第二百五十二話 レオンフィスとの会談
≪レオンフィス視点≫
俺が一人で酒を楽しんでいると、ソートマス王国に行っていたマティアスが戻って来た。
「親父殿、ただいま戻りました」
「ご苦労、で、どうだった?」
「噂通り…いえ、噂以上の魔法使いかと…まさか、ここまでグリフォンに頼らず飛んで来る事が可能とは思いませんでした」
「大金を払うのだ、そのくらいは簡単にやって貰わなければな!
それよりも、だ、お前から見て奴は強そうに見えたか?」
「それが…妻を抱きかかえて飛んで来ており、表情はだらしなく緩んでいて隙だらけでした」
「で、斬り掛かってみたのか?」
「いえ、そこまではしませんでしたが、やった方が良かったでしょうか?」
「いや、俺の目で確かめた方が面白い!」
「親父殿!その役目、私にやらせてください!」
「いや、俺がやる、手出しをするなよ?」
「はぁ~、分かりました」
マティアスとの話を終えた所で、マティアスの隣にスッとデリアが現れた。
「っ!デリアか…驚かさないで下さい!」
「マティアス様、気が小さすぎ…。
御屋形様、気付かれました…」
「はっはっはっ、デリアの気配に気づくとはやるではないか!」
「御屋形様、監視を続けますか?」
「いや、もういい、休んでいいぞ」
「承知!」
デリアは現れた時と同じように、スッと消えて行った。
「マティアス、お前も休め」
「はい」
俺は酒を傾けながら、明日の事に思いを馳せていった…。
≪エルレイ視点≫
翌朝目が覚めると、リゼはまだ布団の中にいて俺を見つめていた。
普段なら一緒に寝た時も、リゼ達メイドは俺より先に起きてベッドから抜け出ているから、残念に思っていたんだよな…。
目覚めた朝に、好きな女性が隣にいると言うのは凄く安心できる。
帰ったら、俺が起きるまで隣で寝ているようにと、お願いしてみようと思う。
「旦那様、おはようございます」
「リゼ、おはよう」
リゼは朝の挨拶をすると布団から抜け出し、浴衣から着替え始めた。
俺も布団から抜け出し、リゼの着替えが終わるまでにグールと話をする事にした。
「グール、僕が寝ている間に誰か来なかったか?」
「マスター、誰も来なかったぜ!」
「そうか、昨夜天井にいた者の魔力は覚えているか?」
「勿論だぜ!近づいてきたら、マスターに知らせればいいんだろ?」
「うん、その時は念話で頼む」
「了解したぜ!」
敵意は無かった様だし、ただの監視をしていただけなのだろう。
お互いに信頼関係を築けている訳ではないし、他国の魔法使いを呼んだのだから警戒して当然の事だな。
でも、監視されるのは好きではないので、今後も近づいてきたら排除しようと思う。
リゼの着替えが終わり、俺も着替えさせて貰った。
寝室を出て、リゼと座椅子に座って寛いでいると、女中さんが朝食を用意して来てくれた。
朝食は卵かけご飯に焼き魚にお味噌汁のメニューに感動しつつ、和食を伝えてくれた英雄クロームウェルに感謝した。
朝食を頂いた後、俺とリゼは女中さんに連れられて部屋を出て、木の廊下を歩いて行った…。
「こちらでございます」
女中さんに案内されて着いた所は、かなり大きな板張りの広間となっており、大勢の男性が左右に座って待っていた…。
俺とリゼは男性達が座っている中央を歩き、一番前に用意されていた座布団に座る様にと言われて座った。
『マスター、正面の上に五人、後ろに五人いるぜ!』
『そうか、恐らく主人の護衛で、殺気は無いのだろう?』
『ねーぜ!』
昨日のもそうだが、屋根裏に隠れているとか忍者みたいだな。
忍者がいるのなら、是非とも会って見たいものだ!
「御屋形様、
まるで時代劇の様な呼び出しがかかると、男性達が一斉に平伏していた。
俺とリゼはソートマス王国を代表して来ているので、誰が出てこようと平伏する必要はないので、姿勢を正して正面を見ていた。
一段高い板の間に、赤い派手な袴姿の男性が現れて俺の正面にどかっと胡坐をかいて座った。
「よう!俺がキュロクバーラ王国国王、レオンフィス・フィル・キュロクバーラだ!」
「初めまして。僕はエルレイ・フォン・アリクレットです!」
国王のぶっきらぼうな物言いに驚いたが、堂々と挨拶をする事が出来たと思う。
国王はそのままじっと俺の目を睨んでいて、俺も負けじと目をそらさず見続けた…。
国王が口角を上げてニヤリと
「リゼ、動くな!」
「はい、旦那様…」
国王が抜いた刀は俺の首元で寸止めされていたが、リゼが俺に刀が向けられた事で魔法を使おうとしていた!
俺は冷静にリゼの行動を止め、国王を睨みつけた!
「なぜ貴様は避けない?」
国王は嗤ったまま俺に質問して来た。
「反応出来なかったから、と言えば納得してくれますか?」
「いや、貴様は俺が刀を抜く瞬間を見逃さなかった。普通攻撃されたら、逃げるか防御するかの反応くらい誰でもするもんだ」
言い逃れは出来ないか…。
「正直に話しますと、殺気が無かったからと、身を守っているからです。
そのまま刀に力を入れて、僕の首を
「そうかよっ!」
俺がそう言うと、国王は遠慮なく刀に力を入れて俺の首を刎ねに来た!
いや…普通遠慮するだろう?
本当に力を入れて来るとは思っても見なかった…。
だから、俺は刀に押されて後ろに倒れ込む事になってしまった。
薄い障壁の膜で守っているから刀で首が斬り落とされる事は無いが、衝撃はそのまま俺の体に伝わって来るからな…。
俺は体を起こし、再び同じ位置に座りなおした。
「納得して貰えましたか?」
「あぁ、納得した!で、だ、俺に協力し、ラウニスカ王国を滅ぼしてくれるのか?」
国王はクルリと刀を回して納刀し、俺の両肩に手を掛けて問いただして来た。
「協力します。国王陛下と睨み合いする為に来たのではありませんので!」
「はっはっはっ!いいぞ!貴様は俺の仲間だ!俺の事をレオンと呼ぶ事を許してやる!」
「では、遠慮なくレオンさんと呼ばせて頂きます。僕の事もエルレイと呼んでください」
「分かった。で、エルレイ、早速ラウニスカ王国を滅ぼす話をするぞ!」
「はい!」
国王、いや、レオンに気に入られた事で、上手く協力関係を結ぶ事が出来たのだろう。
でも、俺がレオンと呼んだ時、後ろにいた男達から殺気が飛んで来ていたな…。
自分達の国王が認めたとはいえ、いきなりやって来た他国の者が名前で呼べば怒るのも当然だろう。
レオンがあれだから、部下達も血の気が早そうだ…。
今更呼び方を変えられないし、喧嘩を吹っ掛けられてきたらやり返すだけだな…。
俺達は別の二十畳くらいの部屋へと移動し、レオンとその部下達十五人でラウニスカ王国を滅ぼす話し合いが始められる事になった。
床板の上に地図が広げられていて、現状の説明が行われた。
俺が今いる場所はキュロクバーラ王国側の山の上で、グリフォンの出撃拠点と言う事だ。
ラウニスカ王国側の砦は地上部隊が制圧済みだが、街や村に関しては放置しているとの事だった。
「ラウニスカ王国軍は、街や村に
俺が尋ねると、マティアスが説明してくれた。
「そうです。私達としては街や村を攻撃する事が出来ず無視して進軍しています」
「そうなのですか?僕の領地に戦火から逃れた人たちが多く来て困っているのですが…」
「あぁ、その事でしたら、街や村を襲っていると言うか、ラウニスカ王国軍が戦うために様々な物資を強制徴収しているからです。
そもそも、ラウニスカ王国が戦争が始まって以降、軍に対して物資を供給していない事が問題なのです」
「えっ!?そんな事をしたら、国を守れないのでは…」
「普通はそう思うのが当然ですが、ラウニスカ王国は内乱の後、軍より能力者を優遇していまして、王都の守りからも軍を排除し能力者だけで守っているのです。
その他の地域は、独立した軍が独自に領地を守っているにすぎません」
「それでよく国としてやって行けてますね…」
「反乱を起こそうとしても、能力者に頭を殺されますから…」
「なるほど…」
暗殺者を
リゼが話を聞いて怒りに満ちた表情を見せていたので、リゼの怒りを鎮めて貰おうと手を握ってあげた…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます