向けて来るような奴の所の整備を、なぜ俺がしなくてはならないんだ!!
考えれば考えるだけ怒りがこみあげて来る!
「わ、私が事前に対応していればこのような事にならなかったのですが、た、大変申し訳ございません!」
「いや、インリートのせいでは無いから気にしないでくれ」
怒りが表情に現れていたのか、インリートに再び謝罪させてしまった。
仕方が無い…非常に不本意だが、国王が許可しているのならやらなくてはならないだろう。
それにお金は間違いなく入って来る。
そう、お金の為だ…。
ポメライム公爵を自由にさせない為には、どうしてもお金が必要だ!
今はお金を貯め、ポメライム公爵の勢力を衰えさせようと心に誓った。
インリートからお城の情報を仕入れた後、国王に挨拶にやって来た。
「すまんの」
まだ怒りの表情が消えていなかったのか、国王からも謝罪を受け、俺は慌てて表情を笑顔にした。
「いいえ、ソートマス王国を豊かにする為であれば、喜んで働かせて貰います」
「うむ、頼むぞ」
「はい」
これは本心からそう思っている。
戦争に行くよりかはまともな仕事だ。
ただ、場所が気に入らないだけで、仕事をする事は嫌いではない。
国王、それから王族達のご機嫌を窺い終えて、今日も精神的に疲れてリアネ城へと帰って来た。
そう言えば、一緒に着いて来ていたユーティアは一切疲れた表情を見せていないな。
まぁ、ユーティアは会釈をしていただけで会話には参加していなかったし、普段からお茶会やパーティーに参加しているから慣れているのもある。
面倒だが、俺もパーティーに参加して慣れて行った方が良いのかも知れないと思った…。
街道整備を行う時期にはまだ余裕があるので、今のうちから少しずつ準備しておく事にした。
嫌な仕事は、出来るだけ早く片付けたいからな…。
リアネ城では、パーティーの準備に大忙しとなっている。
俺はと言うと、執務室で挨拶の原案を考えている最中だ。
これが無ければ、パーティーは何度開催しても良いのだがとも思う…。
アドルフに考えさせることも出来るが、仰々しい挨拶文になるんだよな。
そのまま話すと俺が恥ずかしいので、頑張って自分で考えるしかない。
エンリーカ達は、初めてのパーティーだと言う事で大はしゃぎをしていた。
「やはり着物にするべきでしょうか?」
「僕はドレスを着ようと思っているよ!」
「着物?」
「ドレス?」
「「どっちがいいかな?」」
四人で服を並べて、何を着ようかと迷っている姿は見ていて微笑ましい。
着替えを覗く訳にはいかないので、長く見ていられないのが残念だ。
ルリア達は既に着るドレスが決まっているのか、皆で集まって話し合いをしているみたいだ。
俺もそこに参加しようかと思ったのだが、邪魔だから部屋から出て行けと言われてしまった…。
仕方なく、俺は久しぶりに一人で執務室に向かい仕事に励むのだった。
前日から、俺の領地の貴族達が続々と訪れていて、リアネ城は賑やかになっていた。
俺は王都の屋敷に向かい、そこに来ていた大勢の男女をリアネ城へと連れて来た。
女性は貴族の妻かリアネ城の使用人として働いて貰う事になり、男性はリアネ城とヴィヴィス男爵の使用人となる。
ヴィヴィス男爵の所は、難民を受け入れた事で人手が足りなくなっていて、増員は急務だった。
ヴィヴィス男爵が到着次第、妻になる予定の女性と面会させて見た。
「アリクレット公爵様、私にこの様な美しい女性を紹介して頂き、誠にありがとうございます!」
「うん、ヴィヴィス男爵の働きに対しての褒美だ。
もし、気に入らないのであれば無理にとは言わないが?」
「いいえ、大変気に入りました。私の妻として迎え入れ、幸せにしてあげたいと思います」
「そうか、これからも領地は大変だろうが、引き続き頑張ってくれ」
「はい、お気遣い感謝いたします!」
ヴィヴィス男爵は、ネレイトが用意した女性を大層気に入った様子だ。
まぁ、ヴィヴィス男爵の正妻と同じく巨乳だからな…。
ユーティアは、ヴィヴィス男爵の好みまで調べた上でこの女性を紹介したのかと思い、感心と少し恐怖を感じてしまった。
俺の好みも調べられてないよな?
まぁ、俺の婚約者は色々いるからそれは無いだろうと思いたい…。
ヴィヴィス男爵には他に、男性の使用人を三名とメイドを二名与えた。
これで多少は忙しさも軽減されるだろうと思う。
そして翌日、貴族達を集めたパーティーが開かれた。
今回の主役は俺では無く、ヴィヴィス男爵なのは間違いない。
俺は挨拶を終えた後、舞台の上にヴィヴィス男爵を呼ぶと、緊張した面持ちのヴィヴィス男爵が舞台に上がる際に盛大に転んだ…。
「し、失礼しました!」
「怪我はしていないか?」
「は、はい、大丈夫です!」
俺が駆け寄って声を掛けると、勢いよく立ち上がっていた。
まぁ、怪我をしている様では無いが、念の為に治癒魔法を掛けてあげた。
集まった貴族達からは笑い声が聞こえて来るが、このくらいの失敗くらい誰にでもある事だろう。
俺だって、国王の前に立った時は噛んだのだからな…。
でも、笑われた事でヴィヴィス男爵の緊張も解れているみたいだし、咎めるつもりはない。
「ヴィヴィス男爵は難民問題において、他の貴族領に被害が及ばないよう粉骨砕身の努力をしてくれた。
そのお陰で、皆の領地が守られた事は事実だ。
そして今もなお、領民となった者達への対応に追われていて、今日は僕が無理を言ってここに来て貰った次第だ。
何故そこまでして来てもらったかと言うと、ヴィヴィス男爵に褒美を与える為だ。
僕は優秀な者には協力を惜しまないし、働いた者には十分な褒美も与える。
皆の領地を守ってくれたヴィヴィス男爵に拍手を送ってあげてくれ!」
集まった皆から拍手が送られ、ヴィヴィス男爵は照れながらも笑顔を見せてくれていた。
緊張している様子はもう見られないな。
ヴィヴィス男爵には褒美として昨日会わせた女性を皆の前で渡し、女性はヴィヴィス男爵にエスコートされながら舞台から降りて行った。
「さて、ここからは皆に提出して貰った要望書の採用を発表したいと思ったが、先ずは用意した食事を楽しんでくれ」
折角用意した料理が冷めるよろしくないし、早く食わせろと言う視線がヘルミーネ当りから注がれているからな…。
俺もルリア達と食事を楽しみ、その後で採用の発表をアドルフと共に行った。
採用された者は喜んでいたが、不採用だった者は不満を漏らしていた。
しかし、不採用の理由を記した書類を手渡すと、皆青ざめて不満を言う者はいなくなっていた。
あの書類は、エンリーカが遠慮なく駄目出ししたのをそのまま書いたからな…。
少し厳しいかとは思ったが間違いではなかったし、次はまともな要望書の提出を期待出来るだろうと思う。
全ての要望に応えるのは大変だが、領地の発展につながるのなら努力するつもりだ。
何としても領地を発展させて、ポメライム公爵より優位に立てる様にならなくてはいけないからな!
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