第百六十三話 ルフトル王国からの呼び出し
アンナが元気になり、エリオット達と合流する事が出来て一安心できた。
アンナの件では、魔法だけではどうする事も出来ない事もあると知り、より一層気を付けて行動しようと思った。
エリオット達の勉強も順調に行っているみたいだし、アンナの後れを取り戻せるようにと、皆で教え合っていると言う話も聞いたし、ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラとも一緒に食事をしたりするほど仲良くなっているみたいだ。
ニーナの方は、トリステンといちゃつきながら警備に励んでいると、様子を見に行ってくれたロゼとリゼから教えて貰った。
二人が仲睦まじくやれている様なのはとても良い事だな。
俺の方はと言うと、ルリアとリリーを交えて実践的な魔法の訓練を行っていた。
「エルレイ!手を抜いてるんじゃないでしょうね!」
「いや、真剣に戦っているぞ!」
「そこ、隙あり!」
「まだまだ!」
ルリアの手には魔剣エリザベートが握られていて、俺の作り出した魔法障壁を斬り裂いて来る。
俺も対抗してグールを持っているが、グールの能力は強力なので使用してはいない。
だが、魔剣エリザベートに対抗するには、グールの能力を使った方が良い様に思えてくるほど、俺はルリアの攻撃に押されていた…。
だから思わず、グールに文句の一つも言いたくなると言うものだ!
「グール、魔剣エリザベートを強化し過ぎたのではないか?」
「そんな事はねーぜ!あの魔剣にはめ込まれている魔石が小さいせいで、そこまで強化は出来てねーはずだ!」
「だが、あの威力は異常じゃないのか?」
「あーそれは、ルリアの嬢ちゃんが自分でも魔剣を補強しているぜ!」
「な・ん・だ・と…」
どうりで、俺が幾ら魔法障壁を強化しても斬り裂いて来る訳だ…。
ルリアの魔剣エリザベートから逃れようと距離を空けると、今度はルリアとリリーから魔法が飛んで来る!
「エルレイさん、避けてく下さい!」
リリーは基本的に攻撃魔法を好んで使う事は無いし、攻撃に参加させるつもりはなかったのだがな…。
ルリアがリリーも戦えるようになっていなくてはならないと言い、リリーもそれに同意した。
リリーは水属性魔法しか使えないが、その威力は俺の三倍以上にもなる。
幾らリリーが攻撃魔法を苦手にしていようとも、迫りくる魔法は強力で、俺も油断していると命の保証は出来ないほどだ。
「食らいなさい!」
リリーが水属性、ルリアが火属性魔法で攻撃して来るものだから、二人の魔法を躱したとしても周囲は水蒸気で視界を遮られてしまう!
「そこっ!」
「ま、参った…」
視界を奪われた所に、ルリアの魔剣エリザベートが俺の首元で寸止めされていた。
グールの能力を使わない状況では、ルリアとリリーの連携に敗北してしまう…。
「ふふんっ、エルレイもまだまだね!」
ルリアは俺に勝利し、満足げな笑みを浮かべていた。
二対一とは言え、勝負に負けたのは非常に悔しい…。
しかし負けを認め、次に同じような負け方をしない様にしなければならない。
「リリー、今の魔法手を抜き過ぎよ!」
「ですが、エルレイさんに怪我をさせられませんし…」
「エルレイは、私達の魔法で怪我なんかしないわよ!次は思いっきり撃ち込んでやりなさい!」
ルリアはリリーの魔法指導に行ってしまった。
「「エルレイ様、次は私達とお願いします」」
ルリアとリリーに変わって、今度はロゼとリゼとの訓練になる。
ロゼとリゼは、ルリアの様な魔剣は持ってはいないが、双子の見事な連携で俺を追い詰めて来る。
二人に能力は使わせていないので、何とか俺が勝つ事は出来ているのだが…。
つまり、能力を使われれば、俺はロゼとリゼにも勝てないと言う事だ。
実は俺、一番弱いのではないかと最近思い始めている…。
ルリア達とは違って、侯爵としての仕事もあるから訓練する時間は短くなる…等と理由を付けて見るが、俺が弱い事には変わりはない。
今まで以上に気合を入れて訓練に取り組まねばな!
俺は魔法の訓練に力を注ぎつつ、侯爵としての仕事を行っていく平和な日々を楽しく過ごして行った…。
『エルレイ様、女王様がお呼びですので、出来るだけ早くお越し願えませんでしょうか?』
『はい、準備が出来次第向かいます!』
だが、そんな平和な日々は、ルフトル王国のソフィアからの念話で終わる事となった。
連絡が来る事は分かっていたし、準備も出来ている。
ルフトル王国に連れて行くのは、予定通りルリア、リリー、ロゼ、リゼの四人にした。
ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラはエリオット達の教育があるし、王女のヘルミーネは戦争に連れて行く事は出来ないからな。
「ヘルミーネ、アルティナ姉さん、ラウラ、エリオット達の事を頼むよ」
「うむ、しっかりと教え込んでおくからな!」
「お姉ちゃんに任せておけば大丈夫よ。それより無事に帰って来て頂戴ね!」
「はい、お任せくださいませ」
ヘルミーネは胸を張って自信満々の様子だ。
実際に、エリオット達の教育を頑張って教えているのは間違いないし、エリオット達も着実に読み書きを覚えていると言う事だったからな。
ヘルミーネが間違った事を教えようとしても、アルティナ姉さんとラウラがいるから安心出来る。
アルティナ姉さんは俺を抱きしめて、別れを惜しんでくれている。
ルフトル王国に滞在する期間は決まってはいないが、アルティナ姉さんを心配させない為にも、出来るだけ早く帰って来れる様に努力しないとな。
ラウラには安心して二人のお世話を任せられるし、ハンナ達とも上手く協力してやってくれるはずだ。
俺はラウラの手を両手で包み込むように握りしめ、ラウラの目を見て二人の事をお願いした。
「アドルフ、トリステンと協力して、リアネ城を厳重に警備していてくれ」
「はい、お任せください!」
「では、行って来る!」
「いってらっしゃいませ!」
アドルフにリアネ城の事は任せて、俺達はルフトル王国に空間転移魔法でやって来た。
事前に連絡を入れていたのもあり、転移先にはソフィアが待っていてくれた。
「ソフィアさん、お待たせしました」
「いいえ、よくおいで下さいました」
ソフィアさんは笑顔で出迎えてくれて、すぐに俺達を結界内部へと案内してくれた。
結界内部にはキャローネが来ており、そのままお城まで運ばれて行って、慌ただしくセシリア女王との面会する事となった。
セシリア女王は、前に会った時と変わらず若くて美しい姿で樹の根の中に
その姿に
「エルレイ、リースレイア王国が侵攻を開始しました。
私達も迎撃すべく準備を進めております。
エルレイには、迎撃の手伝いをして貰いたいのです。
お願いできますか?」
「はい、お約束通り協力させていただきます!」
前回約束した通り、ルフトル王国に協力してリースレイア王国を退けるのに全力を尽くすつもりだ。
上手く行けば、ソートマス王国とルフトル王国の和平が成立し、争いごとの火種が一つ消える。
まだ、リリーの祖国で俺の領地と隣接しているラウニスカ王国があるが、こちらに侵攻してくる気配は無さそうなので、今は安心していいと思う。
将来的にどうなるかは不明だけれど、ルフトル王国との和平が成立すれば、ラウニスカ王国もそう簡単に侵攻してくることは出来なくなるはずだとアドルフが言っていたし、俺の領地の安全のためにも頑張るしかない。
「エルレイ、私達の防衛担当者を紹介します。
彼らと協力して事に当たってください」
セシリア女王は手招きすると、広間の横に立っていた四人の人達が俺の前にやって来た。
男性二人女性二人のエルフで、一人以外は友好的な印象を受けた。
「マルギットだ!」
「ワルテと申します」
「カーメラよ~」
「ロ、ロレーナじゃ」
「エルレイ・フォン・アリクレットと申します。エルレイと呼んでください」
お互いの自己紹介を済ませ、詳しい打ち合わせをするために、セシリア女王に別れを告げて退出した。
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