第二百二十九話 武闘大会本戦 男性部門 その一
女性部門がカリナの優勝で終わった夜寝る前に、やっとルリアに会うことが出来た。
夕食前までは貴族の送迎等で忙しかったし、夕食時はイクセル第二王子に捕まっていた…。
ルリアもラノフェリア公爵家と夕食を共にしたそうだし、お互い合う機会が無かったんだよな。
カリナには会うことが出来て、優勝を祝ってあげることは出来た。
後日、祝勝会を開こうかと考えてはいるが、カリナが遠慮するのは目に見えている。
祝勝会と言うのは伏せて行った方が良いな…。
それより今は、ルリアを祝ってあげないといけない。
「ルリア、準優勝おめでとう!素晴らしい戦いだったよ!」
「ありがとう…」
ルリアは少し恥ずかしそうにしながらも、素直に喜んでいるみたいだった。
惜しくもカリナに負けたのだから、もっと悔しそうにしているかと思ったのだがな…。
あの試合はどちらが勝ってもおかしくは無かったし、力を出し切った戦いでルリアも納得していると言う事なのだろう。
俺はルリアにそっと近寄り抱きしめてあげた。
抵抗されるかとも思ったが、疲れているのか俺を引きはがそうとはしなかった。
「ルリア、お帰り…」
「えぇ、ただいま…」
「ルーティアの黒髪姿も美しかったけれど、やはり、ルリアの赤い髪の方が美しくて僕は好きだな」
「そう…」
抱きしめているからルリアの表情は見えないが、短い言葉から喜びを感じ取れた。
いつもならアルティナ姉さんが邪魔してくるのだけれど、今日だけはアルティナ姉さんを始めとして皆が俺とルリアの抱擁を見守ってくれている。
俺は三十分でも、一時間でもルリアを抱擁し続けていたいが、ルリアが恥ずかしかったのか俺から離れて行ってしまった…。
以前なら、抱きしめただけで殴られていた事を考えれば、ルリアとの仲が進展したと思う。
ルリアとキスできる日も近いのかもしれない…。
ルリアの母アベルティアからも、早くキスくらいするようにとは言われている。
それに、アルティナ姉さんとユーティアからはキスをせがまれたりするし、リリーとロレーナからはしてほしそうな視線を向けられたりもする。
ヘルミーネはまだ子供だから、頭を撫でるだけで喜んでくれるのが幸いだな。
アルティナ姉さんは元々だが、ユーティアが積極的なのには少し驚いた。
お茶会などで、そういった話を聞く機会が多いからかもしれないし、俺もキスする事には抵抗は無い。
むしろ最近、積極的にやりたいと思う程だ…。
ラウラに始まり、エルミーヌと言う巨乳を毎日拝んでいれば、性欲に目覚めない方がおかしいだろう。
今はまだ理性で押さえられているが、そのうち暴走するのではないかとも思い始めて来た。
そうなる前に、ルリアとキスをしなくてはならないが…強引に迫る訳にはいかない。
もう少しルリアとの仲を深めて、キスしてもいい状況を作り出して行かなくてはならないだろう。
今日の抱擁も、そのための第一歩だ。
毎日…は無理かもしれないが、少しずつルリアとのスキンシップを増やして行く事にしようと思う。
男性部門の本戦が行われる朝を迎えた。
男性部門には身内から、ラルフとトーマが本選に出場する事になっている。
予戦を見ていた限りでは、男性部門には強者がそろっているので、ラルフとトーマが勝ち上がって行くかは微妙な所だ。
とは言え、厳しいバトルロイヤルを勝ち抜いたのだから、二人とも十分強い事は証明されているので頑張って貰いたいと思う。
闘技場に着くと、本戦を戦う選手の紹介が始まっており、観客席は大いに盛り上がりを見せていた。
貴族達の送迎を行っていたので少々遅れてしまったが、戦いが始まったのではないので問題は無いだろう。
「上から見るとこんな感じなのね」
「うん、舞台側の方が迫力はあるかも知れないが、試合はここからの方が見やすいと思う」
「そうね」
ルリアは俺の隣に座って、貴賓席からの観戦となる。
髪の色も違うし観客席から離れているので、昨日舞台で戦ったルーティアとは誰も気付く事は無いだろう。
カリナには申し訳なかったが、リアネ城に残って貰っている。
昨日優勝したカリナが、貴賓席側でメイド姿なのを見られてしまえば、女性部門に参加した選手から賞金を渡すつもりは無かったと文句を言われかねない…。
一番金額の高い優勝と準優勝の賞金を、俺の身内が受け取ったからな…。
正々堂々と勝負した結果とは言え、納得しない者も出て来るだろう。
不要な問題を抱えない為に、カリナには留守番をして貰っていると言う事だ。
ニーナは多分、トリステンと一緒に闘技場で警備に当たっているはずだ。
警備隊員は普通の平民と同じ扱いなので、武闘大会に出場して優勝賞金を受け取っても何も問題にはならないはずだ。
警備隊員の中からも、武闘大会に出場したいと希望した者はニーナだけでは無かった。
しかし、警備隊の人数を増やしたとはいえ、不測の事態に備えるためには数を減らしたくは無かったので、今回は辞退してもらうよう要請していた。
次に行われる武闘大会からは、警備隊の希望者にも出場の機会を与えたいとは思っているが、全員を参加させては警備に穴が開く恐れがあるので、人数制限をかける必要はあるだろうけどな。
「武闘大会男性部門本戦を開始します!」
キャセラの美しい声が闘技場に響き渡り、戦いが始まった!
≪トーマ視点≫
本戦を前にしてドキドキして来たっす。
一方、おれと同じく本戦出場を決めたラルフは余裕の表情っす。
今も、エルレイ様達がいる貴賓席の方を見て、手を振っているっす。
手を振っている相手は、エルレイ様の後ろにいるエレンっすけどね…。
恋人のいないおれとしては、羨ましすぎるっす。
「ラルフはエレンのために戦うっすよね?」
「それもあるが、エルレイ様に認めてもらうために戦うつもりだぞ」
「それはおれも同じっすけど、やっぱりエレンに格好いい所を見せたいと思うっすよね?」
「そうだな!」
ラルフは嬉しそうにうなずいたっす。
ラルフは自信満々だし、エレンの為に勝ち上がって行くのは間違いないっすね…。
おれも好きな女子がいれば、頑張ろうと言う気にもなったっすけどね…。
俺もラルフと同様に、エルレイ様に認めて貰うために頑張ろうとは思ってるっす。
でも、好きな女の子の前で頑張ろうと言う気持ちとは、ちょっと違うっすよね?
こう…やる気が何倍にも膨れ上がると言う感じっすかね?
おれに好きな女の子がいないから、正直なところは分からないっすけれど…。
「トーマはマリーの事が好きでは無かったのか?」
「前はそうだったっすけどね…ラルフもマリーがおれたちに気が無い事は知ってるっすよね?」
「まぁな…」
マリーの事は、エルレイ様に助けてもらう前は、おれとフリストが狙っていたっす。
でも、エルレイ様に助けられた後は、マリーがエルレイ様しか見てないのは誰が見ても分かるっす。
エルレイ様がマリーの右手を元通りにしたっすからね…。
あれでマリーがエルレイ様に対して、感謝以上の感情を抱くのは普通だと思うっす。
ただし、その想いが報われないのも分かっているっすけどね…。
「そう言えば、アドルフさんが正式採用になれば結婚相手を探してくれると言っていたな」
「それは本当っすか!?」
「あぁ、間違いない。ただし、優秀でなければいい相手を選べないとも言っていたな。
武闘大会で上位に食い込むことが出来れば、アドルフさんも優秀だと認めてくれるのではないか?」
「そうっすね!やる気が出て来たっす!」
「共に勝ち上がってエルレイ様とアドルフさんに優秀だと認めて貰おう!」
やっぱ可愛い女の子と結婚したいっすから、頑張って勝ち上ろうと思ったっす!
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