第二百五十話 キュロクバーラ王国へ
ルリアの後は、リリー、ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ロレーナ、ユーティアともキスをした…。
当然、ロゼ、リゼ、ラウラ、エルミーヌにもキスをしてあげた。
ここまで苦労してきたが、やっと報われた気がする…。
もう死んでもいいのではないかと言うくらい幸せな気分になってしまったが、もっともっと幸せになって行かなくてはならない!
もう戦争になんて行きたくないな……そう思ってしまっても仕方が無いだろう!
今夜はヘルミーネと一緒に寝る予定だったが、ヘルミーネが…いや、皆が気を利かせてくれてルリアと寝る事となった。
「さっきのは忘れなさいよね!」
「いや、絶対忘れないよ。それからごめん、僕からしてあげるべきだった…」
「ふんっ、もういいわよ!おやすみ!」
男の俺からキスをしてあげなくてはならなかったのだが、ルリアに嫌われたくなかった…。
親が決めた婚約者だが、ルリアとは長い付き合いになるのだし、俺が勇気を出すべきだったと後悔していた。
でももう過ぎた事だし、これからは俺が行動を起こして行かなくてはならない。
横になって俺に背中を向けているルリアを、後ろから抱きしめた…。
ルリアは少し
俺はこのまま、ルリアを抱きしめながら幸福感に包まれて眠りについた…。
翌朝目を覚ますと、いつもの様にルリアが俺を抱き枕代わりにしていた。
俺が背中から抱きしめて寝たはずだったが…まぁいいか。
ルリアの幸せそうな寝顔を見ているだけで、俺も幸せになってくる…。
ルリアを起こさない様に抜け出し、ベッドの横で待ち構えていたロゼから着替えさせてもらう。
今日はいつもの貴族服とは違い、俺とリゼは軍服に着替え、グールに剣になってもらい腰に差した。
リゼがメイド服を着ていない事には少しだけ残念に思うが…戦場でメイド服は目立ってしまうから仕方がない。
朝食を食べた後、俺とリゼは玄関で皆から見送られる事となった。
「エルレイ、婚約者を増やさず帰って来たら、ラウラが作った魔法を教えてあげるわ!」
「本当か!?約束だからな!」
「えぇ、約束よ!」
よしっ!
ルリアが魔法を教えてくれると約束をしてくれた!
婚約者を作らないと言う条件だが、これは非常に簡単だろう。
戦争に行くのに、そんな事をしている暇はないのだからな!
これで、新しい魔法を教えて貰えることが確定したな!
俺は嬉しくなり、戦争をさっさと終わらせて早く帰ってこようと思った。
「エルレイさん、気を付けて行って来て下さい」
「エルレイ、帰って来たらお姉ちゃんがまたキスしてあげるからね!」
「エル、頑張ってくるのだぞ!」
「み、皆の事は私が守るから、あ、安心して行って来るのじゃ!」
「…」
「行って来る!」
俺はリゼと共にリアネ城から出かけて行った。
ミエリヴァラ・アノス城の玄関に馬車で到着すると、俺とリゼは近衛騎士に連れられて城の裏手にある近衛騎士の訓練場へと連れて来られた。
「あれがグリフォンだな」
「はい、その様です」
そこには、鷲の様な鋭い顔と大きな白い翼に、獣の丈夫な下半身を持ったグリフォンが五頭大人しく地面に座っていた。
グリフォンの周りには、時代劇に出て来るような袴姿をした人達がこちらを見ていた。
日本人?いや、ちょんまげは結っていないので、英雄クロームウェルが伝えた衣装なのかもしれないな。
「アリクレット侯爵様、私達はこれ以上あの鳥に近づくなと言われておりますので、後はよろしくお願いします」
「分かった」
近衛騎士達俺から離れ、少し下がって行った…。
グリフォンが怖いのかもしれないな。
横に立っている袴姿の人達から想像するに、体長四、五メートルと言った所だろう。
グリフォンが人を食べるのであれば、俺だと簡単に飲み込まれてしまうだろう。
グールの話が本当であれば魔物では無いと言う事だったし、驚かせないようにゆっくりと近づいく事にしよう…。
「そこで止まってください!」
俺とリゼがグリフォンまで三メートルの距離まで来たところで、袴姿の男に止められた。
俺とリゼが近づいた事で、グリフォンが興奮しているように見える。
そして、五頭のグリフォンの側についていた男達が、グリフォンを落ち着かせるように撫でているな。
俺は餌じゃないから、飛びかかって来ないで貰いたい…。
そう願っていると、男が一人近づいて来た。
「初めまして、私はマティアスと申します。
失礼ですが、貴方が英雄の生まれ変わりと言われている魔法使いですか?」
「はい、エルレイ・フォン・アリクレットと申します。英雄の生まれ変わりではありませんが…魔法使いです!」
マティアスと名乗る男は、礼儀正しい挨拶をした後、じっくりと俺の事を眺めて呆れた表情を見せていた…。
「話には聞いていましたが…本当に子供なのですね…」
「はい…すみません…」
「あっ、いえ、失礼しました」
マティアスは謝罪してくれたが、その反応は間違ってはいない。
戦争に協力すると言われて子供が来たら、俺でも呆れてしまうだろう。
ソートマス王国は本当に協力する気があるのかと、文句を言われても仕方がないと思う。
俺としては、文句を言われない様に実力を示すしかない。
「アリクレットさん、後ろの方も連れて行かれるのですか?」
「はい、彼女は僕の妻リゼです。リゼも魔法使いなので不都合が無ければ連れて行きたいと思っています。
それから私の事はエルレイと呼んでください」
ルリアから、リゼの事を妻と呼ぶようにと言われていた。
キュロクバーラ王国で、使用人のリゼが不当に扱われるのを回避するためだ。
妻と言う事にしていれば、食事時も離れる必要が無く安心できるからな。
それに、将来的にはリゼも俺の妻になるのだから間違いではない。
ただ…リゼだけを妻として紹介するのに、少しだけ罪悪感を覚える。
まぁ、今回だけだろうし、皆が不満に思わないかだけが心配だな…。
「分かりました。エルレイさん、リゼさんを連れて行く事には問題はありません。
ですが、グリフォンは二人しか乗れませんので、別々に乗って貰う事になりますけれど、よろしいでしょうか?」
「そうですか…」
グリフォンには乗りたかった!
しかし、リゼと別れて乗るのは嫌だし、リゼも嫌だと思うだろう。
一応、リゼに確認して見ようと思う。
「リゼ、グリフォンに乗るか?」
「あの…旦那様…と離れたくはありません」
「分かった…」
いい!凄くいい!
リゼが恥ずかしそうにしながら、旦那様と呼んでくれる事に感動していた!
リゼは妻と言う設定なので、いつもの様にエルレイ様とは呼べない。
なので、リリーの様にエルレイさんと呼んでくれるのかと思っていたら、まさかの旦那様!
感動に浸っていたいところだが、マティアスに返事をするのが先だな…。
「マティアスさん、僕と妻はグリフォンに乗らずに飛んで行く事にします」
「えっ?ここからかなり遠いですし、グリフォンの飛ぶ速度は普通の飛行魔法より早いですよ?」
「大丈夫です。着いて行けますので遠慮なくグリフォンを飛ばせてください」
「そう…ですか…」
マティアスは首をかしげながらも、俺達から離れてグリフォンに跨った。
「エルレイさん、しっかりと着いて来てください!」
マティアスは大声でそう伝えて来ると、グリフォンを大空へと舞い上がらせた!
「格好いいな!」
「はい、旦那様」
グリフォンに乗れなかったのは残念だが、俺はリゼを抱き上げて飛ぶ方が幸せだ。
リゼも、いつも以上に抱き付いて来てくれている。
俺もグリフォンを置いて行かれない様に、空へと旅立って行った。
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