第百六十四話 ルフトル王国防衛会議
長いテーブルが置かれた部屋に案内され、俺、ルリア、リリーが長いテーブルの席に横に並んで座り、ロゼとリゼは俺達の後ろに立っている。
正面には、ルフトル王国の防衛担当者のマルギット、ワルテ、カーメラ、ロレーナが座った。
他のエルフの人達の手により俺達の前に紅茶が用意されたので、俺は紅茶を一口飲んで気持ちを落ち着かせようとした。
紅茶はほのかに甘くていい香りがして、エルフのお城全体から漂う神聖な雰囲気が、俺を優しく包み込んで癒してくれる感じがする。
だと言うのに、俺の目の前に座っているマルギットから突き刺さってくる視線が全てを台無しにしている…。
マルギットは細身の高身長で、椅子に座ってなお高い視線は俺の事を見下ろしていた。
余程俺の事が嫌いなのだろうか?
ここはエルフの世界で、俺達以外の人が入った事が無い場所だと言っていたから、俺達が気に入らないのかもしれないな。
マルギットの隣に座っているワルテは、マルギットより少し低めな身長で体形もやや丸形だが、にこにことした笑顔を俺達に向けてくれている。
エルフの町に行った時も特に嫌われたりする事は無かったし、マルギットが個人的に嫌っているだけなのかもな。
カーメラは、エルフには珍しく大きな胸をお持ちだ…。
ソフィアさんや、街で見かけたエルフの女性たちは比較的慎ましかったからな。
エルフの美しい顔立ちに加えて胸も大きいとなると、視線を奪われそうになっても仕方が無い…。
カーメラと視線が合うと優しい笑みを返してくれた。
ロレーナも、エルフには珍しく小柄な体形をしていて、身長は俺より少し高いくらいの少女だな。
俺達も人の事は言えないが、ロレーナが防衛担当者として敵と戦うのは厳しいのではないかと思わなくもない。
今もキョロキョロを俺達を見て少し落ち着かない様子だし、守ってあげなくてはと思えるほどだ。
紅茶を飲んで皆が落ち着いた所で、ワルテが話し始めたてくれた。
「改めて自己紹介させて貰います。
私はワルテと申しまして、土の精霊モルと契約しております」
ワルテが自己紹介すると、テーブルの上に突然手のひらサイズの小人が現れてお辞儀をしてくれた。
「モルちゃん、凄く可愛らしいです!」
リリーが小人を見て凄く喜んでいて、今にも手を伸ばして小人を撫でたそうにしていたが、そこは理性で我慢できたみたいだ。
「私のは水の精霊シャルよ~」
カーメラが精霊を呼び出すと、テーブルの上に水色のスライムがポヨンと現れた。
「シャルちゃんも愛らしいです!」
リリーが褒めると、スライムはプルプルと震えて喜んでいるみたいだった。
「ロ、ロレーナじゃ、火の精霊ソル出てまいれ」
ロレーナの精霊は双頭のケルベロス!の子犬だった。
サイズ的には両手に乗るくらいで、きちんとお座りをして尻尾を振っている姿は本当に子犬だな…。
「ロレーナさん、撫でてもいいでしょうか?」
「う、うむ、優しく撫でてやってくれ」
「はい!」
リリーはついに我慢できなくなったのか、ロレーナに許可を貰い、立ち上がって手を伸ばしソルの双頭を撫で始めた。
リリーは幸せそうな表情をしているし、撫でられているソルも尻尾を思いっきり降って喜んでいるのでいいのだろう。
「ごほんっ!俺はマルギット、風の精霊メル、姿を見せてやれ」
マルギットは自分の自己紹介を邪魔されたのが気に入らなかったのか、リリーを睨みつけながら精霊を呼び出した。
マルギットの精霊は少し大きめの梟で、現れた時からマルギットの肩にとまっていた。
「マルギットさん、ごめんなさい」
「ふんっ!」
リリーはソルを撫でるのを止め、マルギットに謝罪してから席に座った。
「ルリア、落ち着いて!」
マルギットのリリーに対しての態度に怒ったルリアが、文句を言おうとしていたので慌てて止めた。
俺もちょっとムカついたが、これから協力して一緒に戦う仲間なのだからこのくらいは我慢しなくてはならない。
「僕はエルレイ。四属性魔法を全て使えます」
「ルリアよ!火と風を使えるわ!」
「リリーです。水属性魔法のみ使えます」
「ロゼと申します。風属性魔法と地属性魔法を使えます」
「リゼと申します。水属性魔法と火属性魔法を使えます」
俺達の自己紹介も終わり、やっと本題に入る事が出来た。
ワルテが用意していた地図をテーブルの上に広げると、地図の上にワルテの精霊モルがぴょんと飛び乗った。
「現在リースレイア王国軍はルフトル王国の国境付近まで来ていまして、三、四日の内に国境を越えて侵攻して来ると予想しています」
ワルテが現状を説明してくれるのに合わせて、モルが地図上に敵の位置を土で作った人形を置いて教えてくれたので凄く分かりやすかった。
「私達は、この村から離れた平地で迎え撃つ予定にしています」
モルが防衛地点に人形を作り出し、敵側の人形が防御地点まで動いて来ると、防御側の人形が破壊していた。
「モルちゃん、とても分かりやすかったです!」
リリーが褒めるとモルは飛び上がって喜んでいて、とても微笑ましいく思える。
「ここまでで、質問はありますか?」
「防御施設は無いのでしたよね?」
前回ルフトル王国に来た際に、ソートマス王国側を守る防御施設は無いと説明を受けていた。
リースレイア王国側も無いのか、確認の為に聞いて見たのだが…。
「はい、ありません」
「ふんっ!俺達の精霊魔法をもってすれば、そんなもの必要無い!
そもそも、お前達の協力も必要無いのだ!」
マルギットが俺達への不満をぶちまけた!
最初から、マルギットは俺達を歓迎していない態度だったから驚きはしないが、いい気分ではないな。
しかし、俺はセシリア女王から協力を頼まれているのだから、マルギットが気に入らなくてもルフトル王国を守る事に変わりはない。
俺は気持ちを落ち着かせ、冷静にマルギットとも話をして協力出来るように仕向けて行かなくてはと思い、マルギットに声を掛ける事にした。
「貴方達が弱くて勝てないと言うから、私達が助けに来たのよ!」
「ほう、俺達エルフが人より弱いと言いたいのか?」
「そうよ!」
俺が声をかける前に、ルリアが立ち上がってマルギットが言い合いを始めてしまった…。
「ルリア、落ち着いて!」
「マルギットも冷静になってくれ!」
俺はルリアを正面から押さえ、ワルテがマルギットを押さえてくれた。
「エルレイ、離しなさいよ!」
「ルリア、喧嘩しに来たのでは無いんだぞ!」
ルリアは俺を引きはがそうと暴れているが、俺もマルギットに殴りかからせないように必死に抱きしめて押さえている。
「は~い、喧嘩はそこまでにして頂戴ね~」
カーメラの優しい声が聞こえて来たと同時に、暴れていたルリアが急に大人しくなってしまった。
「あれ?」
ルリアも何が起きたのか、不思議そうに首をかしげていた。
俺は顔をカーメラの方に向けて見ると、カーメラの精霊シャルがプルプル震えていたので、魔法を使ってルリアを落ち着かせてくれたのかも知れないな。
精霊魔法はいまだに良く分からないが、ルリアの怒気を静められる魔法があるのであれば、是非とも教えて貰いたいと心から願った!
「エルレイ…いつまで抱きしめているのよ!」
「えっ!?」
顔を正面に戻すと、ルリアの顔が目の前にあり、体は密着状態だ。
先程まではルリアを押さえるのに必死で感じられなかったのだが、今はルリアの胸の柔らかさを感じる事が出来る!
暫くこの感触を感じていたいと思ったのが表情に出たのか、ルリアから思いっ切り頬をひっぱたかれてしまった…。
「ルリア、痛いよ…」
「ふんっ!」
ルリアから離れると、ルリアは胸を隠すように腕組みをして顔を横に向けてしまった…。
日頃から見ているルリアの胸だが、着実に成長しているのを実感できたのは非常に嬉しかった。
この調子で成長してくれれば、母親のアベルティアの様な巨乳になってくれること間違いなしだ!
ルリアと結婚できた時の事を考えるとニヤニヤしてしまうな。
これで、暴力さえなくなってくれれば言う事無しなのだが…。
ん?そう言えば、俺が侯爵になってから殴られていない?
今のは、ひっぱたかれただけで暴力とまでは言えないだろう。
たいして痛くはないし、せいぜい頬にルリアの手形が付いている程度だろう。
ルリアも大人になって来てくれたのかと一瞬考えてしまったが、マルギットと言い争いをしていたのを思い出した…。
うん、ルリアが落ち着き暴力が無くなるのはまだ先の事だろう。
これからも殴られない様に注意して行かなくてはと思った…。
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