第二百二十一話 マルティナ
≪マルティナ視点≫
ルリアの成り上がり婚約者が開催する武闘大会を観戦するため、私まで連れて来られる事になってしまったわ。
野蛮な武闘大会など見たくはありませんけれど、ルリアが出場する事が教えられましたので、姉として妹の戦う姿を見て差し上げなくてはなりませんわね。
話には聞いておりましたけれど、本当に一瞬で遠くまで移動できるのですわね…。
お父様が、成り上がりを重宝なされる理由が良く分かりましたわ。
私の下僕であれば、便利な足代わりとして使って差し上げましたのに、残念ですわ…。
成り上がりの住むお城は、アイロス王国から奪ったものですわね…。
ミエリヴァラ・アノス城よりかは見劣り致しますが、素晴らしいお城に違いありませんわ。
この城に住んでいるルリアが羨ましくて嫌味を言ってしまいまい、お母様から睨まれてしまいましたわ…。
お母様は私の味方をしてくださいますが、最終的にはお父様の方を優先いたしますわ。
ですので、私がお父様にお叱りを受けない様にと、
私も少し言い過ぎたと思いますし、反省しなくてはなりませんわね。
城内に入るとユーティアとリリーが出迎えて下さり、案内をして頂きましたわ。
ユーティアは相変わらず話しませんので、実質リリー一人で案内をしてくれていましたわ。
リリーはラノフェリア公爵家の養女としてお父様が迎え入れたのですが、私はまだ妹とは認めておりませんわ。
そもそも、養女となって直ぐに、成り上がりの婚約者としてルリアと共にいなくなったのですから、妹として見ることは出来ませんわよね。
戦争が終わった後、短い期間だけルリアと共に帰宅しておりましたが、その際もルリアがリリーを庇い、殆どリリーと話す機会はありませんでしたわ。
私も理由はどうであれ、お父様がお決めになった事にずっと反対していく事は不可能なのは分かっておりますわ。
ですので、機会があればリリーともお話ししたかったのですわ。
今はルリアがおりませんので、リリーとお話しできる機会が訪れるかも知れませんわね…。
城内の案内をして頂き、私が過ごす部屋を与えられましたわ。
多くの貴族が訪れていると言う事もあり、エクセアと同室ですわ。
エクセアとは普段からよくお話ししますし、気心も知れた仲ですので、気を使わずに済みますわ。
早速二人でバルコニーにあるテーブルの席に座り、紅茶を頂きながら寛ぐ事にしましたわ。
「マルティナ姉様、先程の発言はエルレイが怒らなかったから何事も無く済みましたが、一つ間違えれば問題に発展してもおかしくはなかったですよ」
「えぇ、分かっておりますわ。ですが、思わず口から出てしまいましたの…」
「マルティナ姉様の悪い癖です。結婚までに直した方が良いと思います」
「頭では理解しておりますわ…」
お兄様にも言われましたから気を付けてはいるのですが、どうしても考える前に口から出てしまいますの…。
エクセアの言う通り結婚も近い事ですので、早めに直す努力をしなくてはいけませんわ。
「流石と言いましょうか、眺めはよろしいですね」
「そうですわね」
エクセアが気を使い、話題を変えてくださいましたわ。
冬が近づいて来ている時期ですので風が少し冷たく感じられますが、日の光で温められておりますし程よいくらいですわ。
そして、バルコニーから眺める景色は素晴らしく、紅葉で赤く染まりつつある山々の景色が美しいですわ。
紅茶も一段と美味しく感じられますわね。
ルリアは、四季の風物を楽しむと言う事をしませんでしょうし、やはりルリアには勿体ない住まいだと思いましたわ。
エクセアとの楽しいお茶会を終えまして、晩餐会に向けての準備に取り掛かりましたわ。
「エクセアは、何色のドレスに致しますの?」
「黄色と水色、どちらにしようか迷っている所です」
「エクセアは少し控えめな所がありますので、黄色にして少し目立った方がよろしいかと思いますわ」
「マルティナ姉様がそうおっしゃるのでしたら、黄色にします」
「私はオレンジ色のドレスに致しますわ」
私達はドレスに着替え、晩餐会に出ましたわ。
私達の席は、家族の女性のみで座る様になっていましたわ。
殿方は大抵この様な場ではお付き合いもございますし、女性が居ては話しずらい話題も多くありますの。
私達も女性同士の方がお話ししやすいのは事実ですわね。
今一番気になる話題と言えば、お兄様の妻ブレンダ姉様の事ですわ。
お兄様は男爵家に身を落としたと言うのに、ブレンダ姉様は婚約破棄せず結婚なさられた素晴らしいお方ですわ。
家族としましては、男爵家での生活は苦しいのではないかと心配になってしまいますの…。
「ブレンダさん、新しい生活には慣れましたでしょうか?」
「はい、まだまだ慣れない事が多く大変な日々が続いておりますが、夫と使用人が支えてくれますので、何とかやって行けております」
「どうしても耐えられそうにない時には、遠慮なく私に言って下さいね。出来る限り協力しますからね」
「はい、お母様、ありがとうございます」
ブレンダ姉様はお母様に気丈に振る舞っておりましたけれど、結婚式の時より少し瘦せたようにも思えますわ。
私ではお役に立てませんが、後でお兄様にブレンダ姉様を気遣ってあげるよう言っておいた方がよろしいのかしら?
いいえ、それは止めておいた方がよろしいですわね。
ブレンダ姉様はお母様方とお兄様との新婚生活のお話で盛り上がっておりまして、とても幸せそうな表情をしておりますもの。
私が余計な事を言ってしまえば、ブレンダ姉様にご迷惑をおかけしてしまいますわ。
アベルティアお母様が、成り上がりをこのテーブルに呼びましたわ。
アベルティアお母様とロゼリアお母様にとっては、ルリアとユーティアの事が気になるのですわね…。
ルリアの事はどうでもよろしいのですけれど、ユーティアの事は私も気になりますわね…。
未だに、ユーティアが成り上がりの婚約者になった理由は分かりませんが、聡明なユーティアの事ですので、明確な狙いがあったに違いありませんわ。
それと、リリーの事も気になりますわ。
最初はメイドがラノフェリア公爵家の養女として迎え入れられた事に反対致しましたが、お母様とお兄様との話し合いで一応納得は致しましたわ。
ですので、私の妹として相応しいのかと思い、お話ししたかったのですが、いつもルリアが邪魔をして話す機会がありませんでしたわ…。
今はルリアがおりませんので、お話しする良い機会だと思ったのですが…。
気に入らない成り上がりに声を掛けられ、厳しい言い方になってしまったと反省しておりますわ…。
ですが、リリーとはお話しできる機会を得られましたわ。
「マルティナ姉様、エクセア姉様、ご無沙汰しております」
「えぇ、久しぶりですわね」
「そうですね。マルティナ姉様、何からお聞きしましょう?」
「そうですわね…リアネ城での生活はどのようなものなのかお聞きしても?」
「はい、分かりました。ここでの生活はとても安心できますし、景色も素晴らしいですので毎日気持ちがとても落ち着きます。
お姉様方も機会がありましたら、窓から見える景色をゆっくりと眺めて頂けるとお分かりになって頂けると思います」
「えぇ、景色はここに来る前に見させていただきましたわ。本当に素晴らしい景色でしばらく滞在したいと思ったほどですわよ」
「私もマルティナ姉様と共に景色を堪能させていただきましたので、気持ちが落ち着くと言うのは良く分かります」
リリー、ユーティア、エクセアとの会話は、何気も無い日常の会話で盛り上がり、楽しい時間を過ごすことが出来ましたわ…。
ユーティアは頷いているだけでしたが、それはいつもの事ですので気には致しませんわ。
以前から思っておりましたが、リリーの細やかな仕草の一つ一つがとても鮮麗されており、高貴な家の出だと言うのは分かっておりますわ。
それが、どの家なのかはお父様も教えてはくれませんでしたが、ソートマス王国では無い事は間違いありませんわ。
詮索をしないのが礼儀ですし、もうその事はどうでもよくなっておりますわ。
リリーとお話しした結果としては、とても良い子だと言う事が分かりましたわ。
「お姉様方、リアネ城のお風呂はとても綺麗ですので、今日は四人で一緒にお風呂に入りませんか?」
「それはよろしいですわね」
「とても良い事ですね」
こくり…。
リリーの提案にエクセアとユーティアも賛同しましたので、晩餐会後に姉妹四人で入浴する事になりましたわ。
ルリアが不在で姉妹全員がそろわなかったのが不満ですが、ルリアがいたのであれば、リリーとも話す機会が得られなかったのは間違いありませんわね。
リリーとは姉妹仲を深めることが出来ましたし、ルリアとは武闘大会が終わった後にでも、ゆっくり話す時間を作ろうと思いましたわ。
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